裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

30日

月曜日

ちゃんこ・フェット

このちゃんこ鍋はクローンですよ!(意味不明)

※快楽亭カレー会

昼12時まで寝る。
咳、ほとんど出ず。
母の室で朝・昼兼用の食事。
バナナリンゴジュースにご飯一杯。生卵、シャケ粕漬けなど。

井波律子『中国の五大小説・上』を読む。
下だけ家にあったので読み初めて、上はアマゾンで注文したもの。
『西遊記』のラストで、経文を三蔵が受け取ろうとしたら
阿難と迦葉の二人が“みやげものを持ってもこない者に聖典を
渡せるか”と意地悪をした、という場面は、覚えていないな。
高校のとき、平凡社の奇書シリーズで西遊記は通読したはずだが。
陳舜臣の『新・西遊記』では西遊記というのは基本的に道教を
俗な程度の低いものとして戯画化・妖怪化して描き(悟空などの仙術も
しかり)、半面的に仏教をありがたいものとして描いている、と
論じているが、最後の最後で仏教側も俗になってしまった。

某社原稿、差し替え部分を書こうとしたが、編集さんから
メールで、もう印刷所に回してしまったとのこと。
なぁんだ、じゃあゲラで修正しようと思い、一時間ほど寝る。
起き出してメールを見たら、それは別部分で、差し替え原稿は
今日いただきたいとのことだったが、もう書く気力なし。
時間も半チクになってしまっている。

今日は快楽亭から駒形のちゃんこ屋でカレーを食おうと誘われている。
夕べの打ち上げで一緒に行こうと誘ったが、ほぼ全員、明日は一日
死んでるから、と断わられる中、菊ちゃん(菊田貴公)だけが
行く、と言ってくれた。ただ、その菊ちゃんとも連絡とれたのは
ギリギリ。

少し早めに本所吾妻橋。新中野から新宿に出て、新宿から中央線で
お茶の水まで行って、お茶の水で総武線各駅に乗り換えて浅草橋、
そこから都営浅草線で。少し早くついたので、駅近くのマックで
少し待つが、ほどなく菊ちゃん来て、一緒に切った爪のような
月が輝いている空を見ながら通りを歩く。

幸い地図を用意してきたこともあって、迷わずちゃんと亭へ。
快楽亭といつものメンバー、それにヨーロー堂のご主人とその妹さん
などがいて、奥の桟敷席へ、それから三々五々、メンバー集まる。
元、中野ブロードウェイの居酒屋『雪椿』のご主人もいた。
今はTBSのレストランで働いているそうだ。

今日の会は、この店の裏メニューであるカレー(快楽亭曰く、
いままで食べたうちで最高のカレー)を食べる会なのだが、何も
カレーだけ食うわけではなく、ちゃんとここの名物の鶏唐揚げ、
牛たたき(ごまだれ)から始まって、メチャうまいスープちゃんこまで
きちんと食って、サテそれからおもむろにカレーが出るのである。

菊ちゃんがちゃんこのスープを一口のんで、
「しまった、無茶苦茶にうまい!」
と口走り、みんな大笑い。
いろんな話をしながらワイワイ、ビール、焼酎をがぶがぶやりながら。
で、鍋をあらかたさらったところで、いよいよカレー。小振りの浅なべ
にカレーが入って出てきて、これでこのテーブルのメンツ6人でわける
のかと思ったら冗談じゃない、これが一人前、ライスもたっぷり。
具は柔らかく茹でられた脛肉だけ、というきわめてシンプルなもの。
ルーはたぶんおろしタマネギをベースに生姜やニンニクもおろし、
じっくり煮込んだものだろう。

スプーンで掬って一口、口に入れると、まかないカレーとは思えぬ
本格的なスパイスの香りが口にひろがる。唐辛子の辛さではない、
カレー香辛料の辛さ。しかし、そこでタマネギの何とも言えない
甘みがじゅわっと口中に染み込んでいき。
……そして、脛肉の柔らかいこと! シンプルにして複雑な、
煮込み料理のエッセンスが凝縮されている感じだった。

うまいうまいとぺろり平らげ、終わってテーブルの上を見ると、
ちゃんこの汁が鍋の中にそっくり残っているわけで、人としてこれは
残せんわな、とみんな言い、麺を頼んで投入、これをポン酢で
いただく(スープに塩だけでもいい)。
これもうまいうまいとたいらげ、さらにまだ鍋に残るダシを捨てるに
忍びなくて、ご飯と卵を投入して雑炊にし、
「雑炊は別腹だから」
と言いつつぺろりと片づけた。いや、イキオイと言うものは恐ろしい。
菊ちゃんはじめ女性陣(一部男性も)はなおその上にデザートのアイスクリームまで食べていた。
どれだけ別腹があるのか。
大満足で店を出る。

ご主人とお母さんが、
「いつもテレビ見てますよ」
と言ってくれた。
いろいろ話しつつ地下鉄で浅草橋、お茶の水、新宿まで来て、
菊ちゃんと別れる。いや、彼女も小さい体でよくまあ食べてくれた。
あとはタクシー使って帰宅。11時。もう、酔いの調整も何もなく、
ベッドにもぐりこんで眠ったが、さすがに夜中、腹が苦しくて
目が覚めた。うーん、お腹がキツいよお、と子供みたいにうなり
ながら台所に行き、湯豆腐に使っている重曹をスプーン一杯、
水で飲む。効験あらたかで、10分もしないうち、だいぶ楽になって
きた。

*写真はそのカレー。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa