裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

日曜日

ただいま許永中!

 岡崎つぐおの……って覚えている人がどれだけいるか? ゆうべは救心の蟾素(ガマの油)成分のせいか、幾分ドラッギーになっていて、時間感覚が大幅に変調を来した。ちょっと寝て目を覚まし、ああ、もう朝かな? と思うと、まだ一時間も経っていなかったり。夢もいろいろ変なのを見た。やたら印象に残って、目が覚めて一瞬、本当の記憶か、と混乱したのが、立川談志が鉄道事故で惨死した夢。たまたまその事故現場にいて、死に顔まで確認し、こりゃすぐ談之助さんに知らせなくては、と携帯の番号を必死に思い出そうとする、という夢だった。

 結局、7時半に起床。寝しなに悩まされた鼻づまりも解消され、まだノドが痛いのと、頭が多少熱っぽいことのみ。肩のだるさも、かえって症状が外に出てから軽減したような感じ。『ハリケンジャー』、朝食作りながら見る。主人公たちが学生服姿になったり、サンタクロースになったりするお遊びがあるが、いかんせんアクションに時間をとられてシーンが短すぎる。カブトライジャー役の白川裕次郎(あのスリムさで、力士部屋出身というのが凄い)も、水泳パンツでの撮影のとき、きちんとムダ毛処理とかしていったのに、放映されたのシーンがえっと言うほど短くて……と公式サイトのインタビューで言っていた。見せ場を多くとりすぎて、ひとつひとつの印象が薄まってしまうのは(見せ場のアイデアはいいだけに)残念である。

 朝食、胡麻スープ、温泉卵。果物はブドウ。寒い寒い。しかし、昨日の雨、絶対に雪に変わると思っていたが、そうはならなかった。母から電話。メールがさっぱり届いていない、というので、確認に送ってみる。読めた読めたと電話あり。違うところ をのぞいていたらしい。

 古書店さんとメールやりとり。先週神保町で買った1982年発行の雑誌に広告が載っていた本(写真集)がどうしても欲しくなり、検索してみたら、鹿児島の古書店に一冊だけあったのが見つかったのだった。在庫確認に時間がかかってイラついていたのだが、無事、あることがわかって、さっそく送ってもらうことにする。しかし、20年前の雑誌に載った広告の品が、まるでリアルタイムのように注文できて(値段だけは5倍くらいになっていたが)こうもすみやかに手に入るというのは、考えてみればちと怖いことである。昨日のビデオもそうだったが、こう簡単に物欲が満たされ ると、人間性がかなり悪くなるような気がするのである。

 昼は昨日炊いたご飯でお茶漬け、紅鮭とイクラの麹漬けで。これ、北海道では石狩漬けと言っていたが、正式名称なのだろうか。残りご飯を大ぶりの茶碗二杯で平らげて、やや腹がきつくなった。コタツにもぐりこんで読書しようとするが、暖房をつけると眠くなり、切ると寒くて仕方ない。

 昨日依頼の電話があったコミックボックスのベストアニメ150、一人20本のマイベストアニメを理由と共に選出するのだが、これが悩ましい作業である。単に個人的に好きな、というなら『茶目子の一日』やこないだ観た『動物となり組』を挙げてもいいが、それはベストとは違うだろう。フライシャーは『ベティの白雪姫』と『笑へ! 笑へ!』を入れたい。うーんと考えて『バッタ君街へ行く』はやはり落ちる。ディズニーは現在の私の選定基準で行くと『漫画の国のアリス』しか入らない。テックス・アヴェリーは『呪いの黒猫』と、あとは……『へんてこなオペラ』と『呼べど叫べど』の二本を並べて、結局『呼べど叫べど』を取りたい。アレクセイエフはこないだの某上映会で『禿山の一夜』を再見していなければ、『鼻』ですんなり決まっていたのだが、観てしまうとやはり『禿山』、スゴいしなあ。マクラレンは『隣人』よりも実は『開会の辞』の方が好き。LDの『ノーマン・マクラレンの世界』にこれが収録されていなかったことを買ってから知ったときには怒り狂った。それにしても古いのばかりだ。結局、私にとっての生涯ベスト・ワン作品というのは何なのか? トラウマになった一本というと、実は新宿アートヴィレッジで観たスタレーヴィッチの『マスコット』(深夜の饗宴、とかいう邦題だったと思うが)だったりする。いやも う、実に実に古い。

 ノドがイガイガ。サクランボアメなどを舐めてまぎらす。頭がボーッとしてきたので、布団にもぐりこんで、古書市で買った北上梅若『猶太禍』(内外書房、大正13年)などを読む。
「又近頃米国辺から“ツーステップ”とか“ワンステップ”とか云つて犬の交尾するが如き様子の“ダンス”が流行し出し、京浜の紳士淑女が夢中になつて稽古して居ますが、実に噴飯に堪えませぬ。而も是等が所謂文化の名称の下に流行するのでありますから呆れざるを得ないのです。又近頃女子の頭髪を見ますと、同じく西洋流に故意に髪をちゞらかし頭髪を後頭に丸め附け、恰も“おつとせい”や河童の如き夫人を見ます、此の調子で押進みますならば、軈ては西洋に於けるが如く日本に於ても断髪頭の婦人を見る時が来るだらうと思はれます」

 ささきはてるさんから電話、またカスミ書房さんからメールなどなど。7時、家を出て六本木へ。明治屋とABCで少し買い物。タクシーでそこから新宿。8時半、三笠会館にてK子と夕食。ここの唐辛子とニンニクのパスタは癖になる、とK子言う。生牡蠣とビーフシチュー。帰宅、ユンケルと風邪薬のんで寝る。

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