裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

日曜日

チベットのど自慢

次はラサ市にお住まいのチンメン・ドルジェくん(小学1年)です。

※あぁルナティックシアター『地獄の楽園』千秋楽

朝8時起床。
少しストレッチしたが体が疲れていてダメ。
シャワーして、9時朝食、母の室で。
梨とミカン。
ミカン大変に甘いが、一袋にカビが生えていた。

日記のみつけて、さて千秋楽の下北沢へ。
6日間公演というのは、ちょうどいい長さかもしれない。
以前のアストロは4日間で、つかんだ、と思ったら
もう楽日だった。
今回は最初いろいろ迷いもあったが、中日(なかび)
過ぎたあたりから調子が出てきて、昨日のマチソワは
演じていて(巧拙はともかく)極めて
楽しかった。
やはり、お客さんの実際の反応を味あわないと
感じがつかめない。

この劇団に加われて一緒に芝居が出来て本当によかった、
実に素晴らしい仲間たちだ、と少しセンチになっていたら、
いきなり座長がキャッチャーマスクひとつの全裸姿で
「全裸キャッチャー!」
とか叫んで、それに応じて助くんと岡っちがやはり全裸で
野球ごっこをはじめる。
早まって劇団員にさせてください、とか言わなくて
よかった、と胸をなでおろす(笑)。

メイク、試行錯誤をいろいろ重ねて昨日あたりから
完成形になる。琴重ちゃんも自信をつけてきたか、
指示をいろいろ出してくるようになった。

マチネ、二回目の登場シーン、飛び跳ねた途端に帽子が
落ちてしまった。あと、三回目のシーン、ウケはとれたが
転んで、琴重ちゃんがかなり心配していた。
全く問題なし。ラストの名乗りのところでの笑いも
大きくて満足。

もうネタバレでいいと思うが、私の役はコテージ管理人
(大村琴重)の部下で、死人のような怪奇な顔の男。
怪物が一方で若者たちや警官を殺しまくっている中、
われわれは“あの子”を探し回っている。
観客には怪物が“あの子”のことなのだろう、と
思わせて実は……という拍子抜けギャグがあり、
さらにもうひとひねりして、最後の最後で……という
オチになる。
ほぼ観ている全ての人や共演者から“楽しそうでしたね”
と言われた。事実、楽しい。

終って物販。
同人誌も好調に売れ、夜の部の在庫が少し心配になる。
も少し昨日持ってくればよかったと思うが、帰りの荷物を
減らしたいので少なめにしたのだ。
お客の中に、あきらかに欧米の血が入っていると思われる
目立つ美人がいたが、その女性にサインを求められる。
ファンなのだそうだ。ちょっと嬉しかった。
メモ帳にサインを、と求めてくる婦人(母娘)も。
どういうファンなのだろうか。
あと、バーバラが娘と来てくれた。

今回はマチネとソワレの間が2時間、実質1時間もない。
麻衣夢ちゃんのお母さんからの差し入れでおにぎりを
いただいて昼食代わり。
松茸ご飯のがおいしかった。

やがてソワレ、大楽である。
今回の公演は金曜日のぞき全日全席が満席状態という大成功
だった。みんな意気が上がる。
かずえちゃん、助くん、岡っちはじめ、伊藤くんのお国なまり
ギャグなどほぼ全てのキャラが立ってウケていた。
以前関係していた劇団の座長が、楽日の大ウケに、
「初日からこの出来、このウケをねらおうと意識して
芝居を作っているのだけど、どうしても楽日にウケが集中する」
とボヤいていたが、これはどんな劇団でも同じだろう。
客席には佳声先生や安達OBさんの顔あり。安達Oさんの
表情を見るだけで、気に入ってくれているなとわかる。

大楽もラストシーンを締めくくれるのは名誉なこと。
爆笑に次ぐ爆笑のあと、静かな恐怖で幕が下りる。
「そこだけムードが違ってしまう」
という意見もあったが、しかしほぼ、このオチの秀逸さを
褒めてくれた人が大部分だった。

佳声先生、安達さんたち、それからぎじんさん、
大友恵理ちゃんや高田実加子ちゃんにも挨拶。安達さんに
「唐沢さんの役はマーティ・フェルドマン意識している
でしょう?」
と言われた。これは意外だったが、しかし確かに、
キャラとしては『ヤング・フランケンシュタイン』の
“アイゴール”か。アンケートにも“唐沢さんのイゴールは
ハマリ役だった”とあったし。

ラジオライフTくん、アスペクトのK田くん、しら〜、
rikiさん、jyamaさんなども来てくれていた(Tくん
K田くんは昨日、“明日も来てよ”ハッシーに言われていた)。
jyamaさんは時間を間違えてラスト近くからしか
観られなかったとか。

挨拶、物販終えて(私の同人誌類は完売だった)、
早速バラシへ。
私が担当したのは、ラジオや書き物机などの家具類に
こびりついた、クモの巣を取る作業。奇麗なもとの状態で
借りだした高津美術装飾へ返却しなければならないのである。
ところが、この蜘蛛の巣はアクリルポリマーの糸を
スプレーで吹きつけるようにして作るのだが(一缶5千円も
する)、日が経つと溶けて、薄い膜のようになって
家具に付着し、なかなか取れない。
これ落としにかなりの時間をとられた。

それからバラシたベニヤ板などをトラックに積み込む作業。
最近はかなりバラシにも慣れた。
あゆちゃんとコンビで、雑談しながら。
彼女、がんばり屋だなあ、とつくづく思う。
娘にしたいくらいだ。

ある程度のところで仕事場に帰って、原稿急ぎのを……
と思っていたが、途中で諦める。さらにじゅうたんはがしにも
参加。全ての装飾が剥がされ、何も無くなった劇場に立つと、
ここが本当にさっきまでわれわれが演技していた、あの舞台だった
のだろうか、という奇妙な感覚が生じ、改めて芝居という異空間の
魔を感じる。

やがて、打上げの店『分福』に。
はれつさん、開田夫妻などと。
先に『雷や』でもうかなり酒を入れてきているらしい
rikiさん、ぎじんさん一行と合流。
この店は普段は朝までやってはいないのだが、今回、
ブタカンのHさんの顔で朝まで使わせてもらえる。
開田さん、しら〜とワールドコンの話。

程なくハッシーも来て、乾杯。
あとは『あぁルナ』の打ち上げらしくドガジャガ、
ではあるのだが、さすがに今回は長丁場での疲れがあって
みんな比較的おとなしやか。
もっとも乾ちゃんは照明の権藤さんや開田あやさんの
オッパイをわしづかみにしてはしゃいでいた(写真参照)が、
途中で彼女も沈没してしまった。
テリー兄さんは龍場舞ちゃんと実加子ちゃんに挟まれて
ゴキゲン。

1時過ぎ、荷物を運んでいた助ちゃんや岡ッちも到着、
改めて乾杯。岡っちのモテ話などを聞く。
ここらではもう開田さんもしら〜もjyamaさんも
次々沈没、元気な麻衣夢ちゃんも座敷席で寝てしまった。
私はテンションがまだ昂ぶっているので眠くはないが、
体力は極端に消耗、これはと思い、4時過ぎに辞去。
歓呼の声に送られて店を出る。
50近くなってこのノリで楽しめるのは幸せと
言えるだろう。
しかし、考えてみれば、実に複雑な縁でこの劇団の舞台に
立たせてもらっている。そのことを思うと、奇妙な気分になる。
人生ってのは因果関係が本当に複雑でわからない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa