裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

日曜日

不義理の国のアリス

忙しくてお茶の会に行けないわ。

夜中に目を醒したら、足下に緑色の光がぼーっと輝いているので、一瞬宇宙人がアブダクションしに来たか、とギョッとするが、K子が買った空気清浄機だった。こういう光を放つ製品が“気味悪い”とか言われずカッコいいと消費者に認識されるのは、やはりスター・トレックなどのSFドラマが長年、薫陶にこれつとめてきたからであろう。

入浴、服薬、9時朝食(あ、韻を踏んでいる)。コーンスープとスイカ。食べて急いで日記つけ。今日は12時からと学会例会で、ビジターにjyamaさんを呼んで、待ち合わせをしているので11時には家を出ないといけない。11時に書き上げて、しかしいいタイトルが思いつかないのでモバイルで会場でアップしようと思い、自室のドアを一歩出たところで思いつき、あわててとって返してまたパソコンを立ち上げて、アップする。こういうのはイキオイなのである。

とはいえ、それで出たのがもう11時15分であり、やむなくタクシー使って高田馬場。高くついたシャレであった。時間ピッタリにはき、ビッグボックス前でjyamaさん拾い、またタクシーでグランド坂まで。そのタクシーの爺さんの運転手、私が道を言うために先に
乗って行き先を告げたら、すぐバタンとドアを締めようとしてjyamaさんをはさむ。
「二人乗るならそう言ってくれなきゃ」
とか言ったが、プロなら確認してから締めてもらいたい。

某大学の国際会議場、例によって他の“真面目な”会議も合わせて催されており、われわれのような異様な風体の人間たちの集合は彼らの目には異世界のものと映るのではないだろうか。ずらり一列に並んだ受付の女性たちが、一斉にこっちを眺めていた。

今までは皆神龍太郎さんが主催者という立場で進行を担当していたが、皆神さんの大阪転居にともない、今回から植木さんが肝いりになって運営される。12時から始めて6時まで、植木さんずっと立ち詰め、注意し詰め、機材など操作し詰め、ご苦労様。

私のネタはトルネード・フィルム(元アルバトロスの叶井俊太郎氏が設立した会社)の新作『プレスリー対ミイラ』の試写会招待状、ビル・マミーのCDなど。皆神龍太郎さんの発表の、某京大の数学の教授の“ゼータさんが住んでいる家”というのが抜群に面白かった。あと、ちょっと発表できない社内資料の、スポンサークレームの馬鹿さ加減とか。

驚いたのは1991年のSF大会の時の、まだと学会が発足する前の、第一回トンデモ本大賞の映像をS井さんが持ってきたこと。よくとってあったものである。山本会長はそんなに変わらないが、藤倉珊さんの若く美青年なこと! 志水さんも今の半分くらいの体重と思われ、私にいたっては帽子をとって(最初はかぶって壇上に上がっていたが)トークしている。まだキャラクターが確立していなかった、ということか。これから15年、思えば楽しく進歩なく、やってきたことである。

ぴんでんさんの発表が安定したうまさなのは営業トークをやっている余得だろう。明木先生はプロだからうまいのは当然、ユニークなのは本郷ゆき緒さんで、昔S学会に所属していて、そこで毎月信仰告白みたいなことをさせられてうまくなったという。瀧川鯉朝くんも初めて発表、申し分なくウケて無事と学会デビューを果たす。真打昇進の後ろ幕を送った縁もあり、彼をと学会員に推薦することにしているが、これでと学会には真打が二人いることになる。光デパートさん、『アリエナイ理科の教科書2B』の著者の方々(発表で本当にコーラの缶をクラッシュさせたり、レーザーを放射したりしていた。黒いでんじろう、である)、その他九州からの獅子児さんなど、今回はビジターさん多々。最近は事務職に徹している眠田さん、久しぶりに発表あってよかった。某大学に奉職してごぶさたになったD前さんも発表、5年ぶりだとか。で、ネタが5年前のネタの続き、というのがいい。個人的にはFKJさんが発表したイギリスのアニメーション作家、フィル・ムロイのやたらブラックなSF侵略アニメ『イントレランス』が気に入った。DVDが欲しいな。

全体的には小ネタが多かった(萌え系ネタの多いこと)が、発表者たちの技術の進歩もあり初体験のjyamaさんにもウケていた。ただし、発表人数が60人を超してしまい、会場の借り時間がパッツンパッツン。これをどうするか。

二次会はすなむしさん、桐生祐狩さんなどとタクシー乗り合わせて秋葉原万世。座敷席が椅子席になっていたが、その分収容人数は増えた模様。乾杯の音頭を取らせられる。で、その後、すぐ恒例の、バイキング料理へのイナゴの群れの如き殺到になるわけだが、皿に料理を盛って帰ってくると、椅子や床がビールで塗れている。
「誰かこぼしたな」
と言ったらjyamaさんに
「ご自分でーす」
と言われる。ウエストポーチをひっかけたらしい。全然気がつかなかった。失礼しました!

jyamaさん曰く、新田五郎さんの発表が一番技術的に笑えた、と。植木さんが、あの人の投げっぱなし発表技術は風来末さん以来であろう、と。IPPANさんなどと次回大会や映画会について打ち合わせ。

8時45分、お開き。jyamaさんも帰る。植木さん、しら〜さん、偽史学者さん、ひえださんと誘い合わせ、幡ヶ谷チャイナハウスへ。偽史学者さん、例によって大きな声で海外アニメの話。『可愛い魔女サブリナ』『幽霊城のドボチョン一家』、それからアメコミ話でドクター・ドゥームのことなど。カニ炒め、帆立とウリの炒め物など。蟻酒(ありしゅ)を飲みつつ“不思議の国の蟻酒”“蟻酒川宮”などと。11時過ぎ、植木さん、しら〜さんに送られて帰宅。雷雨にもぶち当たらず、運がよかった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa