裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

金曜日

いでゆの陰謀

 お湯につかって世界征服計画を練りました。朝、8時起床。朝食、発芽玄米粥と梅干。『やじうまプラス』、ビートたけしが『座頭市』の製作インタビューで長崎12歳殺人犯につき、“あの少年が悪い”と発言した、という新聞記事に対し、江川紹子が“いや、12歳という年齢の子が犯罪をおかしたというケースでは、絶対に社会の責任というものを考えないといけない”と反論、“たけしさんはオウム事件のときも麻原彰晃をとにかく持ち上げていた人”と喧嘩売るような発言。文化人同士のこういう遺恨のこもった発言は非常にオモシロイ。とはいえ、社会の責任という漠然たることを考えるという行為が、これまで果たして何か役にたったことがあったか、とは言 いたい。

 そもそも社会の責任とかよく大人たちは口にするが、彼らのいわゆる“社会”という概念の間違いは、それが何か発展的な活動を基本に、よりよい理想を目指す集団、というイメージでとらえていることだ。トンデモない間違いであり、社会的アイデンティティというものは、むしろその集団の持つ、消極的、閉鎖的な部分によって成り立っているものなのだ。これは……と書きかけて、おっと、これは二見書房の本(仮題・『日本的ヒーローの世界』)の原稿の中にソックリ使える考察だわい、と思い直し、数十行書いたものを削除。日記でそこまでサービスしてしまっては勿体ない。マンガやゲームの規制とかの意見についても、単なるオトナは馬鹿論とは別の視点からの意見がここからは引き出せるのだが、こっちもその本の中で語りたい。

 これが原因ではないが、日記のアップが大幅に遅れ、12時過ぎになってしまう。何が原因かというと、タイトルの駄洒落が思いつかなかったため。いつもは日記を書き出すためにパソコンの前に座り、さて、と、そのとき頭に漠然と浮かんだコトバをなにかひねくって、という感じで5分くらいで思いついて、形を整えて掲示するのだが、今朝はどうしたことか、さっぱりそれが出てこない。いたずらにあせると、なお出てこない。今日はひさしぶりの梅雨の合間の晴天だが、脳が雨降り仕様になってしまっているので晴れてるとダメなのか、とも思ったりする。とにかくキッカケになるコトバを、と、現代新語辞典を繰ったり、日本映画題名集を読んでみたり、といろいろするうちに時間が立ってしまった。で、いちど思いつくと、すぐ、他に二つや三つ すらすらと出てくるのがまた、腹立たしい。

 午前中はそんなことで時間をつぶしてしまう。サンマークの担当T氏にお手数かけまして、とメール。向こうでは、“フジテレビのものですが……”と電話があったので、すわテレビ化の話か、と色めき立ったらしい。ハテ迷惑な。昼は外に出て、こないだ光量不足で不出来だった区役所地下食堂の写真、再度撮影。さてメシはどうするか、やや迷った末にサムラートでカレーとナン。チキンカレーで美味。帰宅して、日 記本の掲載分チョイス、2000年一月分をチェックしてメール。

 3時、再び外出。古書の代金をかんたんむ他数店に振り替えで送る。じっくりと読む時間が欲しい。そこから時間割へ。『壁際の名言』著者インタビューで、『週刊プレイボーイ』の取材。漫談風にいろいろしゃべる。海拓舎Hさんがしきりにライターさんに、“『トリビアの泉』のことを書いてください、書いてください”と勧める。苦笑。それから写真撮影、外で、という予定だったが、出てみると大雨、急遽時間割に許可をとって室内で、ということになる。雨宿り的に入ってきた数人の客、撮影を見て、ハテこの男はいったい何だ、という風に私の顔をじろじろ見ていた。

 終わって取材クルーは帰社。私とHさんは残って以降の打ち合わせ。まだ『トリビア』のこと言うので、いや、テレビの人と仕事するとストレスたまりますよ、とグチる。『トンデモ一行知識の世界』は何してるんです、あれに“ネタ元の宝庫!”とかオビつけて、講談社のあの番組本の隣に並べてもらうだけでもかなり動くでしょう、と言うので、そういうことサクサク動ける行動力あったら、本ってのはもっと売れてますよ、と笑う。ところでH氏は今回のこの本で、書店回り中に、自社で出した本が目の前で売れるという光景を初めて見たそうだ。“もう涙が出てきて、代金を立て替えてあげようかと思いました”と。

 外を見たら雨はあがっていたので帰宅。帰ったらトリビアのスタッフからメールが来ていた。とにかくスローモー。ゴールデンになってガタイがでかくなった分だと思うが、神経がイラつく。そのくせ、こっちには早く、早くとせき立てる。まあ、誰しもそうと言えばそうであるが。留守録に配給会社から、本日最終試写の映画の誘いがあったのだが、行きたいのは山々なれどこの時期は仕事山積でとても動けず。『フィギュア王』原稿書き。以前同人誌で使ったネタの、今回は再使用なのだが、それでも雑誌のカラーに合わせた視点で書かねばならず、いささかあぐねたりもする。何とか 11枚、6時半までに完成させてメール。図版送付について問い合わせなど。

 しばらく横になったら、穴に落ち込むように寝入ってしまった。30分ほどで目は覚めたが。テレビのニュース、鴻池防災担当大臣の“犯人の親は打ち首だ”発言に笑う。その後の釈明で“私は東映映画のファンだから”と言ったらしいが、こっちの方が東映時代劇ファンには問題発言だろう。なにかね、遠山の金さんや水戸黄門が、犯人の親をとっつかまえて、市中引き回しの刑に処するかね。東映は自社作品のイメージを汚されたことに対し、厳重な抗議をしてしかるべきだと思うが如何。

 8時半、『船山』でK子と夕食。お造り、イサキ塩焼き、茄子の揚げ出し、イカの掻き揚げ、それからお茶漬け。ここの店でお茶漬けというのは、せっかく超絶に美味なアヤメ米の味わいをむしろ殺してしまうような気がする。生二杯、日本酒二合。これでかなり酔っぱらう。弱くなったのか、やはり気圧のせいなのか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa