裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

月曜日

日本アチョーの会

 ブルース・リーファンが何人集まっているか、数えてもらいましょう。朝、7時5分起床、入浴、歯磨、服薬等々雑事。7時半朝食野菜サラダ、夕張メロン。食べている最中に、大粒の雨がボツボツ、そしてザーッと降りだし、母があわてて干していた布団を取り込む騒ぎ。テレ朝の天気コーナーのお姉さん(伊藤理絵)も、急遽スタッフが買ってきたとおぼしきビニール傘をさして放送、マイクがその傘にあたるバツバツという雨音を全部拾っていた。調整する間もなかったのであろう。出るときにはもう小止んでいたが、とにかく気圧乱れひどく、今日は仕事にならんぞこれは、と憂鬱 な気分で出勤。

 バスの中で、アパレルの兄ちゃん(こないだとは違う人)が私の隣の席に座り、一心に本を読んでいる。ちらりと見えた書名が『伸びる企業はここが違う』。ハハーンと思ったのは、こないだ別のアパレル兄ちゃんが『14歳からの哲学』を読んでいたが、要するに会社が研修レポートで読書感想文かなんか提出の課題を出したのであろう。自己を啓発するような本を読んでレポートをまとめよ、みたいな。それでこないだの兄ちゃんも今日の兄ちゃんも、ふだん目を通したことのないような、ソレっぽい 本を読んでいるわけだ。

 仕事場でパソの前に座るが、身体が固まってピクとも動かず。こりゃダメである。テレビでニュースなどを見る。韓国のヨン様(ペ・ヨンジュンではなく連続殺人事件の犯人ユ・ヨンチョル)が凄い。“監獄で暴力団や汚職事件を犯した人間をあと1、2人殺して刑場の露となる”という宣言もいいが、被害者の母親が彼につかみかかろうとするのを、護衛の刑事がキックして階段の下に蹴り落とすシーンが強烈。いいのか、あんなことして。『殺人の追憶』でもやたら蹴りが入っていたが、日本は拳骨の 文化、韓国は蹴りの文化なのか。

 弁当はスブタ。食べている最中にも雨がザーッと降ったりして、落ち込む。しばらく布団に横になり、寝る。夢も見ない。起きて日記のみつける。3時45分、時間割に。アスペクト『社会派くんがゆく!』対談。新潟の災害の話、高遠さんの相変わらずの講演の話、青山ブックセンター倒産の話、などなど。その後、少し出版ばなし。アスペクトが今度ネットテレビも始めたそうで、なんかやりませんかと言われるが、この対談は絶対に放送できないだろうしなあ。ところで、対談のあとでいろいろ情報を調べたところ、青山ブックセンターの倒産は経営母体の会社の営業不振であるとのこと。これまたバブル時の不動産の余波か。だとしても、あそこが売れていたとはと ても思えぬのだが。

 帰宅、またダラダラ。ついに一本の原稿も完成させられぬまま、時間となり、仕事場を出る。7時25分、渋谷駅でQPハニー氏とK子と待ち合わせ、武蔵小杉へ。こういうダラダラした気分のときは酒でもあおってパーッと、というわけで、武蔵小杉『おれんち』ツアー。参加者は私ら夫婦とQPさん、傍見頼路さん、パイデザ夫妻、 それにみなみさんとモモちゃん。

 雨は最初まだポツポツ降っていたが、すぐやむ。店に到着し、長野の木下ヒコクさんからお中元にいただいた桃をおすそわけ。モモちゃんから、お母さまの作った青唐辛子味噌をいただいたので、こっちにも桃を。モモに桃。ギネスの生で乾杯。さて、今日のおれんちの若大将のお薦めは、なんとトウモロコシ。朝取りのトウモロコシを生で食べる。その甘味とジューシィさはフルーツのよう。あと、地鶏のいぶり焼き、白レバー刺し(普通の白レバの他に、フォアグラ風レバーも添えられていた。これがまるでウニのような風味で絶品!)。オクラのわりだし(オクラを冷えた出汁に刻んで浮かべたもの)、お造り盛り合わせ。お造りは白ミル貝、もどりガツオの背側と腹側、白イカ、サヨリ、オニカサゴ、サンマ、ゴマサバ。白ミル貝のキモというのも、さっと湯引きしたものが添えられていたが、これまた濃厚でうまい。他にあなごの薄造り、いわしの梅肉あえ、海鮮かきあげなど、今日は皿数を多くして量を少なくするという戦法でみんな攻める。酒はヤングオートミールスタウトなどを試みた後、焼酎の“麻生富士子”という、田舎の役所の窓口で呼ばれるような名前のもの。ワイワイと話ながら飲みかつ喰らい、最後はソバも食べたい(ダッタン蕎麦を混ぜ込んで、これまでの蕎麦とは段が違ったと若主人が豪語する代物)、カツオの手こね寿司も食べたい、いやオムライスも、燻チャーハンもと、結局迷ったあげく全部頼んでしまい、みんな“苦しいよー、つらいよー”と言いながらも嬉しそうに腹に詰め込んでいた。『最後の晩餐』って映画みたいである。

 途中で、店から“今までもらいそこねていましたので”とサイン、私とK子に求められる。恐縮しながら書いていたら、店のカウンターにいたお客さんが“実はファンだったんで、毎度ここの店で会うたびに貰おうと思っていたんです”と、うちわを差し出してくれたので、これにも。お値段が、やたら食べた割に格安だったのは、このサインの御利益かもしれない。今日は食べる方中心でそれほど悪酔いもせず(それでも結局富士子ちゃんを一本は空けた)、この美食と美飲で得た活力を明日は絶対仕事に活かそう、と決意しつつ帰宅。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa