裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

月曜日

アドレナリン放出後シビアなお話、の記

朝7時起床。雨、まだ降り続いているがそれほどでなし。日記つけ(いかに〆切がハードだろうとまず、日記)9時、朝食。バナナ、フルーツトマト、青汁代わりにフルーツトマトの濃厚ジュース。凄い濃厚さ。

“投資/回収比率”の悪い某件につき、岡田斗司夫さんとメール交換しつつ相談。週プレ『名もニュー』原稿、まとめる。ネタ集めで時間かかった原稿だが、いざ書き出すと規定枚数中にその半分も盛り込めない。

11時半完成、メール。弁当用のシャケ茶漬け、自宅で食べてしまう。母と一緒にタクシーで渋谷。すぐFRIDAYにかかる。書き上げて、『ひよパジャ』告知文と共に送付。週プレ対談用資料をプリント。京都の山田さんから電話。こっちの企画の進み具合を話す。そこでもう3時、急いで時間割に。

白石、おぐり、ねがっちの三人相手にテーマ選びいろいろ。おぐりに昨日までのチケット売り上げ代金渡す。ついでに京都の経費やっと渡せた。何度も、持っていっては忘れてしまってのくり返しだった。対談終わってすぐ、仕事場に戻る。

週刊連載三誌の最後の一本、アサヒ芸能の『こんニュー』原稿。ニューオリンズのハリケーンをテーマに、やや不謹慎に。山田さんが「単なる時評なら同じことくり返し主張してればいいけど、カラサワさんのは必ずネタ入れるわけやから毎週はしんどいでしょう」
と言ってくれていたが、しんどくない原稿というのは書いていてつまらんと思う。ときどき投げ出したくなるくらいしんどいことはしんどいが。今回はネタふりのマクラ、時局とのからませ方、トリビア的ネタ、ラストでのギャグ、とだいたいまんべんなく入れられて満足。ものを書くという作業が大変なのは、ライブでステージに立つような、イヤでもテンションがあがる行為と違い、パソコンの前で自己コントロールでアドレナリンを出さねばならないところである。

自分の中に第三者的評価軸を持ち、作品の出来に善し悪しの判断をくだし、その出来、かつ作品(原稿)が構成され完成されていく過程に興奮し、テンションを上げていく。その行為でさらに原稿に勢いがついていくわけである。この、自己興奮コントロールが出来ないものにとっては原稿の執筆は単なる苦痛でしかなく、結局、長い期間、ものを書くという仕事についてやっていくことが出来なくなる。私ももの書きとしてはホント、種々雑多なことをやっているが、それが本業(文筆業)からの逃避であったことは一回もない。そこがひそかな誇りでもある。

映画を撮るのも楽しい、テレビに顔を出すのも楽しい、トークも役者もプロデューサーももちろん楽しい、しかし私にとって何より楽しいのはやはりものを書くことで、他は余儀、趣味なのである。そうでないもの書きはさっさと趣味を本業にした方がよろしい。

イマジカSくんから打ち合わせについてのメール、ねがっちから別雑誌での仕事のインタビューについてのメール、さらに『世界一受けたい授業』から次回収録についての打ち合わせメール。

打ち合わせ、対談、インタビューというのは、アドレナリンを次々に出していく執筆の合間にそのアクセントをつける行為として非常に有効。とはいえ、こう連続してくるとなあ。『セカジュ−』はこないだのPR特番が大変に評判よかったということで(あの地震があっても視聴率が下がらなかったのはすごい)、また収録するらしい。この特番のギャラって発生したっけ?

9時、帰宅。
ブレーンS氏、H氏と家で会食。北海道から贈られたアスパラガスのボイル、ローストビーフサラダ、焼きトマトのマリネ、白身魚とアサリのアクアバッツァ。アスパラとベーコンのパスタ。アクアバッツァ美味し。もっともこれは母が“アクアバッツァというのはたぶんこんな料理だろう”と想像して作った自家製アクアバッツァであり、きちんとしたイタメシ屋で食べたら全然違う料理である可能性もあり。

食べながら業界のシビアな話いろいろ。成功例はいくらもあるが、また失敗例もいくらもあるのが業界というもの。S氏、ニヤニヤしながら
「もう少しカラサワさんが売れてきたら、実は企画がひとつ、ある」
と。どういうことを考えているのか、敢えて訊かず。12時までいろいろと。S氏の持ってきたギネスのビター、H氏持参のエールフランスのファーストクラス専用ワイン『シラー』、我が家からは焼酎『石波』。さらに凍らせたズブロッカ。これだけ飲んで、お開きのあと、メールチェックしながらさらに水割り缶。

関わっている某件のシビアな数字がメールで来ていて、ちと愕然。これが自分主体の企画だったらと想像するとややビビる。これは常識で考えれば体制縮小、方針転換が急務としか結論づけようのないデータではないのか。プロジェクト母体解体を免れるにはよほどの思い切った裁断が必要だろう。好きなところだけにしばらく考え込んでしまう。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa