裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

土曜日

メーク・ダライラマ

チベット大逆転ですよ!(長嶋茂雄・談)

※原稿書き 仕事場整理

朝9時起床。
メールチェック。
あらあらというようなこと一件。
ショボいことを、とちょっと苦笑。
空模様、昨日と打って変わった寒々しい感じ。
もっとも11月である。

いろんなこと一気にやらねばならず、
目が回りそうである。
結局クルクル動き回るだけで何もできないことにも
なりそうだが。

某共著の件でHさんにメール。
夜遅く、大変好意的・積極的なメールが来て一安心。
あと、『ラジオライフ』新担当T木くんから電話、
第1回の原稿面白かったです、と。
こっちは急場で資料揃えるのが間に合わず、
ちょっとヒネリの足りないものになってしまった、と
思っていたので、まずは好評で胸をなで下ろす。

昼は弁当、焼肉とタラコ。
どっちかでも十分にご飯は全部食べられる。
最近の弁当はおかずとご飯の量が等分らしいが、なんか
それだと落ち着かない気がするのである。

夕方まで雑用いろいろ。
気圧乱れて心気亢進の気あり。
バスで渋谷に出るが、夕方5時台と思えぬ暗さであった。
雨は小止みとなっている。
蔵書整理にしばし没頭。
とはいえ、本当にこれだけ冊数があると、どこに何があるかが
もうさっぱりわからず(整理係を雇うほどの金銭的余裕はなし)、
徹底整理は必然だったな、と思わざるを得ず。
とはいえ、これだけの数の蔵書は人目を驚かせるビジュアル効果は
十分で、テレビ取材など入る際には本当に役に立ってくれた。
次の事務所のビジュアル効果、先日見た某所を参考にアイデア
浮かぶ。

新宿のハルクで買い物し帰宅。
食事の用意。
“フーフー”もどきを作ってみる。
フーフーとは何ぞや。
『アフリカを食べる』(松本仁一)で知った、アフリカ(ガーナ)
の餅のことである。この本では食用バナナとキャッサバが素材、
ということだったが調べるとヤムイモで作るところもあるらしい。
フーフー用の粉も探せば売っているらしいが、突発的に食いたく
なったのでネットで一番簡便な作り方を検索、自分なりに工夫して、
マッシュポテトの粉と上新粉を塩湯で練り合わせ、それをレンジで
蒸して作ってみた。ねばりも味もまあまあ。

上掲書ではそれを痺れるほど辛い肉の煮込み汁で食べる(だから
食べると汗が噴き出し、みんなフーフー息をしながら食べるので
フーフーという、と説明がある)とあるが、なにしろ突発的な
食い気なので、市販のビーフシチューに豆板醤をたっぷり入れた
もので食べる。
これでもなかなか結構。即席にアフリカ(風)を味わえた。

で、ちょっと思いついて日本の餅でもやってみた。
うむ、やはり日本の餅の方がうまかったりする。
アフリカ雑煮、という感じ。

あと豚足、たまり辣韮。
発泡酒と一刻者。
DVDで『猫とカナリヤ』。
四半世紀も前に(もっとか?)京橋のフィルムセンターで
観たのだが、音楽もつかない完全サイレントで、途中で
眠くなってしまった記憶しかない(しかしフィルムがぶつ切れ
だったりしたのが気になって眠れもしなかった)。
児玉数夫、双葉十三郎といったオールド・ファンがミステリ
映画の古典として大絶賛していた作品だという歴史的価値で
観にいったものだが、今回こういう形でじっくり見られる
時代の幸せ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001J6566C/karasawashyun-22

“オールド・ダーク・ハウス”ものと言われる古屋敷怪談の
古典だが、そこはドイツ表現主義のパウル・レニ、冒頭で出てくる
その屋敷というのが、教会の塔を寄せ集めたような、実に奇ッ怪
な建物。そこに住む大富豪が、自分の財産をつけねらう親戚たちに
責めさいなまれたために狂死して、遺言書を残すにあたり、
開封は20年後、そしてその財産を譲渡される者の条件として
精神状態が健全であるということが証明されねばならない、と
いうことになる、という設定がまず凄まじく理に合わないが、
ある意味、この設定自体がこの全体が“ゆがんだ”映画のイメージを
表わしているのかもしれない。

とにかく、この映画(原作戯曲)の傑出したアイデアは、
遺産を狙う者にとっては相続人を殺す必要がなく、恐怖させて、
発狂させればすむ、ということであり、つまり演出の意向と
真犯人の意向が完全に合致するというところである。
やたら怖い顔をした家政婦やら意地悪そうな母と遊び好きらしい
娘のコンビなど、怪しげなキャラクターを一堂に会させることの出来る
作者はさぞ、楽しかったろう。真犯人にはもう少し意外性も
欲しかったところだが、それは時代を考えれば仕方ない。

ある人物が殺されて棚の中からまっすぐにカメラの方に向かって
倒れ込んでくるショット、どこかで見たなと思ったのだが、
テックス・アヴェリーのアニメ『Who Killed Who?』(43)
に、同じアングルのシーンがあったのだった(無限にそれが
繰り返される、というギャグ)。『Who Killed Who?』はまさに
オールド・ダーク・ハウスもののパロディで、あのシーンは
この映画のパロディというより、同じようなシーンが山ほど
出てくるこのジャンル自体のパロディなんだろう。
http://jp.youtube.com/watch?v=U89qW4-ht7w
『Who Killed Who?』は森卓也氏がその著書で取り上げたときに、
この作品の実写で出てくるホスト役の犯罪学者が、
アヴェリーの自演なのでは、といった推理を行っていた。
実際はそういうことはなく、IMDbによればあの役を演じた
のは当時有名だったコメディアンのロバート・エメット・オコーナー。
マルクス兄弟の『オペラは踊る』やビリー・ワイルダーの
『サンセット大通り』にも出演している人だそうだが、
アヴェリーは実はこの作品には声の出演をしていて、サンタクロースの
声はアヴェリー自身が吹き込んでいるのだとか。
こんなことがネットで簡単に調べられてしまう今の状況の
凄さに改めて感慨が深い。
あの本が出た1978年当時、アヴェリーほどの作家の顔ひとつ、
特定するのはムチャクチャに難しいことだったのだ。

*写真は自家製フーフー。あまり美味くは見えない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa