裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

日曜日

二ー都(にーと)物語

秋葉原と池袋乙女ロードにしか行かない。

朝5時半に目覚める。7時近くまでベッドでウトウト。窓の外の雲の光景、次第々々に陽がさしてきて、雲をオレンジに染めていく。名画の如し。

起き出して入浴、7時30分朝食、一階レストラン。バイキングで和食洋食とあるが和食を選択、ご飯(コシヒカリ)、納豆二パック、鮭味噌漬け。普通はこういうホテルのご飯は炊き方がどうしようもないものだがさすが米どころ、コシヒカリの飯、なかなか。納豆も大粒だが美味。

9時、Yくんロビーに迎えに来て会場下見。ホテルとつながった会場だがさすがに大きい。信濃川のほとりに立つ会場で、天井の高い大きな通路から川に浮かぶ船が見える。ホテルの上から見たときも、川のほとりというのはなかなか味のある風景であった。

下見はすぐ終る。映像を使おうと最初は思っていたのだがドタバタしているうちに新潟入りをすることになってしまい、話だけになったので、映像のチェックなどもなし。一〇分ほどですむ。講演は1時から、入りは12時なので一旦Yくんの家に行く。若い子供無し夫婦の家庭というのは何か家庭であって家庭臭さがなく、何か不思議な雰囲気である。夫婦揃ってのホームシアター設備などがあると、そこに入り込むのが悪いような。

Y子さん、趣味のイラストを見せてくれる。ピエロや天使をモチーフにしたペン画だが、玄人はだし。猫三味線のDVDがあったので、それを講演にちょっとつかおう、と思いつく。

11時にへぎそばの店で昼飯、へぎそばにはYくんの言うには二派あるとか。そこから会場入り。客入り前にDVDをテスト。豪華な控室で待つ。控室も機材も超一流だが、ダンドリを組むスタッフが全然慣れていない感じ。Yくんが全部仕切っている。

講演、最初は新潟出身の漫画家についての話、ということで高橋留美子の思い出(デビュー作を見て驚愕して出したファンレターにすぐ返事が来たこと)などを話すが、そこらから現在のマンガの状況について語り、これまでのマンガの技術というものの大半は紙媒体で普及させることを前提としたものであって、これからの課題である電子メディアに対応する技術を早急に開発しなければマンガは衰退していく、という危機感について話し、そこから、絵物語、紙芝居という、本来マンガに駆逐された形式の電子メディアへの意外な相性の良さを語る。話していて自分でアッ、というような発見があったが、しかしなにぶん応急な話のもっていきかただったもので、聴衆に納得してもらえたかどうかはこころもとなし。しかし質問タイムにも熱心に問いかけてくる人がいて、反応はよかった。客席の中にと学会のSさん(新潟在住)の姿あり。

終ったあと、すぐ場所を移動して、一階会場で開催されていた(こっちがメインか)『地域ICT未来フェスタ』に。ここのリレートークに参加。前の人のトークが終るまで、袖のところで新潟県知事さんと同席になり、いろいろと話す。新潟に情報工学系の学校を誘致したいのだがなかなか見通しが立たない、とおっしゃるので、こないだ東大に行ったときのことなどに触れ、すでに現在、パソコンを若い人たちは改めてクリエイティブなツールとして意識していない、日常の中でパソコンを使いこなしている人たちの才能を見いだし、プロデュースする、という、一段階先のことを考えないと、などと提言する。あとでYくんがその様子をのぞきこんで
「えらい盛り上がってましたね」
と首をかしげていた。私と知事、という組み合わせがうまく想像できないんだろう。

やがて壇上にあがり、ICT関連のミニトーク10分。司会者(大学の先生?)が“携帯の普及には光と闇がありますね”というので、携帯犯罪のことにも触れる。なかなか、こういうことに触れるパネリストがいなかったらしく、喜んでいた。終わりにその司会者さんが
「唐沢ワールドの一端に触れることができて」
と言っていたので、まずいい出来だったと思う。さっきの講演よりこっちのトークの方が満足度高し。

これにてお仕事終わり、Y夫妻とおみやげの笹団子を買いに行く。昼間にYくんの家でY子さんから、笹団子にオスメスがある、という話を聞いた。あんこが入っているのが女団子で、男団子はキンピラだのシャケだのが入る、という。古い商店街の中にある笹団子屋さんに行って(蒸している笹の香りが大変にいい)笹団子を買い、そのことを確認すると、店主のおじさん、
「いえ、あんこ入りもキンピラ入りも、どっちも女ですよ」
という。
「男団子ってのは中に何にも入ってなくて、きなことか醤油をつけて食べるんです」
とのこと。Y子さん、
「えーっ、ウソ教わって信じてた!」
と頭を抱えていた。

後で調べると、ウィキペディアにも間違えて書いてある。と、いうか、ここから誤解が広まったような。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%B9%E5%9B%A3%E5%AD%90
よく言われる、誰でも書き込み自由なウィキの欠点が出た例だろう。↓こっちが正しいと思われる。
http://food.nespace.info/dic/dic_view.php?id=39

駅ビル地下のパスタ喫茶でダベる。私も、Yくんには早く東京に帰ってきて一緒に番組を作ってもらいたいと切に願う。4時43分発のマックスときで東京。トンネルだらけでモバイル使えずイラつくのは行きと同じ。5時ころ、王子で『星に願いを』打ち上げに出ている開田あやさんから
「まだ?」
と電話ある。まだどころか、関東圏内にも達していない。

7時半上野駅着。。タクシーで王子まで。マドに電話して、喜多楽本店でのあぁルナ打ち上げ。笹団子と越寒梅(Y子さんからのおみやげ)を差し入れ。最終日、満席の盛況で、こないだ見たときに感じた欠点が見事に解消されギャグや台詞の歯車がかみあい、大変によかったとやら。観られなかったのが残念!

笹団子も酒も喜ばれる。確かに黒砂糖を用いたほぼ真っ黒の特殊な笹団子で、大変においしい。あやさんはすでにバテて寝ていた。ブタカン早坂さん例により落語家が高座で演じるような酔っ払いぶり。他にスタッフの人か、酔っぱらって、私に質問があるといい、
「プラネタリウムというのは恒星を映し出すのが主である筈なのになぜ惑星(“planet”arium)なのか」
とクダをまかれる。しら〜、マドなどといろいろ話をして12時過ぎまで。最終の電車で開田さん夫妻と帰る。

帰ったら自宅は段ボールの山で埋まっている。K子が大整理を試みて、自宅の本を全て事務所に送り付けようと思いついたらしい。送られる事務所の方も大変だぞこりゃ、と思う。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa