裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

31日

木曜日

腑分け! ポンキッキ

 ガチャピンの解剖だ〜。3時ころから朝まで、目が覚めたりまた寝入ったり。このところ、気温のせいかそんな夜が続く。5時ころからなんとか熟睡できるのだが、このときの目覚めが毎度嫌な夢と共になのがどうも。今朝は珍しく淫夢みたいなものをみたが、デブで皮膚がざらついていてムダ毛処理もしていない生意気女と仕方なく寝ることになるという夢で、ああ、イヤだなあ、弱ったなあと思っているときに、間違えて寝室に入ってきた訪問客がいて、私はこれ幸いと逃げ出して事なきを得た。その他、敗戦の日に暗鬱たる状態で営舎を去る日本軍の行列の中にいるとか、親父のドッペルゲンガーに出会うとかいう夢。後の二つの夢はどちらも舞台が、以前住んでいた 阿佐ヶ谷駅頭をベースに、六本木周辺の雰囲気を加えた場所。

 結局寝不足のまま8時半起床。朝食、昨日と同じレンティル豆とパン、桃。元東京医科大教授・竹田千里氏死去。喉頭癌で亡くなった池田勇人首相の主治医。確か『ガン回廊の朝〜わが首相のベッド』という読売テレビ製作のドラマで、丹波哲郎が彼の役を演じてなかったか(がんセンター局長の久留勝役か?)。このとき池田勇人役は芦田伸介、大平正芳を岡本喜八映画でおなじみの小川安三が演じ、“アー、首相の、容態は、ウー、どうです”とそっくりさん演技でやっていた。変なことを覚えている ものである。

 パソコンの調子が悪いのか、サイトのトップページが開かなくなった。履歴で検索して入るとちゃんと入れる。ニューヨークの母からも“見られない”と電話。K子に電話したら、いま平塚くんに調べてもらっている、とのこと。サーバーのトラブルで あったらしく、昼には快復。

 1時、ちんちん先生こと菊地祐司氏、どどいつ文庫伊藤氏と共に来宅。河出本のお礼と、その他いろいろ雑談。伊藤氏が持ってきてくれた本の中に、『テレパロディ:プレディクティング・プレヴェンティング・ザ・TV・ディスコース・オブ・トゥモロー』というのがあった。これはテレビのダメ番組に対する識者の批評が、いかに本質をついていないダメなものか、を論じたダメな意見を集めた評論集、というそれだけでもややこしい本なのだが、唖然とするのは、そのテレビ番組というのが架空で実在しないもので、当然その番組に対する識者の評というのも実在しないもので、その実在しないものに対する実在しない批評を評論して(評論していると仮定して)、しかもその評論がどうにも月並みなものであることを笑おうという、三回転半ヒネった挙げ句の本なのである。皮肉を効かせた本であることはわかるが、さていったい何のためにこんな本を出版し、また買って読む人間がいるのか、アメリカという国はとこ とんあなどれないなあと、感心しながらも呆れる。

 お二人と歓談中にも、ササキバラ氏から電話数回。アスペクト日記本、いよいよ校了間近で、行数調整、また不明部分の電話でのつけあわせ。外出、郵便局でネット古書店に振込一件。それから西武デパート地下で食料品買い込み、ついでに笹寿司弁当を買って、家で食べる。蒸し暑いせいか食欲あまりなし。河出本の打ち上げ場所、結局人数が増えたので定番だが渋谷の『九州』にする。

 3時、東武ホテルにてマガジン・ファイブI氏と落ち合い、喫茶店で打ち合わせ。児島都さんの『肉子さん2』の読者欄に、応援のハガキをいろんな人が出すという趣向。ハガキを渡し、帯に名前を使うことなど応諾。Iくんは私のファンでもあるそうで、懐かしいぶんか社版の『大猟奇』にサイン求められる。Iくんの名前も書くが、彼の名前は“ひいと”と言う。比べる糸、である。本名らしい。本人も鼻ピアスの、いかにもHeatってのが似合いそうな若い衆であった。これからこういう世代の、こういう系列の名前の編集者と仕事する機会が増えてくるのだろうな。

 帰宅して、さらにササキバラさんと電話で最終のつけ合わせ。“もう、これ以上はチェックも無理でしょうし、ダジャレの説明なんかしていてもキリがありませんからわからん人は置いてきぼり、ということでスルーするしかないッすねー”と、ササキバラ氏が、例えば自分に理解不能なシャレ、と言って出した例のところが、実はミスであったことがわかったりして、危ないところ。それでもケアレスは山のように出て くるのであろう。

『食べる人類誌』読み継ぐ。著者はいかにも西欧人らしく、食べ物の効用は(ビタミンなどをのぞけば)人体を構成する材料となり、エネルギーになる、というその二点のみにおいてしか認めず、キュウリは体を冷やすとか、セロリは高血圧に効くとかという、東洋ではおなじみの医食同源という考え方を頭から“いかがわしい考え”である、と認めない。類感呪術の一種くらいにしか思っていないようである。その根拠となるデータも一応は示してあるが、ここらへん、われわれ日本の読者にはやや、読んでいて違和感が感じられる部分である。訳者(小田切勝子)がこのあたりをどう考えているのか知りたいと思ったが、本書には訳者あとがきというものがない。

 7時、新宿へ出て、Web現代原稿用の写真を撮影。新宿東口の角筈地下道あたりの夕景を撮影するつもりだったが、行きのタクシーが、渋滞で遅れ、現場に到着した時にはもう完全に夜になってしまっていた。明日あたり、もう一回撮影にこなければなるまい。少し思い出横町を歩く。せまい通路に人があふれ、焼き鳥の煙がたなびいているだけで何か心が浮き立つ気分になるのは、どういう原理によるものか。

 渋谷にとって返し、パパズアンドママサンでK子と待ち合わせて夕食。隣りにコテコテの関西弁(神戸言葉らしい)男女が座った。女性はモデルかなにからしい。会話がポチポチと耳に入ってくるが、彼女がずっと、デジカメのことを“ラジカメ”と間違えて言い続けていた。年齢から言って、ナショナルのラジカメを彼女が知っているとも思えず、単なる間違いであろう。グーグル検索してみると、案外、本気でラジカメだと思っているサイトもいくつかあるようだ。テレビで、とんねるずが『ノリビアの泉』というパロディをやっていた。タモリが以前やっていたエロビアの泉もそうだが、こう最近、パロディされる頻度の高い番組も珍しい。テレパロディのような番組 批評本を書いてみたくなる。

 帰宅したら本家『トリビアの泉』のMプロデューサーから留守録、人を通じて決定事項をFAXしてくれと伝えていたのだが、やはり直に話したいとのこと。さっそく 電話、二回目につながって、ちょっといろいろとやりとり。
「例の件ですが♂◎⇔☆?;ゞ鵝髻顴紜澆箸いΔ海箸任劼箸帖
「うーん、こちらとしては∬∀ΦΘЖИ☆♀だったんですが」
「しかし、うちでは他の放送作家さんが⇔;$‰Å∂∇なんで先生にもひとつ」
「とはいえЙЦΠΥ♂√∋∞Чですからねえ、そこをご賢察あっていただきたい」
「むうう。……わかりました。それで了承しましょう」
 ということで、全部こちらの希望通りとはいかないが、まずまとまる。オトナの事情の会話で、あまり後口よくなし。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa