裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

金曜日

言うまいとモハメド・アリの寒さかな

猪木との試合はサムかったねえ。朝さすがに眠いねむい。酒も残っている。それでも無理して7時半起き。今日は予定がギッチリなので仕事の時間作らんと。パイデザから、連休中タイに行くのでオミヤゲは何がいいかとのメール。タイのホラーマンガを頼んでおく。

入浴して朝食9時、オレンジ半顆、イチゴ5〜6粒。スープにトマトジュース。寝汗で失った水分の補給。母のもとに神田陽司さんからライブドアの株券が届いたとか。日記つけ、メールやりとり。電話数本。青森の講演、ギャランティが合わずNGとなる。残念。アルタイルS氏から、『プロント・プロント』の私の原稿、スポンサーに好評なのでページを倍に、と。ならギャランティも倍、とはいかないだろうな。

1時、参宮橋でノリミソラーメンすすって、仕事場。2時、楽工社H社長来。どどいつ文庫伊藤氏と顔合わせさせる。伊藤氏との共著の件、打ち合せいろいろ。H氏、伊藤氏の変人ぶりを私があまりに面白可笑しく伝えたため、果たして一緒に仕事が出来る人か、と、やや心配になった模様で、今日は伊藤氏が私に本を売りに来ると聞いて、一度首実検しておかないと、という気になったらしい。結果合格で、十分にビジネスが出来る人と踏んでくれたようで、こちらも責任上ホッとする。もっとも、伊藤氏の方は長年のビンボウに体が慣れて、本を出すとかという話がいまいちピンとこないような表情をしていた。

H氏には『と学会年鑑』用の図版ブツも手渡す。オノと上記楽工社のデータ出しのスケジュールの件、またメールの件など打ち合せ。“名は体を表す”というのは真理かも、としみじみ。

3時半、原稿書き出しそこからずっと5時半まで。幻冬舎の小説ノルマは毎週金曜日に20枚、だが今週はGW進行でドタバタして、結局13枚。それでも正味2時間での書き出しで、会話中心になりすぎたが、主要登場人物の性格はかなり出せた。

6時に時間割の予定だったがトテカワYさんから電話、時間割が閉まっているという。すでに連休突入か。じゃア、と仕事場へ招く。渡して読んだ原稿、喜んでもらえたようで力湧く。話しながら、この先の登場人物たちの運命、時代の変遷、などというあたりまで説明。もちろん、ラストまでの話の流れは全て決定しているわけだが細かなデティール、キャラクターの性格づけなどは編集者との対話の中でどんどん磨かれていく。これは芝居でいう所謂エチュードみたいなものであろう。

山田さん帰ったあと、酒凝りと執筆凝りで背中がパンパンなので、マッサージに駆け込む。1時間だとTBS入りに間に合わないので45分にしてもらう。凝りのカタマリ部分を指で圧されると電気の走るような痛み、そのあとにじわと滲み出てくるような快感。

終わってコンビニで肉まん買って、オノとタクシーでTBS、8時入り。第4スタジオ。すでに他のスタッフ全員そろっている。今日は2本収録。最初のテーマが『コイン』、次が『チケット』。コインは映画の話が主になり、日本語に“イェ〜イ”という掛け声を定着させた、あの映画のことを。前回が前半でオシすぎ後半が駆け足になった記憶から、後半、5分くらいで話をまとめようとしたら、海保さんから
「まだ時間あるので……」
と言われる。今回は最初のネタ出しがうまくいき、前半がサクサク進んだのだった。話題をバランスよく広げるのは難しい。まあ、その後もちゃんとつなげはしたが。

それから二本目『チケット』ではちょっとエロ話になって海保さんを笑わせる。真夜中の親父ばなし番組化、順調に進行中。いいことかどうかはわからんが、ディレクターIくんによるとこないだの土曜深夜に彼がタクシーに乗って、この番組にチャンネルを合わせてもらったら、聞いていた運転手さんに
「こんな聞きやすい深夜放送番組は久しぶりだ」
と感心されたそうである。まあ、私のコンセプトも、“アンチ・若手コメディアン番組”にあるから当然か。

流した曲、最初のは自切拝人(北山修)『息もつかずに』後は牧伸二『ホンモ・ホンモ』。オノ、最初は『ホンモ・ホンモ』を聞いて“どこが気に入ってるんです、この曲の?”とか言っていたが、番組終わった後では「頭の中にあの曲がリフレインして……」 と困っていた。してやったり。

番組ラストのコント、どんどんイニャハラさん的に暴走。音響のハルミさんが“わからない……”と言い続けていた由。それにしても海保さんの器用さには脱帽の他なし。自分でも言っていたが、インタビュー番組など、リハーサルを何度繰り返しても同じテンションで本番に臨めることに、ゲストの俳優さんなんかがかえって驚くそうだ。伊丹十三も言っていたがこれこそプロの条件、である。

さすが2本収録は時間かかり、終わったのが11時近く。I垣Pなどと再来週の収録の打ち合せして、さて飲みに行くかと思ったら、われわれ二人だけエレベーターに乗り込んだのに、I井Dもイニャハラさんもついてこない。今日は飲みましょうと言っていたのに、急用かね? とオノと話しつつ、TBSハス向かいの居酒屋ビルの中で、これまで入ったことのなかった『阿蔵』なる店に。そしたらI井くんから電話、遅くなったからもう帰ったのかと思った、と。後から二人追加。

水炊き鍋、スルメイカ一夜干しなど食べつつ、話いろいろ。最初は顔射の話とかフェチの話などばかりだったがやはり話題は『ポケット!』のことになってくる。海保さんのあのものおじのなさはやはり根本の性格がアメリカ人だからか、とか、冒頭の部分の処理だとか。ラストの海保さんのコントに相照応するものを冒頭に置こう、ということで意見一致、アイデアを昼間、楽工社と打ち合せしたときに見た本からひらめいて出したら大ウケでそれで行こう、と。まさに酒と馬鹿ばなしと打ち合せの渾然一体的成果。

この店、味はまあ合格点だが持ってくるのが遅い。焼酎ロックよりウーロンハイの方が早いなど、よくわからず。
「注文あってから醸すんじゃないか」
など、飲みつつ1時半までワイワイ。で、そろそろと思い出たら連休前の最後の金曜で、会社員たちが夜の赤坂に繰り出しており、タクシーが全部それにかっさらわれる。20分ほど、空車のよく通るようなところ求めてウロウロ、日枝神社の下側の道でなんとかゲット。オノと相乗りで。2時半帰宅。連続でK子も呆れたかもう寝ていた。……しかしまあ、一日で打ち合せ一本原稿書き一本、ラジオ収録二本片づけたんだから酒くらい飲んでもバチはあたるまい。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa