裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

日曜日

こら、サイバーシヨットか!

 デジカメで盗撮しちょりよったばい。朝、5時まで原稿いじくり、また寝て、8時起床。朝食はオニオンスープ。果物は柿。岐阜からもらった柿、やわらかくなって、やっと食べ頃。剥きにくいけれど。朝食時、母から電話。まだ入院生活が続いているとのこと。外反母趾というのはそんなに長い治療が必要なのか。昨日は外泊許可をもらっって家に帰り、星さんと寿司をとって食べたりせんべいや菓子を齧ったりしていたら、1日で1キロも体重が増えたそうな。

 入院と言えば、知り合いのライターの某氏が先日から入院。これがまた、手術をともない、二ヶ月はかかるという長期入院らしい。前から病気持ちの人なのだが、今回は入院先もみんなには知らせていない。
「痛いのをガマンしてるから不機嫌だろうし、仕事もしなきゃいけないので、応対してるのが邪魔」
 という、ライターとしてアッパレな理由なので文句も言えないが、入院時くらい、仕事を忘れてのんびり休養すればいいのに、と、これは私も入院時に岡田斗司夫さんに言われたな。

 読売新聞に『宮本武蔵関連本ラッシュ ドラマ原作、入門書、漫画……』とあり、
「来年のNHK大河ドラマは『武蔵 MUSASHI』。師走になって、宮本武蔵関連の本が書店にあふれかえっている。(中略)出版不況を背景にした、便乗商法とばかりとはいえないようだ。どんな宮本武蔵本があるのか」
 と、7冊あまりの武蔵本を紹介、最後に“また、吉川英治の原作を井上雅彦が漫画化した『バガボンド』(講談社)は既刊十五巻で二千八百万部ものヒットとなった”と、まるでバガボンドが大河ドラマの便乗本であるかのような扱いをしている。きちんと読めば、既刊十五巻が便乗でソレ、と出せたわけではないことはわかるが、マンガに詳しくない読者ならそう読んでしまうだろう。冗談ではない、今の武蔵ブームは全てここから始まっているのではないか。大河ドラマの方が便乗企画なのである。

 昨日の日記をアップしてから、一部訂正。squirrelの読みを最初はスクゥイラルとしたが、そういう発音記号も記してある辞書はあるものの、一般的にはスクワラルあたりらしい。電子辞書の音声機能で聴いてもよくわからない。もともと、日本人にはきわめて発音しにくい代表的単語であるらしい。ネットで調べても、スクィルからスカラレルまで、読み表記はてんでんばらばらである。ロッキーくんそのものがいるUSJのサイトではスクワレルとしてあった。まあ、各人、自分が信じる発音をすればよろしい。信ずるものはスクワレル。ちなみに、このサイトによると、ロッキーくんの本名はロケット・J・スクワレルだそうである。
☆ついでに、この元記事自体が重大な誤報であったことが後にわかるが、それは明日また書く。

 1時過ぎまで雑用、半に家を出て青山まで。今日の日記のタイトルダジャレは朝、思いついたものなのだが、表参道を歩いていたら、工事中の壁に大きく、ソニーのサイバーショットの広告があった。西手新九郎である。……ところで、西手新九郎のフルネームを昨日、マッサージされながら考えていたのであった。西手新九郎源節義太(にしてしんくろうみなもとのふしぎだ)とか、西手新九郎藤原名瀬高(にしてしんくろうふじわらのなぜだか)とか。出家したときの法名はもちろん、“宮然(ぐうぜん)”がよろしかろう。俳号は“弓愚(ゆんぐ)”、などと考えているうちに、西手新九郎一代記、という伝記小説のアイデアがうかぶ。たまたま高貴の若様と同日に生まれ、顔かたちもそっくりだった新九郎は、家の者全員がちょうどそれぞれの用事で目を離していたすきに、偶然そこを通りかかった、お家乗っ取りをたくらむ悪人に替え玉用にさらわれるが、おりしも時を同じくして家老もまた、暗殺を怖れ適当な時期まで替え玉を置くことにして若様を隠しておいたため、新九郎はこの替え玉と入れ替わることになる。しかしこの替え玉というのが運命のいたずらで生き別れになった新九郎の実の双子の兄であった。この兄がさらわれるとき、偶然もてあそんでいたのがお家の宝である黄金のカブトムシで……と、ご都合主義がエンエン続く。SFマガジンに書かしてくれないかな。

 帰宅、原稿書き続き。9時までかかって完成。二日がかりで22枚。だらけているなあ。しかも読み返すと面白くない。元本の面白さにだいぶ救われてはいるが。嫌になる。晩飯の準備。羊肉のジンギスカン炒め、白海老とワケギの湯豆腐、白身魚のズケ。ご飯は例によって新米だが、水加減をうんと少なく炊いて、固めにしてみる。ズケで食べると寿司米のようでおいしい。

 DVD、『サインはV』。高野浩幸、奥村公延、塩澤ときというゲスト陣の若い顔を見るだけでも貴重な記録。ひねくれ少年の高野浩幸をどうしようかと悩む岡田きみえ(和田良子。オタクには怪奇大作戦『狂鬼人間』の狂人女役で有名か)に、中山仁が“お前達のVを見せてやれ!”と言う。猛特訓を見せるとこのあいだのミキ中町もそうだが、みんな自分の甘さを反省して立ち直る、という単純さ。それはいいけど、“Vを見せてやれ!”が“部位を見せてやれ!”に聞こえて一瞬エロっぽい想像をし てしまった。

 ずっと見ているとこの番組、ストーリィは単純だし、強引だし、ワンパターンなのであるが、単なるスポコンものでなく、人情ばなしあり、ミュージカル仕立てあり、その時々の流行の取り入れがあり、さらにはレギュラーのシャワーシーンというお色気あり、と、受ける要素を全て詰め込んだ、エクストラヴァガンザ(豪華ショー)であることがわかる。現代の、テーマを絞り込んですっきりさせたドラマとは全く作り方が違うのである。クレージーの映画もそうだが、こういう作りの作品は経済が発展期にあり、国民がいささかハイになっている時代じゃないと作れないのではないか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa