裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

金曜日

俺は今、猛烈に道灌している!

この名作落語を演じられるとは!(前座落語家)

朝7時起床、いろいろとあって気が重い。今日の仕事はどれもテンションあがるものなのだが。8時半、朝食。コーンスープ、黄リンゴ、巨峰。

26日に大木金太郎死去、72歳。力道山門下でジャイアント馬場、アントニオ猪木と共に三羽烏だった。一本足頭突きという強烈に個性的な技で知られるが、馬場の著書『16文が行く』(ダイナミック・セラーズ)によれば、これを売りにしろ、と発案したのも力道山だったとか。
「プロレスで売れるには代名詞になる必殺技が必要」
という、興業の天才・力道山の目がいかに確かだったかの証拠だろう。で、その力道山の鍛え方がすさまじく、大木の頭をつかんで、コンクリートの壁にガンガンたたきつけたという。内出血で頭の皮膚がブヨブヨになったというが、骨にもヒビが入ったんじゃないか。しかしそのおかげで頭が石のように固くなり、必殺頭突きが完成したというからプロレスってのは(いや、昭和プロレスってのは)すさまじい。タイガーマスクを読んで韓国籍なのだと知ったときには驚いたものだった。

10時15分、家を出てTBSへ。タクシーの運転手さんと
「新庄はしかし強運」
という話。
「強運な奴についていればその運のおこぼれにあずかれる」
と運転手さん、力説。自分も麻雀の強い奴と友達になったら麻雀で勝てるようになったという。新庄の話から引く例としてあまりにスケールの小さいところがいい。

TBS、スタジオ入り、程なく談笑さん入る。オノ、K田くん一緒。世界史の教科書をI井くんが買ってきており、例の履修不足の件をツカミネタにして、談笑さんの予備校時代の話をしようということになる。いきなり談笑、
「……このネタがいま、この時期に出てくるというのは、例のいじめ事件で教育委員会がつるしあげをくっていることに対する、現場への脅しでしょう」
と鋭い指摘。社会派ぽくなって結構。前半は少々真面目に進む。曲はクイーンを独演会の出囃子にしている談笑さんにちなみクイーンの『ウィー・ウィル・ロック・ユー』に合わせて『舟歌』を歌っている長見順の『舟歌IN Rock'n Roll』。

後半は話がグズグズになっていい感じに笑いが入る。談笑が勤めた予備校というのが“体育系の予備校”で、面談で
「うーん、キミ、今の平均点を合格圏にまで上げるには書き取りの点を10点上げるか、それとも反復横とびを2回増やすかだねえ」
とか指導していた、という話に爆笑。体育系予備校なるものがある、というのも初耳だった。ポッドキャスティングは立川流裏話で。K田くんの持ってきた『超落語!』にサインして渡す。

終って、赤坂の鶏料理屋『今井屋本店』(赤坂支店なのだが『今井屋本店』)で談笑、K田、オノと四人でランチ。私は焼き鳥丼、後の人たちは親子丼、鶏カツ丼。全てのメニューに産地と生産農家の名前がついていて、何か権威主義的であるような気がする。確かにうまい比内鶏だが。メンバーがメンバーだけに話題が遠慮会釈なく、ケンタッキーフライドチキンの話などになり、店の人間が脇で聞いていたら追い出されかねまじき感じ。

出て談笑、K田両名と別れ、そのまま歩いて東急エージェンシーへ。K口さん、K野さんらと、恵比寿GP興業打ち合わせ。まず向うから、費用と興行収入関係の見積もりが出て、それに関係しての変更点の提案が出る。うーん、この間際でこの変更か、と思うが、いろいろ諸条件を数字と突き合わせると、やむなしというところかな、と思い、その変更点を基本にいろいろと打ち合わせする。猫娘パーカーの話や、その後の企画の話には燃えるものあるが、とりあえず、目の前の企画はチケット何枚売れればここはペイ、といったそろばん勘定の話になる。1時間半、みっちり打ち合わせでかなりバテ。外へ出たらもう夕暮れの風景。日の落ちるのが早くなった。

事務所に帰り、連絡種々。ヒロックス・エンターテインメントから来た『ワナゴナ』の出演、ほぼ本決まりになりそうとのこと。6時、事務所を出て、王子まで電車乗り継ぎ。北とぴあであぁルナティックシアター『星に願いを』公演。区の建物だからだろうか、ポスター等なにも張り出しがなく入り口に立っている岡っちを見つけるまでちょっと不安。

はれつさん、しら〜さんの姿あり。平日なのでどうかと心配だったが、7分の入りは確保。開演前に、投光器が床下からガーッとせりあがってくるのだが、これがSFみたいで実にカッコいい。やがて橋沢さんの教授が客をちょこちょこといじり、芝居に入る。自分の脚本ゆえにやや、緊張。最初は過去編で開田あやさんの脚本、それから現代編で私の脚本。水と油みたいな対照的なものを、最後に未来編で橋沢さんがつなげるというもの。

過去編はピアニスト・渡辺一哉のボケが決まっており、それにツッコむ佐々木輝之の間がいい。ピアノを弾けない(弾くと別料金)というハンデを逆に利用しているのもよし。特高に追われるアナーキスト青年をキツネ(王子だけに)が助けるという話。

それからプラネタリウムの星空につなぎ、私脚本の現代編。飛行機が墜落、死んだ乗客たちが天国の入り口で神様に出会うが……という話。NC赤英の神様のインパクトはキャスティングの段階からこうなるだろうという通りのもので、バッチリ。乾ちゃんのスチュワーデスが、何とかなりの悪役になり、そしてラストでその改心がシリアスに語られる。私の台本は気軽なコントっぽいもので、ラストにこれだけ
シリアスな展開があるとは意外。しかし、きちんと話に辻褄を合わせているのが感心。

全体にみんな、台詞を思いだし思いだし話しているという感じで、まだ手に入ってないな、というところ多し。これでまとまってくれば笑いも散発的でなくどかんとくるし、その後のシリアス展開も生きてくると思う。千秋楽までにどう、変わるか。今日しか見る機会がないのが残念。

終って、橋沢さんに例のごとく誘われ、飲みに。よさげな昭和風居酒屋もあったのだが早めの店じまいだったりして、結局『半平』。二回の座敷に通されるが、これまた昭和風。巨大な木の根っこの置物があったり。ワイワイと飲みながらいろいろ話す。松ちゃんが、橋沢さんを挑発する(そして返り討ちにあう)そのタイミングというか語彙というか、これが爆笑もの。言わでものことを言って自爆する自虐ギャグなのだが、これは舞台で(あるいは映像で)キャラにして演じさせてみたいものだ。次回(来年)の公演に誘われる。うーむ。出るとしたら、それを何かに結びつけてマスコミ展開する方向性をさぐらないと。はれつさん、しら〜さんと、モヤシくんに、あぁルナのネット活用の拡大を提議する。

そこを出て、さらにしら〜、はれつ、橋沢と“冷麺が食いたい”と近くの韓国料理屋へ。雑談、人物月旦などいろいろ酔ってしながら真露飲む。海鮮チヂミなどはまずまずだったが最後の冷麺、ほとんど味がなく、大半残す。タクシー相乗り、帰宅2時。明日は新潟だというのに。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa