裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

水曜日

神様、モツ串だけ

 せめてこれを食べ終わるまで彼女に命を!(金城武・談)。朝、岡本一平の漫画による絵物語の夢を見る。中年紳士(竹久夢二がモデルか?)が少女に恋をして涙するストーリィ。ちょっといい話だった。3時半に起き出して、『GON!』から頼まれていた原稿(400時程度のもの)一本書き、送ってまた寝る。7時半、朝食。クル ミサラダ(ラディッシュとキャベツ)。プラム一個、セロリの冷ポタ。

 8時19分のバスで仕事場まで移動。いつも車中乗り合わせるアパレルメーカー勤務の兄ちゃんが隣の席で、一生懸命本を読んでいる。何気なくのぞいたら、池田晶子の『14歳からの哲学』だった。ほう、こういうものを読みますかこの兄ちゃん、と思って、その真剣な表情を横目で眺める。指で行をずっと追って、ときどき唇が動く のが微笑ましい。

 午前中、モノマガ単行本の、FAXで後から来た追加分のゲラチェックをやって、編集部に戻す。日記で湯浅監督のことを書く。ざっとしたことだけにしようと思っていたのだが、書き出したら筆が止まらなくなってしまった。これくらいしか、追悼と して出来ることがないのがなんとももどかしい。

 昼は8番ラーメン。今日は家からおろした大根、刻みキウリ、チャーシューなどを持参したので、それなりにざるラーメンとしての格好がつく。食べ終えて、監督追悼日記の続き。やっと完成させたのが2時半。2時からの、時間割でのNさんとの打ち 合わせをすっぽかすところだった。

 あわてて駆けつけ、遅参を詫びて打ち合わせ。凄まじく忙しそうですけれど、以前(ぶんか社での仕事の頃)より顔色が元気そうですね、と言われる。まがりなりにも健康管理をやっているせいか。西原理恵子にも同じことを言われたが、以前の私というのはそんなに生気がなかったか。それとも今が元気すぎるのか。打ち合わせは企画の形が何とかまとまるところまで行く。先行きにいろいろニンジンをブラ下げられて いる仕事でもあり、頑張ろう。

 仕事場に帰る。やはり暑い。いくらエアコンを効かせても、25度より室温が下がらぬ。そんな中で頭をユダらせながら、J&J原稿、書いて編プロに送る。真面目な社内報の原稿だが、ちょっとギャグを入れてしまった。どうかなと、反応を見る。それからFRIDAY、四コマネタのうち一本にダメが入って書き直し。あと、検索で昨日の伊勢佐木町の胎児バラバラ生ゴミ事件の資料を集める。ひどい事件であるが、しかし、これ、堕胎時を研究用や臓器移植用に高く闇で売買する時代に、そういうことをせず始末していただけまだ、良心的なのではないかという気もする。

 朝日ピンホールコラムも今日〆切なので、書き出そうとするがどうしてもテンション上がらず、9時半、新宿へ。丸の内線改札で母と待ち合わせて大江戸線に乗り、東新宿。今日は幸栄で焼肉。K子が語学を終えてくるまで、二人でキムチや豚足などをつまみつつ雑談。女の子が“ゴチューモンハドーイタシマスカ?”と訊いてきたのに母が飛び上がって驚いていた。日本人だとばかり思っていたのであろう。

 久しぶりにスライステール、豚骨タタキ、極ホルモン、ゲタカルビなど、ここの定番を味わう。酒はホッピー。おとつい、S山さんが市販のホッピーを持参してきてくれて飲んだが、それに比べると業務用(?)ホッピーはより淡泊という感じ。母にもう少し普通の肉を食べさせなさいよというK子の勧めに従い、ネギタン塩を頼む。これがなかなか結構であった。やはり焼肉は暑い最中がうまい。最後に冷麺と石焼きビビンバ。ここではいつも冷麺で、石焼きビビンバは初めてだが、やはり思った通りにうまい。全部食べようとして女性二人に叱られる。ホッピー三杯、かなり酔ったが、ここのホッピーは真露ベースなので、あまり変な酔い方はしない。昔(かなり昔)、阿佐ヶ谷の赤提灯でいつも飲んでいたホッピーは梅割用の怪しげな臭い焼酎がベースで、三杯も飲むと、まっすぐに歩けないくらいに足がもつれたものである。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa