裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

日曜日

このピーコック民!

 男のくせに派手に着飾りおって。朝6時に目が覚める。隣のフトンの植木氏はまだ熟睡。朝風呂に入る。開田さんも入ってきた。このホテル、これまではロクに客もいなかったけど、今回は混んでますね、そりゃ連休だからでしょう、という話から、フリーになって連休に旅行するとは思いませんでしたね、というような会話になり、いかにフリーの職業が人生設計などというものを立てておらぬかという話になる。

 部屋に戻ると入れ代わりに植木氏が風呂に行き、帰ってきた氏と二人で、朝のホテル前を少し散歩。空はさわやかに晴れ、鳥の鳴き声がのどかに響き、空気は澄んで、山の稜線がきれいに映えている。私は自然に極めてうとく、いつぞや能登に行ってホタルを見て、“東京ではとても見られない”と日記に書き、どこのサイトだったかで“ホタルくらい能登まで行かなくてもどこでも見られる”と叱られたくらいだが、植木氏はまことに自然に造詣が深く、カナヘビなどを見つけては喜んでいた。黄色くてかなり大型の、ナントカサン、と名がついているんだろうな、という感じの蛾が、そこら中にいっぱい落ちている。なにしろ田んぼの真ん中にポツンという感じで建っているホテルであり、門灯の光に惹かれるのだろう。羽が片側だけで銀杏の葉っぱくらいある。

 談之助夫妻と朝飯。納豆、温泉卵、シャケ、漬け物、海苔という普通のメニューだが、ツケモノが普通のつぼ漬けから山菜漬け、カラシ漬け、松前漬け、シイタケ漬けと、やたら種類がある。食ってさらに部屋で一時間ほどゴロゴロ。NHKで与党野党の代議士集め、日本のアメリカ支援是か非かの討論。こんなノンビリした里でもこういう問題は追い掛けてくる。日本の現在の支援がまったく役にたってない、という反対派の指摘はまことにごもっとも。しかしながら、じゃあ自衛隊出さなくていいのかという問題はまったく別。自衛隊の戦闘地域派遣が憲法上問題アリ、という指摘もまことにごもっとも。しかしながら、憲法に抵触した行動を自衛隊がとれば即、戦争への道への第一歩という主張に関しては、アホなこと言いなさんな、という感じ。支援支持派も反対派も、とにかく視野狭窄のまま、感情論でわめきあっている様子。日本は平和だなあ、とつくづく思う。ロビーに降りてで新聞読むと、イギリスのブレア首相の強硬論がすごい。ブッシュ以上に戦争に積極的である。“理由や是非はどうあれ戦争が起こるときには、それに積極的であった国がその後のイニシアチブを取ることになる”というポリティクス・パワーを知りつくしているのだろう。

 11時、タクシー頼んで(今日はしなの路さんは柔道大会である。こちらもイベント続きの連休だな)バス停まで。大型おみやげ売り場『りんごの里』で、いろいろ買い込む。ジオポリスのスタッフに鹿肉カレーを買う。開田夫妻はいろいろ東京へ送る手続きを。植木さんはリンゴを買い、“あら、おネギもお安いわ”などと主夫していた。カイコのツクダニもあり、『絹の味』という商品名。カバンが荷物でパンパンにふくらむ。帰りのバスは連休中日でもあり、スイスイ行く。また植木さんとバカ話。ちょっと真面目な話もして、サラリーマン兼業文筆家である彼に、そろそろ一本立ちしたらどうですか、と勧める。今の植木さんの書くものは余技の軽みの面白さだが、そろそろ力を入れた論考も読んでみたいと思うのである。

 一旦新宿で別れ、6時ジオポリスで、ということで、帰宅。K子はまだフトンの中だったが、調子はまあ、いいようである。原稿、北海道新聞のコラムを一本書き上げて、ジオポリスに行く。談之助夫妻、開田夫妻は来たが植木さん来ず。自分も出るという認識がなかったか。談之助さん、“妻子置いて自分一人で旅行に行っちゃったんで、シボられてるんじゃないですか”と言う。日曜とあって人出は十分。立ち見も出る盛況となる。ハローミュージックAさんに聞いたら、昨日の鶴岡の日も盛況大ウケだったとか。めでたし。観客席に志加吾とまるちゃんの姿があった。談之助さんに最初また早変わりをやってもらい、その後、みんなヘルメットかぶって花火談義。開田さん撮影のビデオ(帰って大至急で編集したもの)を上映したら、もう大ウケ。蝶が飛ぶところでは拍手が巻き起こり、降り注ぐ火花の前に村長さんの、腰に両手を当てたシルエットがすっくと立つところで、みんな爆笑。トーク時間が足りないほど盛り上がった。

 終わって、観に来てくれた加藤礼次朗夫妻と一緒に(志加吾たちも誘ったが、〆切があるとか)新宿幸永。8人の大人数だったが幸い、待たずに入れる。K子もやってきて、とにかく花火ばなしで盛り上がる。礼ちゃん、“来年はオレも連れてってよ!年男なんだから!”と。あやさんは舌にでっかい炎症起こしていてちょっと無気味。

 狂牛病騒動でここのホルモンはどうなるのやら、とそれが心配だったが、ちゃんと検査された屠畜証明書付きの牛しか使ってません、とハリガミがされており、テールスライスも極ホルモンも健在。テールスープをみんなで回し飲み。万歳である。旅行は楽しいものだが、さてその翌日、東京に帰って駅で別れるときが何かウスラ寂しいもの。それを、そのノリをその帰京当日のイベントまで延長させて、こういう風に打ち上げて終わり、というのは絶妙である。またこういう帰京報告イベントというのをやりたいものだ。旅の疲れも吹っ飛んで帰宅、12時就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa