裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

水曜日

さるとるの化物

「お前はそれがあるところのものであらず、それがあらぬところのものであるものとして実存しているだろう!」

※Yくん打ち合せ 白夜書房打ち合せ MCプレス打ち合せ アニドウ上映会

朝8時起床、入浴、9時朝食。寝は足りているが、頭痛少しあり。生れて48年、片頭痛なんてなったことがなかったのに。

鈴木ヒロミツ死去。60歳。ザ・モップスの当時はまだ子供で、その後モービル石油の
「車は、ガソリンで、動くのです」
という変てこなナレーションのCM(71)で長髪時代の姿を記憶に留め、それ以降は若手タレントの、いわば兄貴分という形でテレビに出演しているのを見ていた。百恵・友和コンビの映画第一作『伊豆の踊り子』でも板前役でワンシーン出演していたし(出てきただけで観客が笑っていた)、ずうとるびが初めて紅白歌合戦に出場したときは
応援にかけつけて、
「ずうとるび、初めての紅白出場でございます! ……たぶん最後になるでしょうが」
とやって(事実になったが)笑いをとっていた。

なにぶん、ザ・モップスがユーミンが追っかけをしていたほどのグループだということを知らなかったため、なんでこの人が芸能界で幅をきかせているのか、よくわからなかったものである。大学に入って、初めてモップスの曲を聴き、なるほど、と感心したのだが、すでに彼らは伝説のグループになっていた。その後は火サスとかの刑事や、筒井道隆の『ボクのおじさん』のイヤミな上司くらいしか記憶にない。家族を大事にするあまり、仕事は選ばなかったのか。かつてのファンはどういう目で見ていたのかなあ。

昼1時 Yくんと打ち合せ。事務所近所のリトルスプーンでカツカレー食べながら。私は辛口にしたが、このカツカレー、なかなか美味いのを今さらながら発見。青山の志美津の比にあらず。話そのものはどうにも大変だねえ、と同情せざるを得ないようなこと。

事務所に戻り、雑用。オノは今日も小冊子編集で自宅作業。午後2時、白夜書房打合せ@時間割。パチスロ雑誌の仕事である。とはいえ、パチスロ雑誌とは思えないくらいオシャレな表紙とかになるらしい。
「ダメモトでお電話しましたが、まさか受けてくださるとは」
と言われる。来た仕事は無作為に受ける、がモットーなのである。

帰ってまたトンボを切って、午後3時、MCプレス打合せに東武ホテルへ。Kくん、自前の古書を持ってきて、これで、とのこと。古書マニアの未来について、暗い話をちょっとする。……しかし、前の大阪から帰京〜芝居昼/夜〜オールナイト上映などというスケジュールより、こういう風にちょこちょこ事務所と外を行ったり来たりの方が、精神的に草臥れるな。

鶴岡から電話。『オタク大賞』の編集について。
「いっちゃなんですけど、2004年のときは編集が大変だったんですから。唐沢さんがおぐりさんの一言々々を必ずフォローしてかぶせてしゃべるんで、切れなくって」
とのこと。呵々。

はれつ氏、突如来社。
「確定申告に来たんで、そのついでに」
と。『アストロ劇団』のこと、岡田竜二のブレイクのことなどなど雑談。

午後7時過ぎ、中野芸能小劇場へ。アニドウ上映会。ちょっと遅れたのだが、映写機が故障して上映開始が遅れたそうで、一本目の『月光仮面』の冒頭三分の一くらいのところから見られる。タイトルが『ニセの友情作戦』というところが実にもって皮肉。なみきたかしらしい。しかし珍しく客の入り悪く、30人来ていたかいないか、という感じ。みんな確定申告で忙しいか? まるさん、さざんかQさん、
++ungoodさんなどに挨拶。

次がハロルド・ロイドの若い頃の映画。チェスター・コンクリン(『モダン・タイムス』の技師)を殴って気絶させ、それを腹話術人形のようにあやつるあたり、コンクリンのパントマイムの技もあいまって爆笑。コマ落としのように見えるが実際の動きなのだろう。

他の、いわゆる本道の海外アニメは、いずれもシリーズ中の異色作みたいなのが並ぶ。フェリックスがふられて最後にガス自殺してしまう話とか、ポパイが最後にオリーブをふってしまう話だとか。ボヤールの『ロマンス』も最後は悲恋に終る話で、今日は悲恋特集か、と思えるほど。某有名プロダクション作品で、とてもそこのプロダクションのキャラとは思えない下品な造形(画品がない、というか)キャラが出てきたりするものとかもあった。

ベティの『シンデレラ』(1934)は33年作の『白雪姫』に比べると毒のない愚作だが、王子様の二枚目キャラが今見るとすさまじくヘン。あと、エンドマークの後まで、白雪姫の姉二人がキーキー騒いで終るところに、かろうじてフライシャーらしさが。あと、1934年作という瀬尾光世の『元禄恋模様 三吉とおさよ』は、なんと途中から『キングコング』(33年)のパロディになる。ああ、これ、金沢で上映したかったなあ!

ラストはアヴェリーの『SWING SHIFT CINDERELLA』(45)で〆。ついこないだも上映したと思ったが、面白いものはやはり何度見ても面白い。

終わってみなさんとメシでも、と。やたら寒いのでシャオヤンロウでもやりますか、と金龍門へ向かう途中、植木不等式さんから携帯に電話、合流したいとのこと。『アストロ劇団』観にきてくださったさざんかQさんなどと舞台ばなし、またやたらマニアックな映画話。今日はやはり寒いせいか、店が満席の状態で料理が出てくるのが遅く、銀座から駆けつけた植木さんも充分にシャオヤンロウに間に合った。私の月光仮面と同じか。ラーメンまで食べて、ウマイウマイとみな絶賛、植木さん、その前に某高級中華料理店で宴会があったそうだが、そこの中華が典型的ダメ中華で、やっとここで埋め合わせが出来た、と感涙していた。12時近くまでアニメ・映画オタ話。私が番宣に出た『天保異聞 妖奇士』、打ち切りだとか。まあ、ちょっと設定に悪凝りの感はあった。植木さんにタクシーで送っていただく。車中、まだお仕事のお話。

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