裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

土曜日

ポアロは月に行っていない!

そりゃそうでしょう、ヘイスティングス(熊倉一雄の声で)。

何かの会合の二次会に行くのだがその会場がやたら遠く、歩かされて足がクタクタに疲れるという夢を見る。本当にクタクタになった感じがしたが、それと最近の下半身の盗汗とは何か関係があるのだろうか。寝巻のズボンがぐっしょりとなるほど汗をかく。酒ヲ飲マネバイイトイウ話ダガ。

7時45分起床、入浴して汗を流すのは気持よし。9時、朝食。コーンスープ、イチゴとバナナ。麻黄附子細辛湯、一時やめていたがやはり飲まぬと調子でず。これも寝汗の原因の一つか。沖縄の神野オキナ氏からローストチキン届く。K子の誕生日と、私の『ポケット』開始祝いだとか。かたじけなし。

プロント・プロントのイラスト指定、K子に。日記つけ、スケジュールをいろいろいじくる。バーバラから青山ブックセンター本店でのトーク&サイン会の詳細くる。フライヤー写真、なかなか結構。これチラシにしてまくか。

1時半に家を出て、新宿。買い物ちょっとして、王ろじで豚どん。ちょっと並んで待つ。久しぶりにここの豚どん(要するにカツカレーがどんぶりに入っている)を食べるが、ちょっともてあます。私ノ舌ガ変化シタカ、味ノ変化ナルカ。ごはんがちょっと柔らかすぎたせいかもしれない。

2時半、於千駄ケ谷日本青年館、WAHAHA本舗公演『楳ちゃんの青い迷宮』。放送作家のU氏にばったり。『ポケット』聞いてくれているようで、恐縮。すぐ館内に。大ホールほぼ満席の盛況。清水さん兵藤さんはじめ、物販している人たちにあいさつ。佐藤祐一さん、ぎじんさんなどにも出会う。

で、開幕。開幕そうそう、親父っぽいお客二人を舞台上に上げてキスをさせる。それから始まって終わりまで2時間、とにかくえんえんと客をいじりっぱなし。ハゲの人を上げてカツラをとらせる、水をぶっかける、最前列の女の子を水係、鏡係にする、楽器を演奏させる、100人以上舞台にあげてだんだん去らせる、など客いじりの究極の形とも言えるショー。オカマ芸というのがそもそも客いじりだから、それを発展させていった末にこうなったのだろう。

私は実のところ、こういう客をいじりすぎる舞台はあまり好きじゃない(喜々としていじられる客を含めて)なのだが、ここまでされると降参、という感じである。それに、最初の、透明ビニールのロングスカートをはいてその中にスモークを立ちこめさせる(煙が薄まると当然中は……)とか、サイリューム(折ると発光する棒)をチクワの中に差し込んで(入場時に“指示あるまであけるな”という但し書きつきで袋に入れ配っていた)ペンライト代わりにみんなにふらせるとか、その手を拭いた紙ナプキン(これも袋に入っている)をハンカチ代わりにふらせるとか、よくまあ毎回考えつくなあ、というアホなアイデアに脱帽。感服してしまった。アイデアのない舞台というのは、いかに台本がよく、演技が達者でも退屈してしまうものだ。

演奏は杉浦哲郎(杉ちゃん)。鉄平くんがいるとどうしてもその補助、という役割になってしまうが、こうやって単独で聞くと改めてうまいな、と感心。ただ、一曲、着替え中に自分の持ちネタとしてやった、“銭形平次がモーツァルトの死の真相を探りにヨーロッパに行く”ネタは、この公演のお客さんには難しすぎたかも。

2時間、たっぷりという感じで見終わり、杉ちゃんに挨拶しようと楽屋に案内してもらったがおらず。受付で自分のCDを売っていたそうだ。HMVだったかタワレコだったかのクラシック売り場で『アニクラ』は売り上げ一位だという。これはブレイク間近か。

石森史郎先生ガ私ト話シタイト仰ルノデ少シ御一緒サセテイタダキ、歩キナガラ話。御子息ガ私ノふぁんデ、コナイダノごーるでん劇場ノ後デ挨拶デキタノデ感謝サレタトカ。「息子孝行がおかげで出来ました」ト言ワレ恐縮デアル。仮面らいだーノ脚本ヲ書イタノモ当時小学生ダッタ息子サンニ“脚本家ナラ書イテミセロ”ト脅サレテ書イタ由。潮健児ノコト、小野栄一ノコトナド。小野伯父、浅草デノ芸術祭参加ノ舞台構成料、100万ト約束シタモノヲ大分立ッテカラ持ッテキタトイウ。持ッテクルダケ感心ダト思ウ。モットモ、100万ト言ッテ持ッテキテ、後カラ数エタラ85万シカナカッタトノコト。
「唐沢さんのために不条理劇の脚本を書きたい」
ト仰ル。

別れてタクシーで事務所へ。不在通知いくつも。明日のNHK『アニメ夜話』収録の確認なども。東急本店地下で買い物して帰宅。『ヤッターマン』明日の用意に見ながら、スペインワイン飲みつつ、ローストチキン。DVDは途中で『犬神家の一族』に変える。自分なりに、いまキャスティングするとなるとどうなるか、を考えつつ。ワインはホッピーとチャンポンしながら、ついに一人で一本空けてしまった。ワインの酔いは内向性になってしまいよくなし。鬱々といろんなことを思う。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa