裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

月曜日

大リストラがやってきた

 楽団員半数解雇! 朝、8時起床。朝食、ソバ粉焼き、フジリンゴ。この数日、何か原稿書き仕事がヒマだなと思っていたらトンデモない、こっちがボケて締切などを忘れていただけのことであった。午前中からずっと『Monoマガジン』原稿書き。日記も、遅れがちなので平行して書き進める。われながら凄い芸当である。

 同じワールドフォトプレス社の、『フィギュア王』編集部からはゲラチェック原稿のFAXが届く。が、ボヤけていて、チェックもほとんど不能の状態。前から、ここの編集部のFAXと、ウチのそれは相性がよくないようである。図版キャプションのみは明瞭だったので、これだけチェックし、あとは誤字脱字だけ、そちらでチェック してくださいと書いて戻す。

 2時かっきりにモノマガ、5枚半完成。メールする。で、急いで外出。2時からは時間割で講談社『フライデー』編集のTくん。次号の雑学特集記事に、“一行知識掲示板”からネタをもらいたいということ。前回の同趣向の記事は、白黒記事の中でダントツ人気だったそうだ。いっそ連載、くれないかと思う。いろいろと雑談も。少し驚くような情報もアリ。うーん、出版社の立場というものが弱くなっているのだな、と天井をあおぐ。まだ始まらない(どうなっているのか?)ネット企画、話だけはず んずん進んで、単行本の話なども講談社に来ているそうである。

 コメントインタビュー終わって3時半帰宅、実家カレーで昼食急いですませ、それからSFマガジン原稿にかかる。10枚チョイ、ガリガリと書いて6時半にメール。イラストの井の頭さんに送る図版の荷造りする。某伊藤くん日記、と学会MLに報告されたと知ってあわててフォローの書き込みをしているが、論理がかなり混乱しているようである(と学会の原則そのものをオウム真理教に例えた後に、“中にはまともな人もいる”とか言ってしまっては比喩として成り立たないだろう)。混乱するような内容ならハナから書かねばいいのである。
「論理操作の場には、一応情念や感情の問題を持ち込まない、といった論理以前の事が出来ていない。一応ちゃんとした大学を出て、知的分野にたずさわっている人間がこれでは、いったいどうなっているんだ、と思いたくなる」
 ……いや、彼のことではない。一昨日引用した小松左京『地球社会学の構想』の、その先の部分である。

 7時半、家を出てコンビニで図版を井の頭さんに送る。それからK子と待ち合わせて、東横線で武蔵小杉。途上、S山さん、I矢くんと落ち合う。最近、親戚以上に顔を会わせている。これにT橋くん、ももさん、S井さんを加え、みなみさんの東京復帰歓迎会。S井さんは知り合いのお通夜から駆けつけて、少し遅れる。
「何も黒いネクタイして飲み会に来ないでも」
 と言うと、
「いや、こういう会に欠席すると、すぐ“負け組”に分類されてしまうから……」
 とのこと。ヒューガルデンで乾杯、それからハタハタの丸揚げ、お造りの盛り合わせ。ハタハタという魚、鍋はともかく、焼いたものはこれまで、あまり美味いとも思わなかったのだが、この丸揚げは素晴らしい。一人一本だったが、放っておくと五、六本はいってしまいそうである。お造りはアカザエビとウチワエビという二大エビを中心に、マグロ、ヒゲダラ、サバ、ニシン、メジナなど。いずれも、8人から一斉に箸が延び、あっという間に無くなってしまう。さらには鴨肉のダッチオーブン焼き、というのが出る。これがまた、鴨の旨みを一滴たりとも外に逃がさずに肉内に閉じこ めて焼いた、というような代物であり、一瞬にして皿から消えてなくなる。

 それから蛸の掻き揚げ、K子が食べたがったオムライス、すわい蟹鍋などがどんどん出る。ももさんのお母さんが作ったという、青唐辛子が山のように入った味噌もいただく。少し味わってみたが、これは美味い。美味くて辛い。辛いが美味い。これだけ美味いものを喰いながら、神戸のステーキはどうだったか、とか、別の美味いものの話がどんどん出る。T橋くんは、以前海外旅行の際、税関で旅の目的を訊かれて、普通なら“サイトシーイング”と答えるところを“イーティング!”と答えたそうである。みんな、これには大受けして、“サイトイーティングML”というのを作ろう とか、ハナシが盛り上がる。

 最後は手打ち蕎麦。以前出してもらったものよりはるかに蕎麦っぽい、ボキボキしたような食感のものが出る。蕎麦だなあ、という感じ。焼酎もみんなでクイクイやって、二本があっという間に空になった。土曜日は鶏中心でお願いしますとお母さんに言っておく。そう言えば今日出た、鶏の中華風唐揚げ(四つ割)もぱりぱりしていてうまかった。とはいえ、鴨には一籌を輸するのは致し方ない。帰りの東横線の中で、ガクッとオチてしまう。焼酎と雑談がとにかく、回りすぎた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa