裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

火曜日

お江戸日本橋七つだち、呉智英、呉智英

 封建主義者江戸を旅す。朝食ソバ粉焼き。読売新聞の配達を明日から新中野の方にしてくれと配達店に電話。そうしたら向こうの係が、メンド臭そうに、“出来れば今月半ばからにしてほしい”というようなことを言う。グジグジと言ってラチがあかないので、こういうときは私よりK子にまかそう、と電話を渡す。案の定、3分で話がついた。メールチェック、昨日ほぼ一日家を空けていた最中に議論されていた東京大 会関係のMLに書き込む。

 42代横綱・鏡里死去、80歳。突き出た太鼓腹から“土俵の満月”“錦絵の相撲取り”と称えられた、とネットでの記事にあったが、キネマ旬報で以前、誰だったかが(古田タクだったか?)が、“爬虫類の鏡里”というアダ名があった、と紹介していた。『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』でジャバ・ザ・ハットを見ていたら、その名前を思い出したんだそうである。

 午前中ずっと、『社会派くんがゆく!』最新対談のゲラチェックに費やす。新刊の『死闘編』はすでに刷った分全て注文で出切って、版元のアスペクトに在庫切れ状態のようである。お買い求めはお早めに。途中で母から電話、こちらに向かっているとのこと、外出し、ブックファーストで『アッパーズ』今日発売号のバジリスク立ち読みし、ボーイズラブものの最新刊チェック。『バジリスク』、前号の天膳復活シーンが『遊星からの物体X』を思わせたが、今回、その復活した天膳を見たお福(春日の局)の護衛たちが“何の冗談だこれは”とつぶやく。これが『遊星からの〜』の、隊員のセリフ“これは何の冗談だ(You’ve gotta be fuckin’kidding)”を受けてのものだとすると、かなりマニアックなパロディ。

 それから、東急本店へ行ってカキフライ買って帰り、家でソースカキフライ丼作って食う。ブックファーストの新刊棚で、評論家の某氏の本を見かけたが、その出版社が、いまあちこちで、“あそこと仕事すると危ない”と評判のところだったので気になった。そういう情報が、もう同業者とかから伝わらなくなっているのかな、という感じ。業界人としてのアンテナが錆びついている、ということなのだろう。いや、昔 から出版社とのつきあいは下手な人だったが。

 快楽亭から電話、K子からちゃんこ鍋屋に連れていけと言われているが、寒いうちがよろしかろう、とのこと。白山先生から丁重な御礼の電話をいただいた、と言うと“それはご愁傷様なことで”。あと、談之助さんに東京大会予定変更の旨、メール。

 4時過ぎ、“いま、浜松町”と母から電話。西新宿のホテルで落ち合う。K子が先に行って待っている新中野まで、荷物あるのでタクシーで。まだ閑散としている部屋の中で、親子三人、いろいろ話す。K子は途中で語学(フィン語)がある、と出ていく。部屋の機能(特に風呂と床暖)を説明し、外をちょっと二人で回る。新中野という駅は一駅前の中野坂上のハズレ、という感じの土地で、あまりいい店などがないのだが、少なくとも通りに出てすぐのところに大型のスーパーがあるのだけは便利である。そのスーパーの隣の喫茶店に入り、ちょっと今後のことなど雑談。これからは毎朝、渋谷に出勤の身の上となる。朝の時間をきちんと打ち合わせておかねばならぬ。

 スーパー『さんとく』で明日の朝食のリンゴを買い、パック用ビニールを袋に詰めて、タクシーで東北沢へ。『和の○寅』で、上京祝いの会。母は酒が強いと自分で言い、“日本酒なんか水みたいなものよ”と凄い自慢をする。鯛の皮の和え物からはじまって、新たけのこと牡蠣自家製燻油、お造り代わりの寿司(コハダ絶品)、それからサービスにイカのいしる漬け焼き、あんきもと続く。牡蠣もあんきもももう今年はこれで最後だそうだが、いつも以上にしみじみとウマイ。名残の一片というのは何でもうまいものであるが。いつもの味の他に、これでもう来年まで味わえない、という 愛惜の情が調味料として加わるからだろう。

 焼き物は鯛のカブト焼きにしてもらう。母とK子はもうこれで打ち止め、大満足の表情だったが、私はお茶漬けを作ってもらう。非常にいい気分で帰宅。いい気分すぎて、パックのビニールを店に忘れた。いい気分だったが、母が何度も“手伝いなんかいらない”と繰り返すので、少しクチゲンカぽいやりとりになる。家で(これも今の日記だと仕事場というのと同義だが、引っ越してからは別々の意味になる)メールの みチェック。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa