裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

木曜日

シャイダー桜になぜ駒つなぐ

 駒が勇めば花が散る(円谷浩追悼歌)。朝7時にそれでもとにかく起床。K子が梨(二十世紀)が食べたいというので切って、朝飯がわり(後でやはりおなかが空いたというのでトーストを焼く)。私はイチジクとヨーグルト。タリバン内部かなりあわてふためいている様子。薮をつついて蛇を出したということわざがイスラムにあるだろうか。ワイドショーで、現地ではビンラディン氏整形! という号外が出て(ビンラディン支持の新聞で)いる、と報じ、その整形写真を紹介しているが、写真が情け なくて大笑いモノ。

 ネットで某女流作家(ネット超有名人)の日記を読んだら、ビデオ『沙粧妙子最後の事件』の英語タイトルが“LAST CASE”とあるのはいくらなんでも間違いだろう、という記述があって、一瞬エッ? と自分の頭の中の英語辞書を繰ってしまう。彼女は“FINAL CASE”がたぶん正しいと言っているが、トレントだってドルリー・レーンだってミス・マープルだって、みんなラスト・ケースである。このタイトルは言わばミステリ界の定番であり、ミステリドラマのタイトルがこれを踏襲するのは当然だろう。いや、ファイナル・ケースという英語も存在はするのは確かだが、なぜラスト・ケースが“いくらなんでも”間違いだと主張するのか、その根拠が聞きたい気がする。彼女の発言に根拠を求めても無理かもしれんが。

 トイレ読書用の本、こないだ中央公論社版『世界の歴史・7近代の序曲』を読了した。中学生のころから折に触れてパラパラ読んでいた通俗歴史書であるが、通して読破したのはこれが初めて。別に読みたかったわけではないが、文章のテンポがいいのとこのところ下痢気味でしょっちゅうトイレに行くので、通読してしまった。こういう、本を気軽に通読する時間は、すでに私の残り人生にはトイレタイムくらいしか残されていないのではあるまいか。しておきたいことやらねばならんことの山積に、あせりを感じるばかり。これまでの数十年にこれだけのことが出来たのだから、この後の数十年も、と思うのは間違い。体力気力などと称する先生たちが、この年齢から先 は急激急速に、スウスウと抜けていくのである。

 アスペクト用のコメントエッセイ12枚、6時間で書き上げる。途中買い物に出て書評用の本や晩のメシの材料なども買ってのことだから誉めてもらわなくてはいけない。もっとも、すでにこのスケジュールで印刷所が火を吹いているそうだから、それについては一言もない。さらにコラムとあとがきまであるんである。K子は相変わらずベッドでうなっているが、腹だけはやたら空くらしく(昨日も三人前は作っておいたはずの野菜スープを全部平らげていた)、夕食が待てないというので、トーモロコシを半本、茹でて与える。札幌の実家から届いた漢方薬ものませるが、大黄が入って いるようで、腹下しが心配。

 7時ころ、早めの夕食。エビイモ、レンコンなど根菜たっぷりのおでん鍋。クズキリが食べたいというのでそれも入れる。ビデオで先日配給会社さんから送ってもらった『ヘヴィ・メタル FAKE2』を見るがおっそろしくつまんないので途中でやめて、『デスレース2000』。イブ・“冷凍兇獣惨殺”・メルキオール(原作者)マンセー的作品。見るたびに安っぽくなっていく作品。この安っぽさこそSFだとずっと信じて生きてきましたのですが違いましたかそうですか。でも私の帰る故郷はたぶんここなのですよ。そう言えばこの作品に限って、“イブ・メルチャー”名義での記 載が多いですな。

 それからまたずっと原稿。気圧が夜に入って乱れだし、体調悪化したので10時には寝てしまう。自分の汗の匂いが気になって仕方ない。ワキガの匂いではない、何か甘ったるい、ヤな匂いなのである。疲れのニオイとでも言うか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa