裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

木曜日

シー・シー・シーん中の虫

 お前がタイガースを内部から蝕んでいる張本人だ! 朝5時半、目がさめて、本を読んだりしてぐずぐず。7時半、本格的に起床。グレープフルーツジュースを飲みながら朝食作り。朝食、K子にはセロリとニンジンの卵焼き、私はバジルスパゲッティ小皿一杯。やじうまワイドに、どっかで見た顔のアイドル俳優が出ている。最近の若い俳優の顔はよく知らないのだけどな、と思って見たら、ハリケンジャーの霞一鍬、姜暢雄だった。あの番組では耽美とも言える美青年だが、こうして見るとただのあん ちゃんだな。やっぱり“兄者!”とか言わんとな。

 読売新聞朝刊の広告欄、『週刊新潮』の広告が、一部分スッポリと空白になっている。その脇に“「シャブ」も「群盲」も 掲載を拒否された「週刊新潮」新聞広告の「言葉狩り」実例集”という見出しがあるので、そこも何かヤバげな言葉があったのか、と思ったが、産経の方で確認してみると“読売新聞の伏魔殿「販売局」に国税庁のメスが入った裏金スキャンダル”という記事だった。まあ、これは載せんわ。ネットニュースの方は“剛竜馬ひったくりで逮捕”とか、“トム・クルーズ、ホモ疑惑の相手に勝訴”とか。剛竜馬も金に困ってデブ専ホモビデオに出たりしてたんだとか。

 原稿書き、煮詰まって新宿に出る。王ろじでとん丼。丼といってもここのはカツカレーである。で、カツの乗っていない、ただのカレーもインディアンカレーとか言ってメニューにある。値段を見るととん丼が950円、インディアンカレーが850円になっている。すると何か、上に乗っているカツは100円の値打ちしかないということか。伊勢丹でちょこっと買い物して帰宅する。食事しに出ただけなのに、ぐった りと疲れた。カツカレさまというやつか。

 資料本の類を積み上げて読む。ついでに荻野目慶子の不倫本『女優の夜』も読む。ノッケから深作欣二とのセックスが最高で、達したとき音楽が聞こえた、とか書いてある。無邪気なもんである。どこだかの週刊誌に、深作夫人の高原早苗が“荻野目慶子だけは病室に入れない”と言った、と書いてあったが、無理もない。前に不倫関係にあって、それが原因で自殺した河合義隆監督(これもまあ、この本の記述を信じると、自殺に至るしか道はないよな、と思える人格の持ち主だったようだが)の未亡人に、常識を越えた理解と心の支えを得ていたと書き、申し訳ないと繰り返しながら、またまた同じ立場の人間を作り出す関係に足を踏み入れる愚かさ。これを否定はしたくない。人間とはそういう矛盾に満ちた存在なんだろう。恋愛とはそういう理性ではどうしようもない事象なんだろう。だが、哀れとは思いながらこの著者にどうしても同情できないのは、ミラン・クンデラから桜井哲夫(ハンセン氏病患者の詩人)、太宰治、ニーチェまでを引用して、自分のそういった行動・心情を正当化しようとしていることだ。バカはどう理屈をつけてもバカなのである。人倫にもとる行為だから不倫と言うのである。それを自分で止められない人物(しかもたまたま若くて美しい)というのは、存在自体が社会にとっては邪悪な、病原菌みたいな存在なのである。自分をそう規定して、“でも、やっちゃうのよ”という、そこらへんへの開き直りが、この著者にはまだない。悪意がない有毒小動物という感じ。この無邪気さは母親ゆずりなのだろう。著者が『いつかギラギラする日』に出演中、深作監督への賞賛を母に 電話したとき、母は彼女にこう助言したそうだ。
「よかったねぇ……じゃあマッサージが得意なんだから、パパにしてあげるように監督さんにもしてあげたら。疲れるでしょうからねぇ」
 いかに自分の夫より年上だとはいえ、すでに松坂慶子などとの不倫関係をニュースでさんざ騒がれていて、衝動を抑えられないことは証明済みの人物の部屋にマッサージに行けと娘に勧める母親というのも問題である。で、娘はもちろんやられちゃうのである。“母はただ、思いやりの言葉を発しただけで、マッサージをするのに「夜の部屋で」と言ったわけではなかった”と書いてあるが、男女のアレは別に夜の部屋でなくったって出来るものなのである。

 4時までグーと寝てしまう。惰眠ではあるが、モーローとした意識の中で、今日の日記のダジャレが浮かんだ。まったく無駄というわけではなかったか。起き出して、原稿を書きながらバイク便に電話し、SFマガジンの図版用ブツを井の頭こうすけ氏の元へ届けてもらう。6時半にWeb現代アゲ。編集部YくんとK子宛にメール。

 それからまた雑用すませ、7時10分に家を出て新宿へ。考えてみれば二回、同じところへ出ている。無駄をしたような気がする。紀伊國屋裏鳥源にて講談社新年会というか、井上則人くん泥棒被害大変でしたねの会。井上デザインでは風邪が流行っているらしく、アケボノさんは欠席。泥棒の話、アニドウの話、幻冬舎の文庫本の話などいろいろ。料理は鳥たたき、あらい、つくね、スズメ焼き、ウズラ焼きといつもの定番。ウズラをK子の発案で、タレでなく塩で焼いてもらう。店は“臭みがあるからやはりタレの方が……”としぶったようだが、焼いたのを齧ってみると、あっさりとした風味で、なかなかうまい。そのあと、鍋。ビール、日本酒、メローコヅルと酒もすすんだが、そんなに酔っぱらわなかった。昼寝で体力を回復させたせいか。

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