裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

金曜日

もの言えばクツベラ寒し秋の風

 ご家庭でできるダジャレシリーズ(朝お出かけのとき、玄関でクツベラを口にあてて言ってみましょう)。朝7時起き。首筋の両脇が凝り固まっている。リンパが腫れているのだろう。かといって、症状がひどいわけでもない。変てこな風邪である。朝食、ヨーグルトとイチジク。青豆の冷ポタージュ。田代まさし復帰インタビューの模様をテレビで見る。青ざめて固くなっている様子を撮影されるより、事件の概略であの“ミニにタコ”のギャグを再現される方が残酷なような気がするんだが。

 ジャック・レモン死去。名コンビのウォルター・マッソーの後を追った形。この二人のおかげで私は映画が好きになったようなものかもしれない。『アカデミー賞グレイテスト・モメント』というビデオの中に、彼ら二人が1981年の監督賞のプレゼンターを勤めている模様が残されている。
レモン「監督という人々にもいろいろあります。傍観者、独裁者、優しく寛大で理解ある人。かと思うと、意地悪でケチくさい人もいます」
マッソー「……チビもいる。ノッポも。老いぼれがいるかと思うと青二才もいる。アメリカ人の監督ばかりじゃない、フランス人、チェコ人、イギリス人。……人物の描き方はうまいのに、カメラ音痴のやつ。アングル、フォーカス、レンズやスプロケットの状態には気をつかうくせに、役者のコンデションに気が回らないやつ……」
レモン「……今夜はそんな監督たちが一堂に会しています」
 漫才でもないのにこんなにイキが合っている二人も珍しかった。

 麻黄附子細辛湯のむ。これがこういう風邪の症状を抑えるのに奇態に効く。ただし風呂上がりなどに汗が出る出る。K子に弁当。牛薄切りの焼いたのにホウレンソウのおしたし。太田出版と学会本原稿一本、やっとアゲてメール。すでに三本送ってあるので、これであと私のノルマは二本。

 それからすぐに講談社Web現代やりだす。1時、中断して六本木へ出て、冷やしタヌキ食って昼食に代え、いろいろと買い物。帰ってまた原稿続き。なんだかんだ雑用で中断し、書き上げたのは5時半ころ。メールする。折り返し担当Iくんから電話あり、この連載の単行本、7月17日の発売になったとの報告(当初の予定より一週間延びた)。ロフトでの刊行記念イベントは7月16日。つまり、ここのイベントでの先行販売が最初のお目見えになるはずで、よろしければどうか足をお運びいただきたく。

 夕食の準備にかかる。さっき六本木で買ってきた豚タンを2時間茹であげた茹でタンと、名古屋コーチンの鶏すき。鶏すきは野菜中心で、ゴボウを入れたら、肉も豆腐も真っ黒けになってしまった。アクは十分に抜いたはずなのだが。まるでイカスミで煮あげたようで、食欲を減ずることおびただしいが、しかし味はダシがゴボウに染みて頗る美味。茹でタンは塩とゴマ油で食べる。K子のリクエストで、ビデオ『大魔王シャザーン』。いやあ、今見てみると、まるでアートアニメみたいなセル枚数の少なさでありますなあ。

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