裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

金曜日

五反田のマナー

風俗店に入るのもマナーが必要ですよ。

朝、目覚め7時半。日記にこう書いてあるが、実際にはこの時間にベッドから出て、風呂場に入れてお湯入れスイッチを入れて、それから“お風呂が、わきました”というアナウンスが流れるまで、もう一回ベッドにもぐりこんで、ウトウトしている。今日は朝から雨、それもシトシトとかポツポツとかではなく、ザーザーの大雨である。

今日は10時半TBSスタジオ入りなので、朝食を30分、早めてもらった。ジャガイモとタマネギのどろりとしたスープ、ブドー。

食べて日記つけ、モウラ原稿のイラスト指示をK子に。これで30分、出るのが遅れる。すぐ出てタクシーで赤坂。こういうときに限って雨で道が大変な混雑、老運転手が
「お急ぎですか。近道を行きましょう」
と言ってくれて、さすがベテラン、私の知らない空いた小道をぐるりと回って、なんと元のところに出る。
「あれ、間違っちゃった」
結局、さらに時間を無駄に。ほぼ1時間遅れとなった。第一回からこれでは先が思いやられる。雨ばかりか風も強く、タクシー出たとたんの突風で自慢のオート開閉傘がオチョコになり、骨が一本、ヘシ折れてしまった。

第4スタジオ入り。打ち合わせして、すぐ収録に。もう、相手が中野監督なので、非常に楽。こちらが話をつむぐ必要がない。海保さん、イニャワラさん、ガラスの向うでのI井くん、ハルミさん、S川くんも大笑い。その分、も少しこっちがリードしなくてはいけないところで、単なる相づち役になってしまった。二回目以降の課題。
「対人恐怖ショー!」
なんてネタはラジオで放送できるのか、とちょっと心配になったが、局の検査視聴(そういうの、あるんだね)でも問題なく通ったとか。

終ってI井くんはすぐ編集室に籠って、地方放送向けの編集にかかる。局を出るとき、エレベーターから出てきたえらそうな老人に“やあ、しばらだね”と声をかけられる。はて、どこで会った誰だったか、まるで覚えがない。
「今の誰だ?」
「さあ」
と話していたら中野さんが
「世界の認知ショー!」
とやって大ウケ。しかし、誰だったかね?

中野監督を代々木まで送って、オノと事務所へ。こないだ無くしたUFO関係の資料、無事同じものが古書店から到着。ホッとする。ホッとと言えば佳声先生の恵比寿GPでのイベント、日取りOK、かつ会場やイベントの性質など、大変に喜んでおられるようで、意気が上がる。低気圧大雨の中なれど、この上がった意気込みでなんとか原稿を、とモウラにかかる。案外簡単に上がった。妙に腹が減っているが、考えてみれば今日は赤坂での収録で、昼飯を食ってなかった。快楽亭から電話、上野山功一が歌ってレコードを出した『夜の虫』について、という超マニアックな話題。

雨、降り続き。聞いた話では、東京での一ヶ月分の雨量に相当する雨が今日一日で降ってしまったそうである。そんな中、元麻布へ出かける。米澤さんの通夜。タクシーなかなかつかまらず往生。ズボンの裾がグショ濡れになる。オタクの涙雨だな。

善福寺境内、それでも大変な人出。この参集者のほとんどは、故人と直接の面識はあるまい。ただただ、自分たちの“居場所”を作ってくれた故人の業績に感謝の念を評したく、集まっている。改めてその大きさを想い、自分以降の道筋を引く前に退場せねばならなかった無念さを想う。

さすが交通整理や道案内、場内整理のスタッフの慣れていること。ご香料置いて列に並ぼうとしたら、
「どうぞこちらへ」
と関係者の列に誘導された。村上知彦氏、マンガ図書館の内記館長などに声をかけられる。故人の思い出を話しながら焼香の列に並ぶ。私からの花が正面に飾られていて、もっと他にビッグネームもいるだろうに、とやや赤面。

遺影の米澤さんはいつもと変わらぬ笑顔だが、あの陽気な奥様が顔を泣きはらしていて、ちょっと何も声をかけられず。私が死んだら女房は泣くかな? いや、絶対彼女、他人に泣き顔は見せないだろうなあ。

焼香のあと、お清め室でビール注がれる。顔見知りの方たちに軽く挨拶。テレビいつも見てますよ、と。不気味社社主から、コミケの申込み用封筒を模したデザインの香典袋を一部、わけてもらう。昨日徹夜で製作したそうだ。これは洒落ている。

寺を出る。雨、さらに繁し。タクシーが目の前に来たのでつい、乗ってしまい
「中野」
と告げたら、中延に連れていかれた。そこから五反田に行き、五反田からJRで新宿、小田急で弁当を買う。母の室に行き、そこで豚汁、キャベツとコンビーフ炒めなど食べながら弁当を使う。日テレの政治バラエティ、最近政治絡み平和がらみ発言の多い太田光の番組だが、
太田の言っていることは中学生なみのレベルの平和論で、論理の組み立てすら整っていない感情論。平和主義を唱えることを悪くは言わないが、こんな論をいくら人気者だからと言って堂々としゃべらせては、コメディアン全体の頭の質が疑われないかという程度のもの。

『ポケット!』第一回を聞く。やはり深夜に比べハイテンション。二回目からはも少し落ち着いてやろう。しかし、米澤さんのことが通夜の当日に話せたのはよかった。

明日の九州行きに備え、K子早めに帰る。ご祝儀袋に名前を書いたり、いろいろ。さっき御霊前の袋に名前を書いた筆ペンで、今度はご祝儀袋に名前を書く。人生いろいろ。12時前に早寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa