裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

水曜日

前半ダメ、後半スーパーマンの記

朝8時起床、外はまだ小雨。入浴して9時朝食、バナナとリンゴ、豆のスープ。体重やや増。原稿書きのあいまに間食するのが悪いが体力低下のケあり、仕方なし。

各所から催促電話。イヤ台風による体調悪化故昨日は致し方なし、本日に全て一日ズレ込んだということで、と言い訳するが本日もおぼつかなし。『社会派くんがゆく!』9月対談テープ起こしがあがってくる。これなら、と筆を加え、70枚から80枚分の原稿にかなり手を入れて完成稿を作って送る。

こういう気圧でよく出来た、とは思うが、逆にこういう気圧で仕事したんでかえってバテ切ってしまう。気分転換に髪でも、と12時半、代官山エド・エドにてヘアセット。「2ヶ月半ぶりですね」
と言われて驚く。そんなに立っていたか。のび過ぎていた髪をバッサリやってもらって心地よし。

仕事場にもどり、アサ芸、週プレなどのゲラ戻し。原稿にかかる気力さっぱりあがらず、βのビデオなどを資料に見直したりする。画質かなり落ちているが二十数年前に録画したものがまだ見られるのは考えてみればすごいか。あと、寝転んでみたり起き上がってみたり、七転八倒。

白山雅一先生から電話。暑中見舞いのお礼。と、いうより、
「ブラックのこと、何か聞いてる?」
という用件の方が重要か。快楽亭は白山先生のことを父親としてまで慕っていたが、最初に彼の方から白山先生を誘った飲み会の口実は私(小野栄一の甥)がいるから……だったそうだ。それは意外。

白山先生という人は芸人にしては異常なほどの真面目人間で
「いいヤツなんだよ、あいつは。だけど金がからむとネ」
というが、そもそも社会常識とか人間性というものが一般人とは異なる地平にいる男ゆえ、仕方ない。

談志も常々、“芸人は非常識であれ”と言い続けているわけで、それを最も体現しているのが快楽亭なのだ。ある意味、談志にとっては快楽亭の除名は自分の理念の忠実なる具現者を処罰せねばならぬ、苦渋の決断だったろう。で、本人は周囲からの情報ではけろりとして、まだ競馬とかやっている(大穴当てれば一発で全部借金なんか返せるン、と豪語しているらしい)ところが実にいい。ある意味、ブラックは談志を芸人として越えたわけである。

電話、一時間半。終わったあたりで雨がやみ、気圧が急速に平常に復する。体調、気力もそれに合わせて回復。現金といいたいくらいである。まずラジオライフ11枚のうち残っていた7枚分を書き上げ、ベギラマと編集部にミクシィでメール、続いてFRIDAY四コマネタ3本、ざざっとまとめてK子と編集のKくんにメール。騎虎の勢いでFRIDAYはコラムも一緒に書き上げてしまう。さてそれから、というので今度はフィギュア王原稿6枚、アリモノ資料で前半はまとめるが後半は書き下ろしでずだだだと。これも1時間で書き上げて編集部に送付。

体力はかなり使ったがまだまだ、と薔薇族原稿にかかって、これも半分まで書き上げる。何か、午前中とは人が変わったようで、ここまで如実に気圧が執筆に影響を与えるとは、と改めて驚く。冴えない凡人がスーパーマンに変身する、という話を最初に考えた男も、実は気圧系で、その心身の変化が“変身”という単語にピッタリということを身を以て知っていたのではあるまいか。

天候も回復、外を見ると台風一過の夕空が青と赤の見事なストライプのコントラストで、しかも月や星まできらめき、しばし息をするのも忘れて見とれる。そしたら携帯にメールが届いたという報せ。なにごとかと思ってみたら
「いま空がとってもきれいだね〜!」
というタイトルのひっかけスパムメールだった。うーむ、臨機応変、現状即応ぶりは褒めねばならんか……。10時、帰宅。

家でメシ。イカそうめん、茹でアスパラ、イクラトースト乗せ。余ったローストビーフ少し、余った冷や吸い物少し。自室で古いDVD見つつ水割り缶。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa