裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

日曜日

三人よればフォンデュの知恵

「フランスパンがあるんだが、どうやって食べよう」
「チーズとワインがここにあるぜ」
「うちにはキルシュがある。よし、チーズフォンデュにしよう!」
 朝7時半起床。朝食、ピタパンにハムとトマトはさんだもの。イチゴ、コーヒー。週アス一本アゲ、メール。鶴岡から電話。吉祥寺パルコでサイン会決定とか。おお、竹熊・岡田・いしかわの牙城に挑戦だな。何でもいいから早く稼いで保釈金を返してくれ。共犯の河井くんの分もな。

 小谷野敦の本、読みつぎ。著者はいまだに、若い人が初めて出した本が話題になったり書評に取り上げられると嫉妬を覚えるそうである。そして自分の他人への批評が攻撃的になるのはこの“苦節十年”のコンプレックスのせいであり、もはや致し方のないことである、と断定している。断定されてはもうしょうがないよな。
「たとえば浅田彰という人が、ほとんど本を出さないのは、最初の本でスターになったからではあるまいか。それに対し、福田和也とか宮台真司とかいう人がやたらに書きまくるのは、最初の本が“失敗”したトラウマのせいではないのだろうか」
 ・・・・・・いや、気持ちはわかるが(笑)、こんなこと、フツーの人は売れてからまで自著の文庫のあとがきで書きゃしない。よほど粘着気質なんだろう。ここまでくるともはやボヤき芸である。イイ味出しまくり。

 昼は新宿にて買い物。駅ビル(マイシティなんて軟派な名前にしていいと誰が言った)で回転寿司。なるたけゲテなネタ中心に食実験。巨大エンガワが美味。脱色系の妙な白さといい、どうも謎。同ビルの中古ビデオ屋でビデオあさり、地下鉄で青山。夕食の材料買って帰る。

 週刊読書人用マンガ評原稿。卯月妙子『実録企画モノ』。凄惨な笑いというものがあることをこのマンガで教えられた。『MANGA EROTICS』は私にとっては既にこの作品の入れ物、でしかない。作者は人間としての精神機能のどこかが確実に崩壊しているのだが、読んでいくうちにおかしいのは周囲の方で、彼女の方が非常に前向きに人生に取り組んでいるように思えてきてしまうのがスゴい。やおいマニア(キャプ翼から無限の住人まで)の同人オタク的ペンタッチとアート系描写、それに稲中(大ファンらしい)の画風模写が一作品の中で同居していて、読みにくいっちゃありゃしないのだが、その読みにくさが、単なるエッセイマンガから“人生”マンガにまでこの作品を昇華させている。・・・・・・それにしても巻末の夫の自殺(結局未遂で一年半の植物人間後死亡)、こんな“いい話”的自殺は真崎守の『はみだし野郎の挽歌』以来だな。睦月さんとこの自殺マニア女子高生は少しこのマンガを読んで、己れの自殺のドラマ性のなさを恥じよ。

 8時、夕食。ウナカボ、鯛飯、酢ゆば。鯛飯は土鍋がないのでガラス容器の鍋で炊く。炊き方もわからなかったが、“はじめチョロチョロ中パッパ”で炊いてみたら、大変にうまくいった。昔の人よありがとう。ビデオで『秘密戦隊ゴレンジャー』第3巻。この3巻は豪華版で、出てくる怪人が機関車仮面、野球仮面、牛靴仮面。ゴレンジャーをカルトにした3本が一巻につまっている。死神博士っていえば、戦隊ファンには天本英世でなく八名信夫だよな。

・今日のお料理『うなかぼ』
 要するにウナギとカボチャの蒸し物。カボチャを小片に切り、瀬戸物容器に入れ、その上から冷凍のウナギ蒲焼きを同じく十片ほどに切って乗せる。酒をおまじない程度にかけて、そのまま蒸し器に入れ、20分ほど蒸す。カボチャに串がすっと通るほ どになったら、上から蒲焼きのタレをかけまわし、揉みノリを散らす。

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