裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

月曜日

無頼漢・デ・パルマ

映画の文法を無頼にも踏みにじるのですよ。

朝方の夢。ゴミだらけの海水浴場のようなリゾート地に来ているが、そこに編集部から催促の電話が携帯で入る。その原稿、引き受けた記憶があるようなないような曖昧なままで、今日じゅうに書きますとウソをつく。どうにもリアルで困る夢であった。
8時起床、入浴。朝食、パンプキンスープと夕張メロン、プチトマト数ヶ。新聞にマコ・イワマツ死去の報。『パール・ハーバー』で
「ナニ、シンチュワンノ攻撃ニ成功カ!」
などと空母『赤城』の艦上で(おいおい)叫んでいた奇ッ怪な山本五十六を演じていたが、マコ自身はあの映画の考証につき、監督に猛烈な抗議を申し入れていたそうである。『砲艦サンパブロ』でデビューしていきなりオスカー候補になった演技力と存在感の持ち主。『トラ! トラ! トラ!』から『キラー・エリート』、『ライジング・サン』など、およそ日本を舞台やテーマにした作品、日本人が出てくる作品には必ずと言っていいほど顔を出す、ハリウッドで最も有名な日系男優、というよりハリウッド人種のイメージするアジアというものは、ひっくるめてこのマコ・イワマツのイメージなのではないか、とさえ思える存在だった。

劇団☆新感線の『直撃!ドラゴンロック2・轟天大逆転〜九龍城のマムシ』では粟根まことが“マコ・乙松”という役名で登場したが、その名前のパロディひとつで“アジア(ただしどこにもないアジア)”が現出するのである。そう言えば『グリーン・ホーネット』では中国人の武術の達人に扮して、日本人の武術の達人カトーを演じた中国人ブルース・リーとカンフー対決をするという、ハリウッドのひねくれたアジア観を具現化したかの如き珍な場面を見せてくれた。

そんな彼がリメイク版『梟の城』ではなんと豊臣秀吉に扮して怪演。人外の世界に生きる忍者たちにとっても異形の存在である秀吉を演じて、その存在感を日本の映画界にも大きく示した。思えば1950年代からアメリカに渡った彼にとり、自分のアイデンティティを訴えるということは、その“異物感”を訴えるということだったのかもしれない。ある種の悲劇ではあるが、しかし、最近の彼の存在感は、その悲劇を逆手にとったしたたかささえ感じられた。もっともっと活躍して、欧米におけるアジアとは、とわれわれアジア人が考える鏡の役を果たして欲しかったと思う。黙祷。

一方でこのニュース。
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=64049&media_id=4
「北朝鮮の金正日労働党総書記が2004年に高英姫夫人が死去した後に秘書出身の
金オクさん(42)を新夫人に迎え、一緒に暮らしていると報じた。同消息筋は金オ
クさんについて“事実上のファーストレディー”としている」
なんでカタカナなのかなあ、と思ったが
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=64085&media_id=2
を見たら
「北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記が新たに、女性秘書の金玉(キムオク)さんを夫人に迎えたと報じた。金玉さんは既に金総書記と同居し、事実上のファーストレディーとして活動しているとも伝えた」
とあって納得。時事通信社がヘタレなのか、毎日新聞社が正直なのか。ちなみに読売では全部カタカナだったそうな。

名古屋のYさんからメール、トップページの『渋い声ナイト』の告知のところ、日付が間違えて8/6になっているとの指摘、なんであれだけ承知しているものを間違うのか、わが頭を疑う。すぐ訂正。

弁当(シャケ粕漬け)使う。ナス(あのつさんから恵贈)の味噌汁に、梅安を気取ってごま油を一滴。汗になったのでシャワー浴びて仕事場。車中、講談社モウラNさんから電話。引用した文章に一部間違いがあるのではないかということ。この連載、引用に対し編集部がこうまで神経質になるとはちょっと意外だった。仕事場で早速送られたファックス読んで対応。

原稿書き、大洋図書の携帯雑誌コラム。書いて編集のYさんに送信。オノと打ち合わせ、日曜の名古屋取材の件など。『幽』から電話、金曜のロフトのときに、京都での『幽』イベントにもご出演していただけるそうで……とNくん。そう言えば東さんに頼まれて安請け合いしていたと思い出す。名古屋へ京都へと忙しいことだが、関西出張というのは妙に心がウキ立つのである。

8時、東北沢『和の○寅』、花を公演に贈ってもらったのでそのお礼に今夜はここで食事。ちょうどjyamaさんと打ち合わせる件があったのでお誘いして。コーチングスタッフとしての彼女と唐沢ファンの彼女の両方がないまぜになって、最近、話すとちょっと混乱。最近の原稿にある某こだわりのことなどを指摘される。なるほど、無意識にこんなこと書いていたんだなあ。

大将、女性連れだとみるとすぐシャンパンを開けさせたがる。二つ並べて、どっちに
する? と聞かれる。
「いくらくらいするの?」
「こっちの方は一本三万……」
「違う方!」
と。そういうシャンパンは私が文学賞でもとったときまでオアズケである。結局、マムのシャンパンだったがこっちで十分おいしい。

夏牡蛎とウニ、ねっとりとしたイカ、最近高級魚となったイワシを水菜の上に乗せ、水菜はヒタシマメをミキサーにかけたドレッシングで食べる。このドレッシングが抜群で、イワシはショウガ醤油でと言われていたが、試みにイワシもこれでいただく。大変においしい。それから鮎の甘露煮にサバの棒鮨。jyamaさんは明日、中国人相手に講師をするというので酒はあっさり。次回会うまでの課題も提示される。やっぱり頭のいい人と飲んで話すというのは刺激になるなあ、と感心。もっともこんな頭のいい人なのに方向音痴で、帰りにタクシーで送ったら大回りになってしまった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa