裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

金曜日

どこかトークへ行きたい

 トークライブ公演、ただいま格安受付中。朝5時に目覚めて、寝床でじっと目をつぶっている。またウトウト。7時半、朝食。紀の国屋で買ったコーンポタージュ。甘すぎてダメ。オリンピックが終わり、ワイドショー、また殺人事件だのタレントの不祥事だのでにぎやかになる。結構々々。田代まさしもオリンピックの期間中に捕まればこれほど大きく取り上げられなかったろう。

 原稿書き、週アス一本。今回はちょっとネタへの持って行き方が強引。とはいえ、週刊誌のエッセイは月刊誌に比べて、少し最終的なカンナがけをあっさりさせて、いく分か荒っぽさを残しておかないと印象が弱くなってしまう。週刊というリズムに、 読者が時事性をより多く求めるためだろう。実際はこの週刊アスキーは普通の週刊誌 よりも原稿を早めに入れるため、時事性は薄まっているし、そもそも私の連載が時局などを考慮外にした脳天気なものなのだが、それだけに文章の感触に、ジャーナリスティックな雰囲気を残しておかないと、ただの有閑雑記になる危険性がある。

 書き終えて、昨日のイーストプレス原稿の図版をバイク便で出し、一息。しばらくネットでネタ拾い。裏々パティオで某氏に勧められた『電波ニュース』なるサイトで少し遊ぶ。さまざまなサイトのURLを文章変換エンジンにかけると、勝手に変な単語や語句をそのサイトの文章に挿入し、デンパ系掲示板にしてしまうというもの。いろいろやってみるが、相性のいいところと悪いところがあるようだ。日本国憲法を入れてみると、以下のようなものになる。なんとなく意味の通るところが何とも。
「第1章 天皇 第1条 天皇の地位 天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は、残虐に 主権の存する日本国民の総意に基く。ところでファミコンって知ってる? 自分の家 でテレビゲームができるんだよ。
 第2条 皇位の継承
 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。しかし残された時間はあとわずか。どうする? 考えろ。考えろ」
「第2章 戦争放棄 第9条 戦争放棄、軍備及び交戦権否認
 (1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇叉は武力の行使は、俺の顔に免じて国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する(涙アンド変な汗)。
 (2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、取り返しのつかないこれを保持しない。何だそりゃ。国の交戦権は、鮮やかにこれを認めない。けれど親も社会も許してはくれません」
http://www02.so-net.ne.jp/~saitou/denpa.htm

 昼飯はシオカラで茶漬け。エンターブレインNくんが対談直しのフロッピーを取りにくるというので(先日夜中に来たがうちのマンションは10時過ぎるとロックがかかって部外者は入れなくなる)、郵便受けに入れておく。新橋まで出て、徳間ホールで三池崇史監督『漂流街』試写。受付で、大映のFくんに会う。ガメラ復活委員会当時以来である。ガメラを回転させるのをしぶっていた金子監督に“回転ジェットで飛ばないガメラはガメラじゃないだろう!”と強要した張本人である。『ガメラを創った男』は彼の企画なのだが、お互いあの当時から比べると太った。来年の昭和ガメラDVD発売にからめて、ちょいとまた、企画を立てようと話し合う。筒井康隆の大魔神シナリオの話をしたら、“あんなの出たんですか”と言っていた。

 映画はホモ映画だった(笑)。『日本黒社会』もそうだったが、この監督、ホンットにホモ、好きな。冒頭、ミシェル・リー奪還のシーンで、どうみてもアリゾナかどこかの砂漠としか思えない光景の中を走るバスの映像にかぶせて“埼玉県”とテロップが入る。まるで『ケンタッキー・フライド・ムービー』だ。ここでこの映画の歯車に自分の映画感性が噛みあうかドーかで評価が分かれると思うが、考えてみれば『ブラック・レイン』だって平気でそんなことをやっていたんだから、日本人監督が同じことをやって悪い理由もない。渋谷のド真ん中でバズーカぶっ放して機動隊も駆けつけてこないんだから、リアリティを言うのは野暮である。普通の監督なら助平根性を出してチマチマと活かしておくであろうオイシいキャラクターまでどんどんブチ殺していくところがさすが三池崇史。で、最後に生き残るのがやはり・・・・・・。おお、ハッピーエンド(一部の人間にとり)ではないか。

 監督が手をスリ合わせて“見てよ、このキャスティング”とエツに入っている声がフィルムの裏側から聞こえてくるくらい、キャストが凝っている。一番よかったのは塩田時敏の闘鶏屋だが、ブラジル人のミニTV局のレポーターも、そこのミゼットのカメラマンも実にいい。及川光博の中国人マフィアは役がハマりすぎで、逆に平板になってしまった。こういうキャラクターは、存在感だけで、実は動かしにくいのである。テレンス・インの方が耽美キャラとしては印象に残る。吉川晃司はもう、オシッコ漏らしそうになるくらい凄い。存在感は『仁義なき戦い』シリーズの小林旭に匹敵する。エンディング・ロール、“製作総指揮・徳間康快”の文字にしばし黙祷。

 徳間ホールを出て新橋駅に行ったら、キオスクの新聞に“鳥取大地震!”の見出しが大文字で。驚いて夕刊を買ったがまだ詳細不明。新宿まで出て、タクシーに乗ってそこのラジオでニュースを聞こうとしたが全然やってない。運転手が地震オタクなのか、“鳥取てのは地震予知連絡会も危険度ゼロと言っていた地域ですよ、驚きましたね。もっとも、あそこの県は全国で一番地震保健の掛け金も安いところなんです”とか、“米子空港はまだ完成して十年たってない空港だから、地震の被害で滑走路が使えなくなったのは痛いですね”などと、やたら詳しい。マグニチュード7.3で、死者が出ていないというのも、いかにも鳥取らしい。

 帰宅して、メール数通処理。来年の出版に関する打ち合わせの予約がもう入る時期になった。ちょっと来年の出版スケジュールを調べてみるが、どうやらまだ、地盤沈下にはならぬらし。少し安心。6時半、家を出て、大向小学校下の無国籍坂(今日の漂流街でも、ここが出てきた)の輸入食料品屋で買い物。それから幡ヶ谷へ向かう。チャイナハウス、こないだの今日だが、ここを紹介してくれた朝日新聞社Kさんと、ひさしぶりにメシ。『AERA』に異動とのこと。現在のところよりは腕をふるえるだろうと思う。今日はチャイナ、いくぶん暇があり、八年ものの鉄観音茶をふるまわれる。最も風味が出るという三番煎じは、啜りこむと、眼球の裏側までが、ミントの葉を噛んだような、スーッとさわやかな気分になる。上海蟹がうれしかったが、マツタケ炒めレモン風味、鶏油豆腐など、ふだんあまりこの店で食べたことのないものを出してくれる。なかんずく、おこげ料理は、あんが貝柱ダシで、濃厚極まりなく、言葉を失うオイシサであった。異動祝いにおごろうとして逆におごられる。原稿も書いていないのに、まことにすまない次第であった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa