裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

日曜日

希塩酸スーチー女史

 彼女の存在はミャンマーの劇薬だ。朝6時半起き。朝食、スクランブル・エッグとトースト。ミルクコーヒー。東京での私は午前中がシャッキリして、ネジがほどけるように午後になるにしたがって元気がなくなるが、北海道では逆に、朝のうちは何となくアタマがボーッとしてモノがはっきり思考できない感じ。各マスコミ、小泉人気に対するシット丸出しのネソネソ口調。“小泉内閣支持率は80パーセントを超えているのに投票率が50パーセントそこそこだったのは必ずしも都民が自民党を完全支持したわけではない”と書いてあった新聞があったが、こういうのを数字のトリック(というかコジツケのまやかし)という。

 ビデオをつないで、オタアミ用のビデオを編集する。今日使う予定はないビデオであるが、ひょっとして時間が空いたときのため用。ユウコさんが今日のオタアミに来るという。豪貴も来る予定だったが、東京出張の用事が長引いてこられない。彼女のお守りに母が来る、というので、ソレハヤメテクレと頼む。実の母親の見ている前でエロアニメネタなどしゃべれますか。

 昼はヤキソバを食べる。ヤキソバにいれる青物はいろいろ試した結果、カブの葉っぱが一番いいんだそうだ。シャキシャキして、適当なクセがあり、小松菜よりもいいという。確かにうまいが、歯にはさまって弱った。1時半ころ、K子と一緒に家を出て、会場のかでる27に向かう。

 ここの会場、使いいいし機材も揃っていていいが、楽屋がないのが玉に傷。喫茶店で時間待ちをする。岡田さんが女性スタッフのTさんの話を聞いて笑い転げていた。TさんはAIN名物の遊び人で、その経験談だけで企業バクロもののエッセイが一冊書けそうである。今日もオタアミ公演終了後、パイロットのカレシとデートだそうである。裏ばなしをしばらく拝聴。岡田さんは昨日、京都の花園大学で講義して、それからここへ直行だったとか。眠田さんも無事到着。“この季節の北海道はいいねえ”と、真剣に老後の移住を考えていた。梅雨がない、というだけで私のような者には天国である。もっとも、今日は何かジットリとして、北海道にしては珍しく湿気が高い気候である。

 10分オシで開演。冒頭十五分ほど、立ってトークする。『パールハーバー』ネタだの、岡田さんのトカレフネタだの。客数は100ちょっと、お客さんはおとなしいから大爆笑という風にはならないが、ネタへの食い付きは素晴らしくいい。その後ビデオネタに移り、中休みなしで3時間、ぶっ通し。眠田さんのノリがいいこと。私もよくしゃべったが、体調がイマイチだったので(気圧のせいか?)中ノリ程度。このノリで客をつかんで大ノリに持っていく体力がなかった。

 終わって、ユウコさん来ているかと思ったら、さっさと逃げ帰ってしまったそうである。やはり刺激が強すぎたんだろうか。女性客が回を追うごとに多くなっていく傾向は札幌公演が一番である。ホテルへとりあえずチェックインする岡田さんと別れ、Tさんの案内で、眠田さん、じゃんくまうすさん、薫風堂さんとK子とで、二次会の炙屋に向かう。路上でサインを求められた。警視庁やエルム会館のあたり、歩くのは 二十数年、いや三十年ぶりくらいではないか?

 炙屋というのはあのロフトの打ち上げに使う炙屋のチェーンか、と思ったが、まさにそうだった。箸置きがニボシなのでわかった(岡田さんはアタマつきの魚が大の苦手で、すぐ脇へ放り出した)メニューの質などはこっちの店の方が数等上である。K子、古本屋さんたち、それに志摩さん夫婦も加えたので、スタッフの方に料理があぶれるのが出てしまったらしいのは気の毒。とはいえ、話は盛り上がり、大変いい二次会になった。北大の大学院出身の引きこもりくんというのがスタッフにいたが、彼を一目見て薫風さんが“あ、可愛い!”と声をあげる。薫風さんは妻子持ちだが、美青 年好きでもあるのである。そそくさと名刺を渡していた。マジか?

 イシガレイの活き造り、ホタテとアスパラのバター焼きなど食べながら、雑談。Tさん、例によって鬼畜なモテばなし。これからデートなので、と言いながらまだ続けているので、笑いながら“早くいけッ!”と叱りつける。岡田さんから、共通の知人(と、いうか大嫌いなやつ)についての、シャレにならない情報を聞き、のけぞって笑う。本人は知らないんだろうか。あと、選挙の立候補要請が某党から来た話。他の予定者にふくろう博士が入っていたそうで、そこらで一瞬、受けようか、と思ったくらいツボに入ったそうだ。AIQ(九州)のスタッフで、わざわざ札幌まで見学に来ていた人がいた。なんと熱心な。
「九州でやるときはギャラは『魔王』(焼酎)でいいからね」
 と言っておく。

 そこらで体力が極端に消耗し、関西からの岡田さんと、明日法事の私はダウン気味になる。お開きで、薫風さんは引きこもりくんにやおら抱き着いていた。やはりマジらしい。志摩夫妻に送られて、タクシーで帰宅。母はユウコがすぐ帰った、という話に、“いじめたんじゃないの”と気にしていた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa