裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

金曜日

珍走と平和

この名称により暴走族はダサいということが若い世代にひろまり、社会は平和になります。

朝8時起床。急いで入浴、8時半朝食。アスパラガススープ、ブドー(甲州か何かか?)、酸っぱいリンゴ。朝食を早めたのはもちろん、今日の『ポケット!』収録のためだが、mixiなどに書き込んでいたら出宅がギリギリになる。

10分遅れになるがTBS到着、さっそく半田健人くん、I井くんたちと打ち合わせ。最初にわざとくさく『銀河鉄道999』の話から入る。これは“ちゃんと今日、収録していますよ”という証明みたいなものであるが、しかし後から気がついたが、999で話が始まって、ゲストは555だったのである。そこを指摘すりゃよかったな。

で、後は王監督のソフトバンク留任、そこから756号ホームランの話になり、ピンクレディの『サウスポー』になり、という流れで、一気に半田ワールドへと。ここらは計算通り。

さあ、その後はもう半田くん独壇場、私も(ざっと下調べはしていたものの)ついていくのがやっと、海保アナに至っては完全においてきぼり。
「僕は22歳だけど、心は昭和22年生まれ」
とか言っていたが、“金髪女性が好き”という段階で、もうこれは確かに昭和22年生まれのオヤジがイケメンに生まれ変わって平成のこの世に迷い出てきたとしか思えない。思うに彼の親が、昭和22年生まれの男をどこかで殺した祟りとかなのではないか、などと考えてしまう。とにかく番組としては大盛り上がり、サブのみんなも大爆笑だった。以前、別のラジオで眞鍋かおりに
「半田くんはしゃべらないといい男なのにねえ」
と言われたというが、いや、いい男なんてのはどこにでもいる。こんなに濃く昭和歌謡を語れる22歳は世界に一人だ。眞鍋かおり、やっぱりオタがわかっていない。

俳優、とは言い条、こういうラジオやバラエティに慣れているらしく、こちらサイドの要求もすぐ理解して、それに合わせてくれる。先日の打ち合わせで大変に興味をしめした『恐怖の人間カラオケ』(案の定ウケてくれた)の後、半田くんに『S・O・S』で鼻歌カラオケやってもらい、
「コーナー終るまで続けていてください」
と手まねで指示すると、ホントにそのまま続けてやって、CMあけに、
「そのままずっとやり続けていた、という風にやろう」
と言うと、ちゃんとそのままやり続けていたようにエンディングに入り、しかも途中で、
「……終りました」
と、唐突に終わり報告(これはアドリブ)。売れる奴はことごとく、カンがいい。

終って、
「楽しかったです、また呼んでください」
と言ってもらったのはホッとした。マネージャーさんに、ちょっと思いついた企画を呈示。実現すれば面白い。舞台の稽古で今日はこれからダンスの特訓、という半田くんを送り出し、私たちも局を辞去。海保さんが
「半田さん、しゃべっているとき目がマジなの!」
と言っていた。

『松乃家』という『松屋』のチェーンらしいカツ屋でオノと昼食。私はカツは昨日食べたので生姜焼き定食だったが、まず、うまかった。タクシー拾ったら、これが先週、渋谷からTBSまで乗った新人さんのタクシーだった。一週間後にこんどはTBSから渋谷まで乗るというのは、えらい西手新九郎。

仕事場帰る。仕事山積だが、今日はもう、何かグッタリ。しかも神経だけはハイテンションで落ち着かない。夜の収録だと、1時間しゃべって上がったテンションは酒で落ち着かせられるが、昼間のこれは始末に悪い。タントンに行き、揉んでもらって何とか鎮める。

また事務所に。電話数本。ほとんどが原稿催促だったが、一本、某社から。FAXで資料が送られてきたが、要するに私とその会社と私で共同で、ある商品を開発したい、という話。日記で、私がそれを使っているという記述を読んだのだそうだ。まだ海のものとも山のものともつかない話だが、開発協力費と、商品における私のロイヤリティの数字は、こういうお遊びみたいな企画にしてはなかなかのものだったので、引き受けてみることにする。

8時、自宅に。今日は母の室に、ナミ子姉と馨が泊まる。馨はノリ子姉にそっくりになった。一緒に食事。ほお肉のシチューと生ハムサラダ、それとイクラご飯。オレンジのクレープシュゼットがなかなか。ラジオを聴いてみる。構成やギャグは見事にカチッと決まっていて満足。もっともやはりまだ、私の声が自分で不満。ビール缶一本と半分で何故か酔い(マッサージのせいか)、自室に帰ってすぐ寝てしまう。

藤岡琢也氏死去の報。
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20061020i311.htm?from=rss
実写版『佐武と市』の市っつぁん(ちなみに佐武はなべおさみ)、『ガメラ対バルゴン』の、水虫に赤外線ランプを当ててバルゴンを誕生させてしまう船医(船の沈没で死んだのかと思ったらあとで普通の顔で出てきて、赤外線を当てたことを説明していた)。『小説・吉田学校』の広川弘禅、これは本人を知る私の母があまりにそっくりなので驚いたとか。三木武吉(若山富三郎)に取り込まれるところの演技のまあ、巧いこと。そしてキャスティングにびっくりの『ビューティフル・ドリーマー』夢邪鬼。いわゆるアニメ声優ファンたちにも“本当にうまい役者は声優をやらせても格段にうまい”ということを認識させたことであろう。そもそも、元の志望がラジオ声優であったというから当然か。平野文もせっかくこんな人とかけあいが出来たのだからもう少し演技開眼してもらいたかったのだが。テレビ版ブラック・ジャック(加山雄三)にも刑事役で出ていたが、これは田鷲警部と中村警部を足して二で割ったようなキャラだった。
『わた鬼』にしても、もしこの人がいなければ“とりあえず見てしまう”ことすらなかったのではないかと思う。うまいが故に橋田壽賀子に気に入られすぎ、倒れるまで手放してもらえず、役者としての円熟期に、あまり幅広い仕事が出来なかったのは役者としてもったいない限りであったが。
子供心に初めて“この俳優さん、うまいなあ”と演技について感想を持った役者であった。名優の死に、黙祷。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa