裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

日曜日

オレは村じゅうで一番モーホだと言われた男

原曲名が『ゲイ・キャバレロ』だし。

※『アストロ劇団』千龝楽 

朝8時55分起き。伝え忘れて、10時半朝食にしてもらい、もうひと寝入り。10時45分、朝食。母の室に行くときに見たら雨、ちょっと強く降っていた。前売りは完売なので客足に影響はないと思うが、満席の場内に濡れた傘やレインコートがぎっしりというのも興をそぐものなので、やんでくれればな、と思う。

朝食、阿部能丸くんにいただいたパイナップル、リンゴ。体力はなんとか回復。いやあ、若いこと。さすがに日曜はメール等の雑用もなく、準備テキパキ。一応傘を持って出たが、その頃にはもう晴れていた。橋沢座長、“晴れ男”の自称伊達に非ず。12時、小屋入り。

千秋楽、すでに座席チケットは完売、ダメ出しもほぼ無く、橋沢さんの
「では最後まで気を抜かず、がんばりましょー!」
の声に応と答えて。やはり入りがよかった公演の千秋楽はみんなの気合いが違う。舞台の上でそれぞれセリフ確認など。

充分回復したとは言えないが、声、昨夜のガラガラよりはまし。ノドボトケが痛む。ノドが痛いのは当然として、ノドボトケが痛いのは変だと思ったら、カラーをつけてノドを締めつけているのでセリフのたびに上下するノドボトケがボタンにこすれて、それで腫れているのだとわかる。

カラーと言えば、その下にしめているアスコットタイを、ゆうべトークのためにシャツの下にしめて池袋に行き、打ち上げで外してオノに預けたままになってしまっていた。苦肉の策で、楽屋に初日から置きっぱなしになっていた、花のピンを胸につけてみる。案外面白く、恵理ちゃんに
「最初からそれでいけばよかったですね」
と言われる。

昼はスープカレー(マジスパではない、別の店。店名が“なまら”で、やはり北海道。どうして北海道がスープカレー発祥の地となったのか、従兄弟の秀生兄に聞いたら、白石の病院のせがれが医者になれず、自宅の病院を改造して造ったカレー屋がヒットしたのだとか)。ノドに辛いものを敢えて頼んでみる。味はまず、いい方。

客演陣、お互いにメアド交換したり、携帯教えあったり、最終日の舞台ならでは。坂本ちゃん、
「私、サブカルものが大好きで、今回の出演OKしたのは、カラサワ先生と共演が出来るからなんです〜」
と言ってくれる。まことにありがたい、と思いながら、彼が寄ってくるのに少し緊張するのに苦笑。とはいえ、ほっぺたをくっつけあって写真を撮る。助くん、ずっと毎日、マジックで体中に入れ墨描いているので皮膚に染み込んで、体色がグレーになっている。

受け付けをやってくれたAさん、中年の親父さんであるが、ふらふらになって楽屋に現れる。酒と、処方されている向精神薬の併用でラリ状態になってしまったらしい。まともに歩けない状態で、体のあちこちに、ここまで歩いて来た間に転んで出来たのであろう傷がある。外階段の踊り場で最初酔いを覚まさせていたが、薬の切れた自分に反動の鬱で飛び降りちゃうかも、と、楽屋に寝かせる。ハッシー、つくづく
「オレ、生まれ変わったらただの役者でいい。座長ってのはあまりにいろんなことがありすぎて狂っちゃいそうだよ」
とボヤいていた。

さて、あっと言う間に開演時間。泣いても笑っても最終回、欲をかかずにミスだけしないようにしよう、と気をつけてやる。NC赤英が冒頭で小道具の携帯を忘れてあわてて取りに戻るというボケを見せて爆笑。

で、私、まず、出のところバッチリ。それから二回の短い出をはさんでラストまで。最初の短い出のセリフちょっとつっかえかかった他は
まず、これまでで最高の演技になった。残念ながら、〆のセリフで手が来るまでには至らなかったが、怪しさは存分に出すことが出来て、まず満足。

舞台、どっとウケる。壇上に客を上げるところで、袖から見たら、文サバ塾生でもあるなまこねこさんだった。岡っち相変わらずの大ウケ、樋口ちゃんのジュリエットも拍手きている。ラストのカリオストロもきちんと。細かい修正はしかし大事だな。

終えて橋沢さんの音頭で一本締め。その後お客送り出し。ベギ、原田明希子ちゃん来てくれる。二人とも美女だ! 開田夫妻も、あやさんのケガを心配していたが来場。開田さん、やたら面白がって、私の演技も褒めてくれる。友人とはいえ、ここまで褒めてくれるというのはめったにないので意外。rikiさんに、打ち上げ誘っておく。

それから8時過ぎまでかけてバラし。手伝いたいがさりとて足手まといにもなりたくない。何をしていいかとまどっていたら、恵理ちゃんが見事なフォローで楽だが重要、といった仕事を与えてくれた。気がきくひとだなあ、と感激。荷物出しも数回往復して、働く。こういうことをさせてくれる仲間意識が嬉しい。

結局、全て片づいたのが8時15分過ぎ。開田夫妻、オノ&マド、しら〜に連絡、『虎の子』であったまっている、とのこと。行ってチラシ置きしてくれたお礼を言い、ビール一杯。

開田さん曰く
「あの役はカラサワさんのためにある役なんで、代演の人がどういう風に演じたのか、気になって気になって」
と。まさに向川圭介、大変だったろう。何かで返してやらなければ、と思う。

渋谷の『かまどか』で打ち上げ。ツルちゃんは、この店の釜飯が好きで好きで、なのだそうだ。入ってまもなく他の役者、スタッフも集まり出し、乾杯。あぁルナ恒例の、立ち上がって全員のとこ回る乾杯も。佐々木輝之は受け付け手伝いの美女に挟まれて
「うぉぉ、セックス・オン・ザ・ビーチ!」
と、わけのわかんないことを言っていた。ツルちゃん、渡辺(一)さん、NC赤英などと食べ物話。セキフェの話でみんな驚愕していた。
恵理さんと赤英が子作り談義していたのも面白く、シヴさんに声を褒められたのは嬉しい。金沢の開田さん個展のポスター、みんな欲しがって大騒ぎ。私もサインをみんなに求められる。

圭介、曰く
「オレも役者だからあの役にプレッシャーはないですよ。ただ、唐沢俊一の代役ってところで死にそうなプレッシャーでしたよ!」
と。可愛い奴だなあ、とつくづく。みんな拙い自分を受け入れ、喜んでくれる。大入り袋あったり、写真渡しあったり。大入り袋で私は
“怪演賞”。なにより嬉しい。そう、オレは芝居をやりたいのではない、“怪演”したいのである、と今更に気がつく。

酒が回ってきて、坂本ちゃんに乳首揉まれたりしたが、まだ荷物置きのスタッフが戻ってきてないので、開田さんやrikiさん、はれつさん、オノ&マドが帰ったあとも残る。最後に今回のブレイクスターである岡っち帰ってきて、みんなで大拍手。迷惑もかけたがまた、この解放感が実に実に楽しい。酔い覚めの水の魅力である。これを知ってしまったらしばらくは抜けられないだろうという、嬉しくも嫌な予感もする。この陶酔感に対抗するには、よほどのものを持ってこないとダメである。かつての自分の失敗も思う。

4時近くに明日のこと思い、辞去。近喰くんと一緒にタクシーで。酔ったコンちゃん、私に何度も
「今日のカラサワさんの掛け声なら、倒れた劇一も起き上がりますよ!」
と言う。仕事の凄まじい兼ねあいの中出演した舞台だったが、出て良かった、と思う。頭の中に、まだ主題歌がグルグル。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa