裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

火曜日

ジャイアント馬場にアポ無し取材

「大体、オレは“アポー”なんて言ってないよ」(馬場氏談)

朝7時半起き。日記つけなどやり、新トイレ読書の『トンデモない生き物たち』(宝島社)読む。動物学や植物学におけるトピック紹介の読み物としてはまず、読めるが(昔はブルーバックスでよくこういうのを読んだ)たぶん出版社としては『へんないきもの』(バジリコ)の線を狙いたかったのだと思う(書名からして)。だとすれば全く面白くない。あのバジリコの本のヒットは一にかかって、科学ライターらしからぬ早川いくをの、軽妙かつ不真面目な文章力にあった。この本のそれは科学ライターの職癖と言える、正確だがつまらない文章で(そのくせ唐突に“セスナは登録商標”などという生物に関係ないトリビアが入る)、しかも年寄りじみた(著者は私より一つ下だが)“〜なんぞは”などという言い回しが目立つ。切り口と語り口ということの大事さを改めて思う。

入浴その他如例、9時朝食。カボチャのどろりスープと夕張メロン、プチトマトのややプチじゃないの一ヶ。紅茶が切れたところにミリオン出版からちょうど紅茶セットがお中元で届いたのでそれをさっそく用いる。読売の天声人語みたいなところ(あれなんて総称するのか)に例のA級戦犯に関する天皇メモのことが載っていたが、出てきた時期とか、どう考えても怪文書に属するものと思うのであるが、本物という検証は済んでいるのか。まず、そこでどのような検証が行われたかをマスコミはなぜ読者に提示しないのか。

どんよりとした曇り空ながら雨のないのだけでもうれしい。日記つけ、各仕事先と電話、メール連絡。『幽』京都イベント出演に関する件も。あと、佳声先生のご家族サイトから、DVD『猫三味線』、アマゾンでは佳声先生と私の名前が、“出演者、スタッフ”に載ってない、という指摘。弁当(うな玉)使って、タクシーで渋谷、時間割。NHK『こだわり人物伝』打ち合わせ。テキスト内容と番組はかなり違えてかまわないそうなので、ここでもいろいろ、その後考えた自説を述べる。

収録は第一回、二回分をまとめてNHKで、三回を岡本太郎美術館のウルトラマン伝説展で、最終回を円谷プロ内で。岡本太郎美術館、案内は来ていたし行こうとは思っていたが川崎は遠いなあ、とあぐねていた。仕事で行けるのはまことにありがたし。
事務所に帰り、まず『創』のオタク清談に手を入れて、とか思ったら自宅のパソでは添付文書が開けない。仕方ないのでまず『週刊朝日』の“あの本”の原稿。このネタならエピソードにはことかかない。文字数内に収めるために話の枝葉の部分をあちこちと処理する。

暑中見舞ハガキの宛名チェック。数年前の年賀状を住所調べのために引っ張り出してチェックしてみるが亡くなった人あり、無くなった会社あり、つきあいの切れた人あり。昨今ではふんぞりかえっている男が妙に殊勝な言葉を書きつけてきていて苦笑したり。歳月なるかな。

某社女性編集さんから電話、前に“こんなの書けます?”というオファーの来た原稿の件。すっかり忘れていた。ちなみに昼のNHKとの打ち合わせで出た話だが、円谷英二は
「こんな場面が欲しいんだが(特撮で)出来るだろうか」
と訊かれたときは、まず
「出来ます」
と答えてから、さて、どうしようかと考えたそうである。私も基本的に、書けますかと訊かれたら書けます、と答え、それから考えることにしている。

もっとも今回の話は私のなわばりうちで、内容は問題ないのだが、向こうの提示してきた原稿料があまりに安く、も少し何とかしてくれないと、と談判。上に相談して、と電話切れたのでもう来ないかな、と思っていたら1時間くらいして、微々たる額だが上がった。それでも安い(一般誌原稿の1/3くらい)が、まあ楽に書けるから、と引き受ける。原稿で食べている以上、原稿料も基本的タカ派でないと。『あの本』原稿の方、編プロKさんから絶賛メール返ってくる。特に会心の出来、という原稿ではないので、これは扱っているネタの勝利。

女性編集さんからは依頼内容詳細のメールが来たが、文字数がやたら多い。この原稿料でこの文字数はちょっと。と、いうか、これは何かのミスだろう。B5版雑誌で片ページ2000文字ってのは。

『創』やらねばならぬので早めに帰宅。その前に東急本店の紀の國屋で買い物。今日はK子と外食の予定だったが、彼女の風邪が長引いてまだ咳が抜けておらず、家で仕事しながらということになった。帰宅して、持ち出した事例などをわかりやすいものに差し替えなどして送る。

9時過ぎ、簡単な料理を作ってDVD見ながら。ウインザー・マッケイ集など。料理は夏らしく“ナスかやき”。ナスは皮を剥いて短冊に切り、キャベツは細切り。鍋に出汁を薄味で(これは好みで濃い味でも)張り、そこに鮭缶(jyamaさんから以前いただいた高級品を今日は使う)ひとつあけ、ナス、キャベツ共々煮て、熱々のところを食べる。本来は煮ながら、がかやき(貝焼)の醍醐味だが、自宅には残念ながらテーブルコンロがまだない。酒は黒ビール、奄美焼酎など。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa