裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

日曜日

うちら楊貴妃なかしまし娘

お姉ちゃん、玄宗様のお妾になったんやて? ええなア

※前田隣ライブ於上野広小路亭

朝、カンヅメで入ったホテルがやたら高級で豪華な
ホテルで驚くという夢。
洗面室の作りやベッド、東京の繁華街を見おろせる
作りの浴室など、日本の建造物とは思えない。
業界でも有名なホテルらしく、ロビーのようなところには
多くの知った顔も。会員制で、ぜひ唐沢さんも会員に
おなんなさいと勧められるがちょっとアヤシゲなので
躊躇する、というもの。
しかし、あの室内は目が覚めても実感が残っているほど
豪勢だった。

朝、8時半起き。どうしてこんなに眠れるかなと
思うくらいよく寝られる。ただし、目覚め直後にすさまじい
足の攣り。酒を飲んだ夜は水分をうんと補給して寝ないと。

9時朝食、母が『朝、生フルーツだけダイエット』なる
本を買ってきて、スイカ、リンゴ、プラムなどを
山ほど食べさせられる。

雨、かなりの降り。ダーリン先生も今日のライブのお客さん
のことをかなり心配していらっしゃるようだが、
元・気象予報士というファンの人が
「3時にはやみます。ちょっと風は強いですが(開演時には)
問題なくなると思います」
と断言しているのでちょっと安心。

http://www.youtube.com/watch?v=-Q5P2ueVfMI
↑『タイの悪夢的怪物』。どう落とすのかと思ったら。

http://www.youtube.com/watch?v=9QXh8VvOdoM&NR=1
↑で、“タイのCM”で検索してたら、こんな佳品が。メガネブス
でガラッパチの女の子が洗顔フォーム“スムースE”のおかげで
可愛く変身、見事恋人を射止めるが……という一昔前の少女マンガ
をパロったような話。性転換者が出てくるのがタイらしい
(6分45秒の作品が何故かリピートしてアップされてる)。
CMの手法を逆手にとった演出が面白い。
日本のCMって金と技術だけで、アイデア使ったものがないように
思うのは私だけか?

昼は母の室でシャケ茶漬け。あられの代わりに、玄米を煎ったものを
使っている。それと夏野菜の酒粕和え。健康になったような気分。

書き下ろし本のエッセイ原稿にかかろうと思うが雑用多々で
とりかかれず。明日も休日(らしい)ので、それで片づけようと
思う。いくつかあるサイト眺めて、昨日の日記で話題にした
リビー小体型認知症のことを思いだす。妄想の小人が見える
のは今の空間にばかりではない、過去の記憶にも。

国書刊行会・叢書江戸文庫の『式亭三馬集』を読むが、
黄表紙は、台詞の中のしゃれやくすぐりの意味を解説して
くれないとまるでわからぬもの多し。現代教養文庫の
『江戸の戯作絵本』の微に入り細をうがった解説に慣れて
しまうと、他のものがはがゆい。

4時15分、家を出て、地下鉄乗り継いで上野広小路。
赤坂見附駅でちょっと出て買い物。ぎじんさんにバッタリ。
上野広小路亭での前田隣ライブ。
台風も予想通り大方は過ぎて、雨も降らず。
気象予報士っていうのは大したもの。
楽屋に行って先生、ノリローさん、今日の出演者一同に
挨拶。談奈こと元フラ談次がいたのでご祝儀を。
手ぬぐいをキウイと異なりきちんとくれる。

広小路亭隣の風月堂で開田あやさんと打ち合わせ。
資料をもらい、企画書にアップする候補をいくつか上げる。
台湾夜市の本をおみやげにもらう。
あと、檳榔ガールズの絵はがきも。
アジアでは檳榔売りは色っぽい姉ちゃんが露出の多い衣装で
やるものと決まっているらしく、台湾では過激になる一方の
その衣装に規制まで行われたとか。
http://azoz.org/archives/200409211305.php
規制前に行ってみたかったものだが、それでも依然人気では
あるらしく、ホテルのテレビを見たら、この檳榔ガールの
コンテストみたいなことをやっており、タモリみたいな
司会がやたらはしゃいで何かわめいていた。

80名、チケット完売当日券なしで、椅子席にも座布団席にも
空席なく、立ち見も取材以外なし。
これが実に心地良い。ダーリン先生が申し訳ないを繰り返しつつ
電話での当日客を断ったらしい。
芸人にとっては、押せ押せの満員で立錐の余地なく、
高座にまで客を上げるような、そんな状況が嬉しいに
決まっているが、この広小路亭のダーリン先生の会には
年配のお客も多い。そのことを気づかっての心苦しくも
必要な配慮なのだろう。
ぎじんさん、前座名人さん、それからアスペクトK田くん、
記録用ビデオ回しつつ。

開口一番はブラッCこと立川三四楼。
アイドルや歴史人物の似顔絵を四〇枚以上スケッチブックに
描いてきて、その名前をダジャレにして話を展開するというネタ。
トンデモだったらもっと評価されたかもしれない。
ブラック門下から談四楼門下に移り、まともになったという
噂だったが大丈夫(何が)と確信。

そのつぎが談奈。紋付き羽織姿で高座に彼があがると、
ある種の感慨あり。ネタはごく普通に『無筆の医者』を
やるかと思ったら後半でちょっと現代風に遊んだ。
が、三四楼と少しネタがかぶって、損したという感じ。
談奈の人柄や向上心はとにかく誰もが褒めるところ。
そろそろ、そういう“いい子”から脱する方法を追い求める
時期に入っているのだろう。どんなときでもこれ一発あれば
という飛び道具を考え出す時期だと思うのだが……。

そこで前田隣先生、相変らずの融通無碍のトーク。
話を次に進めておいて、ひょい、とまた前に戻るという
呼吸、これは学びとりたいと切に思う。
最近はヒロポンばなしが多く、ヒロポン漫談の体をなして
いるのも妙に可笑しい。
朝日新聞東京版が取材に来ているのだが(開演前にロビーで
交渉していたが)、ダーリン先生、お客の迷惑になる
客席からの撮影を許さず、袖からカメラマンが撮っているのを
「こっち来て撮りなよ」
と、壇上に上げてしまう。大爆笑。

飛び入りで漫才、内海文化QR。文化放送のアナウンサーの
寺島尚正と太田英明の二人が組んだコンビ。
さすがに滑舌はいい。
それから宮田陽・昇、正統派漫才の形を保ちつつ爆笑を
誘発させるパワーを合わせ持っているのは凄い。
ただ、安定感がある若手というのは、逆に
「ここで止まってしまうんではないか」
という不安も共にある。

それから居島一平、サンキュータツオの米粒写経。
こっちは陽・昇とはまた違った、いかにも芸人風な風貌&ボケの
居島と、Tシャツ姿で現代風なタツオの、噛みあっていそうで
噛みあわない会話が現代風。途中でコント仕立てになるところも
イマ風。この二組の取り合わせは面白い。
こういう、方向性の異なった若手を両方かわいがれる
のがダーリン先生の若々しい感覚なのかと思う。

それからおなじみの、ノリローさんこと平田紀子・ピアノ、
前田隣・歌のコーナー。ここでも例の進まないトークと
ヒロポンばなし。ヒロポンは手に入ったが注射器がない、
というので家を探し回った男が、100ccの大型注射器
を見つけてきて、それで自分の腕の血管に注射したが
大きいのでピストン部分に指が届かない、困って
電信柱にそれを押し付けて……という話が大笑いだった。
歌の稽古のときに呼吸困難になったという前フリにちょっと
心配になったが、声が全くかすれずに伸び、聞いていて
気持ちよかった。

ダーリン先生の毒舌というのは周囲全般を巻き込んで、
取材に来ている新聞があるとそれにあえて毒舌をふる、という
手当たり次第だが、これが芸人だよな、とつくづく思う。
批判のように見えて、それは自分の意識の中に入れているよ、
というサインなのである。さだやんなどの話を聞いてもいつも
そう思う。批判というのが即、相手への完全否定としか
受け取れない、二者択一の精神構造しか持たない人が増えている
昨今というのは、ひょっとしてこういうお笑いを聞いていない
人が増えているからではないかと思う。

終って、日曜で本来は休業だが今日のために開けたという
加賀屋に貸し切りで。楽屋でビールを飲んでいたさだやん
師匠も来て、談奈にツッコミを入れたりなんだり。
内海文化・QRの文化こと寺島さんに挨拶をされた。

お客の中にいた二十代のお嬢さんと一緒の席(あやさん、
待乳庵さん、K田さんなどと)になるが、彼女はダーリン先生
のかかりつけのお医者さまのお嬢さんらしい。
「出演者の中で誰が好き?」
と訊いたら、米粒写経だという。私もあやさんも、てっきり
サンキュータツオの方だと思ったら、居島の方だというので
二人で驚いた。さっそく彼をワキに呼んで話をさせたが、
居島くん、芸人として、と、軍事オタクとして、のしゃべりは
実に々々達者だが、フツーの女の子との会話が苦手なようで
「やはり軍事オタクというのはそうか」
と感心(感心するところではない)。

なにしろ今日は店をまるごと貸し切りなので、どんなに騒いでも
大丈夫。芸人居島の大ハリキリの司会で(さだやんが“ありゃ
明日、声を嗄らすヨ、あれじゃ”と心配していた)恒例自己紹介。
私の番になって、前の待乳庵さんがブラックの借金ネタを
やっていたので、私もそれを受けて。

ダーリン先生のCDを作っているKさんとも少し話し、
いろいろはずんでワイワイやっているうちに11時。
そろそろこの店のカンバンである。
三々五々、お客さんが帰る中、さだやんさん、前座名人
さんなどと最後まで残る。
あやさん、K田さんと銀座線、丸ノ内線乗り換えで新中野まで。
長野の花火のこと、同人誌のことなどいろいろ。
K子が部屋を掃除していてくれて助かった。

酒はそんなに飲まなかったのでシャワー浴びて汗を落とし、
ベッドに入るときはひさびさにしらふ。
メモとったりなんだり。立てる予定がどうにもスケールが小さい。
大きくいかねば、と自分を叱ったり。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa