裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

金曜日

初日開幕、でも原稿も書いたの記

朝5時半起床、入浴。日記つけ、原稿書き。ちょっと時間的余裕が出来たのでベッドに横になったら8時まで寝てしまった。名もニュー原稿4枚半、急いで書き上げる。それからまた急いで渋谷へ。

車中でホットドッグ食って昼食代わり。ここで字数確認しながらSFマガジン原稿10枚。まさかあげられるとは思っていなかった(と、いうのはまずいか)。

電話、こちらから連絡しようと思っていた廣済堂のIくん。この人はどういう人かというと、私に『トンデモ一行知識の世界』を書かせた人で、つまりは今の私あるはこの人の企画のおかげなのである。そんな恩人の、会社移った次の企画がなかなか進んでいないというのが困ったものだが、
「社でも、“ホテルに缶詰めにしてはどうか”などという意見が出始めていまして」
とのこと。公演終わったらすぐ再始動ということに。

池袋へ急ぐ。1時間半遅れと電話で伝えたが、スピーカーの設置でちょうど到着時が稽古開始だったのはラッキー。とはいえ、まだ完成していない部分に時間とられ、あまりはかどらない。退場のときのセリフ決まる。わざとくさい役なのだが、私はわざとくさい男なので、逆に演じていて気が楽である。

なんやかやで、最後の挨拶の立ち位置まで含め最終稽古終わったのがなんと開場の20分前。プロデューサー業に経験ある身としては冷や汗が出て、逃げ出したくなる状況だろうが、役者として出る身としてはこのスリリングさがたまらない。たぶんここの団員みんながそのアドレナリンの中毒なのだろう。いいことか、というと客主体になったときはどうかと思うが。

やがて客入れ開始。しなっちがちと興奮気味に
「入ってますよ!」
と言ってくる。秘密ののぞき穴からのぞいてみると、なるほど、初日にしてはかなりのスピードで席が埋まりつつある。途中でツチダさんから、下手側の隅の椅子を解放(袖が覗けてしまう位置にあるので封印していた)します、というしらせ。これでみんなテンションが上がる。

やがて開幕。さすがにベテラン陣はギャグがみなハマっている状況。これは余裕のなせるわざだろう。私などは自分のセリフを落とさず言うのでイッパイ。とはいえ登場シーンや、実際の私をパロったシンちゃんのセリフ等では笑いがとれた。キザキャラはも少し錬らないとダメか。笑いどころを客があぐねている感あり。奈緒美さんに語りかける前にも少しフランス語を使おう。

久保田くんのヨシノブとおぐりのちぐさの兄弟コンビはほぼ全編出っぱなしで狂言回しをつとめる。ケンカのシーンなど、倒れないかと思うほど。小林さんの底力など、いいものを沢山見せてもらった。お母さん役の川瀬さん、今日になっておいしいセリフがどんと増えて、ラストを〆る。公演時間2時間の予定が1時間45分で終演。

送り出しで、山口A二郎さんやちんちん先生に挨拶。『名もニュー完全版』はあっと言う間に売り切れた。『雑学授業』はついに届かない。近くの居酒屋で打ち上げ。フリー編集のNさんやKさんも誘う。初日好成績ということで、楽しい小打ち上げとなる。口が回るまわる。川瀬さんに“明日は帰りまぎわ抱き着くくらいにします”と言っておく。おぐりがさすがにあれだけテンション上げた反動か、あまりものを食べていなかったのが印象的だった。海谷さん、しなっちなどと、今回の件、これからの件。

12時、丸の内線で、しまさんと“今後のうわの空”の件話しながら。何か将来の話ばかりだったが、今やっている芝居の出来が悪いと、
「この芝居をどうするか」
に話の方向性がなる。初日から将来の話、になるのはいいことなのである。

新宿からタクシーで渋谷の仕事場、図版資料を持って中野の自宅へ、と、またモノカキのモードへ。半身浴して3時に寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa