裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

月曜日

マイケルが勝ち

 顔が崩れはじめたって、子供を窓から落っことそうとしたって、とにかくあのカリスマにはかないませんよ。朝、7時に電話。井の頭こうすけ氏から、キャプションの差し替えについての問い合わせだった。起きてしまおうかと思ったが、寒いのでもう一度ベッドにもぐりこんで、8時起床。朝食、K子には彼女がこないだ買ってきた、焼きサンド作り器で、ローストビーフサンド。ビーフはお歳暮の。このところ、お歳 暮のおかげで食費が助かる。

 知り合いに群馬県のお医者さんがいる。こないだから、群馬の医師に脅迫状が大量 に送りつけられるという事件
http://www.zakzak.co.jp/top/top1214_3_23.html
 があって、彼のところにも来ているんじゃないか、と思っていたのだが、やはり来たそうで、裏モノパティオで、その文面を教えてくれた。これが笑えるシロモノ。

「前略 我々は貴殿の側近の者より、貴殿に関する仕事、私生活の上で、世間に露見したら非常に都合が悪く、貴殿の現在の仕事、家庭生活に、於いても多大な影響がある情報(写真、ビデオ、書類コピー、録音テープ、等)を過去より現在に至り、入手しております。我々も象殿の仕事、生活環境を混乱させる事は避け、象殿も現状の仕事、家庭を守り生活をしてほしいと願うものであります。故に、我々が所有する貴殿に関する情報を購入して頂きたい。購入意志が無き場合は、算段の仕事、生活環境の中に、これらの情報を何らかの方法で公開しなければならない。(近隣へ張り紙、配布、インターネット上での公開、関連事業所、マスコミ等へ通告、家族、親戚、近隣への連絡)貴殿及び家族の為にも購入する事をススメル、もし貴殿が、警察、弁護士等、相談をした場合、我々は良殿の近くに現在も情報源(人間による監視、盗聴【電話、携帯電話等】盗撮等の方法)が、ある為注意されたし、我々は、復讐屋、仕事請負人などと一緒に行動に移す。もし、警察に、捕まったとしても、その時点で、この情報を元に、次のグループが貴殿に通告無しで実行に移す、その時点では、今後の安心の保障は無いと思う。購入意志がある場合は、下記の口座に平成14年12月13日金曜日、午後4時までに入金する事。 (最終確認14日土曜日正午)無き場合、我々は速やかに実行に移す。購入金額50万円を振り込む事
郵便口座  記号12390  番号43350151
口座名義人  小泉 浩二  (コイズミ コウジ)
 購入頂いたならば、我々は二度と貴殿に購入請求は致しません、.又我々も、今回の件は、知らなかった事とし、墓の中まで持っていく覚悟であります。責任をもって盗聴、盗撮、人間による監視も止める事を誓う。
●入金確認後、貴殿の情報は、我々が責任をもってコピーしないで、原本を郵便で送ります,)貴殿の一生を無駄にしない為にも、良く考えて行動して頂きたい。我々は再度貴殿に誓う、購入したなら、二度と貴殿に購入依頼は、絶対にしない、天地神明に誓い約束する。『個人名で送る』ので安心の事
                                   敬具」

 何か、相手を気遣っていることが伝わってくる、基本的に“いい人”の文章であるような気がする。『個人名で送る』ので安心の事、などというのは何かエロ写真通販みたいでいい。貴殿が“象殿”になっているのは“棒の手紙”的なコピーミスによるものか。こないだの大雪で知人が転んで捻挫し、“200人が怪我”の中に知り合いがいる、と思うと何か自慢したくなるような気がした。今回も、新聞で報道された事件の該当者(被害とは言えなかろう)の中に知人がいるのが理由もなくうれしい。

 昼は月曜日なので、もういいかげん牛肉旨煮に戻っているだろうとチャーリーハウスに出かけるが、相変わらず鶏肉豆鼓炒め。ガッカリして、郵便局で古書店への支払いを済ませたあと、六本木へ出る。銀行で振り込みをしようとしたが、相手先の銀行が支店統合などで変わっており、振り込めず。ABCに行く。『カルト王』『お父さんたちの好色広告』いずれも文庫新刊台に平積み。『お父さんの〜』はサブカル棚にも平積みされていて気をよくする。『キッチュワールド事典』はまだ並んでいない。新刊4〜5冊買って、吉野屋で牛丼。半熟卵を頼んでみるが、わざわざ頼むこともなかった。

 帰宅、文藝春秋社からFAXされた対談ゲラに赤入れをする。脚注も作らねばならないのがめんどくさいが、“石上三登志”“中野貴雄”“南山宏”といった人名に、自分なりの解説を加えるのは、一種の快感がある。いずれも一筋縄ではいかない人々を、自分の視点で規定する、という作業だからであろう。事典類の項目執筆というのは、世の中を自分の見方で再構築するような、ワクワクする作業だろうと思う。

 開田裕治さんからメール、『サインはV』特撮関係人名に“范文雀/『マリアの胃 袋』”があるとの指摘。大笑い。そこまでは追ってなかった。特撮関係の、いろいろとヘビーな情報もいただく。なお、開田さんのコミケブースがやおいの真ん中、というのはあやさんのカン違いで、周囲も特撮だった模様。重畳。岡田斗司夫さんからもちと頼まれごとの電話、さらにロフトの斎藤さんから、1月のイベントについて連絡あり。プリンセスみゆきの実演付きエロ小説朗読会。大正時代のものにしてほしい、とこれは斎藤さんからのリクエスト。

 年賀状の宛名名簿などをチェック。同世代の人たちからは、喪中の知らせが多く届いている。ゴジラの手塚監督、ドリー尾崎氏(彼はちょっと若いか)、長山靖生氏などなど。去年は私も喪中であった。そういう年代なのだなあ、と思う。喪中割礼、と いうのは小松左京のシャレだったか?

 8時、タクシーで下北沢。運転手のおじさんが世田谷専門の人で、あのあたりは目をつぶっても走れます、と、信号に出来るだけぶつからないコースをとって、住宅街の中を右へ左へと蛇行しながら行く。なるほど、自慢に違わず、十分かかるかかからないかで到着したには驚いた。虎の子で、あのつさんから今年最後の野菜が届いたものを調理してもらう。二十日大根と柚の漬け物、大根の煮物、大豆と豚肉の煮物などいずれも冬の滋味。酒は『綿屋』純米吟醸というのが酸味が効いていて飲み心地さわやか。宮城の蔵元だそうで、ここの酒は『綿屋倶楽部(コットンクラブ)』なるファンクラブが出来ているほどの人気なのだとか。

 酒も料理も大満足だったが、飲んでいる最中から肩が張り始め、9時を過ぎるころには鉄板が入ったような状態になってしまった。10時過ぎたあたりから、アルコールの加減か、幾分楽にはなったが。12月はずっとこういう状態なのだろうなあ。野菜を持って帰宅。北朝鮮は007新作に対し文句つけてきたそうな。そういえば試写の案内が来ていたが、これでは混むだろうなあ。映画会社のバンザイの声が聞こえて きそうである。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa