裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

水曜日

ナバロンの洋裁

 あの巨大なドレメ学院を破壊せよ。朝8時起き。雨しきり。すでに梅雨か? 体中の細胞に水気が溜っているようで、階段を上るときの足の重さが晴の日とは如実に異なる。もっとも、昨日のホッピーが溜っているだけかも知れぬ。朝食はナンに札幌の母から送られたカレー、それにオレンジ。幸永の焼肉のケムが髪の毛に染み付いているので、早めに風呂浴びようと思っていたら掃除のおばさんが来る。その日だということを忘れていた。それで入りそこね、午前中ずっと、ケム臭い頭のまま過ごす。

 太田出版のと学会原稿も尻に火がつきはじめたので、とりあえず一編、書き始め。書いていて体が湿気でズドーンと重くなるのを、栄養ドリンクなどでなんとか乗り切り、1時ころ10枚、完成。昼はお掃除のおばさんが持ってきてくれたオコワに、豚バラ肉の塩胡椒炒め(K子の弁当にも用う)。食べてから、風呂。

 Web現代からゲラ届く。明日、一泊で大阪なので、その新幹線車中でチェックするつもり。太田出版のゲラの方はチェック終わり。すぐ返送しなくてはいけないのだが、体がダルくてダメ。こういうときはヒロポンが欲しくなる。

 トッパンのカルチャー講座、7月半ばの予定が8月アタマに変更になる。フィギュア王や週刊アスキーの原稿で使ったキッチュグッズを開催期間中、『カラサワ・キッチュ・ワールド』として展示したいそうだ。“まぬけもの趣味”などと言われていたバカコレクションが、こんなところで役に立つとは。

 3時、雨の中、青林工藝舎へ。新編集部に行くのは初めて。タクシーに乗ったら、中年の運転手がやたら気の弱い人で、曲り角などのたびに“あの、ここで曲らせていただいてよろしいでしょうか?”とか、“この先は、これこれのルートでよろしいでしょうか? いや、私の判断が間違っているかもしれませんが”などとオドオドと訊く。車中でメモ整理などしようと思っていたのだが、これで気をそらされて、何も出来なかった。

 手塚さん、井上さんと三人で、本の打ち合わせ。何冊か資料用にエロ本を持っていく。雑誌作りの人らしく、手塚さんがやたら興味を示し、最初は『お父さんたちの好色広告博覧会』の改定版、という話だったのが、いっそ昭和40年代〜50年代のB級エロ雑誌の研究紹介本にしようか、ということになる。そうであれば、元本の方はそのままで文庫に下ろすというテもあるな。

 1時間半ほど打ち合わせをしたが、大半は雑談で、出版業界のウラ話、うちあけ話のタグイ。これがまた、面白いったらない。なんというか、私も含めて旧ガロ系の作家連というのが、いかに出版業界のハジッコの方を渡り歩いているかという証左みたいなもので、大手出版社でデビューしてそのまんま王道ばかり歩いてきた連中には、この雑談の楽しみは味わえないだろう。エリートコースをいってなくてホントウによかった、と思うのはこういう時。腹を抱えて笑う。

 7時、まさ吉へ。店でもまだ出版業の話。工藝舎、『刑務所の中』で儲かったろうなどと思われているが、小さい出版社で増刷々々とくり返すのはなかなかツライという。そうだろうなあ、紙代と印刷代はトッパライだものな。デザインとの兼ね合いで紙には苦労する、という話。それだけに、いろいろとウルトラC級の裏技を使って、うまく安く仕上げられたときの快感はクセになるんだろう。K子も来て、かなりメートルが上がった。しかしまあ、雨の日の酒はよく回って、これはこれでクセになる。

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