裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

水曜日

このアメーバ男はなかなかの頓智者でございましてな。

このアメーバ男はなかなかの頓智者でございましてな。

朝8時半起床。ど鬱な気圧である。入浴、服薬。麻黄附子細辛湯に頼る他なし。9時朝食、カボチャスープ、オレンジ小一顆、イチゴ4粒。『特ダネ!』でNPH(正常圧水頭症)とその治療を特集していた。髄液を検査のためほんの30滴ほど抜いただけで、15分で歩行困難が解消された70代後半の老人など、劇的な改善例がいくつも紹介されていたが、NPHはぼけの原因としてはまれなものと言われているはず。こういう映像を流すと、変に期待してしまう認知症患者の家族が出はしないか、心配になる。

新聞に清水の舞台から飛び降りて死亡した男の記事。実際あそこは自殺志願者がよく飛び降りるらしいが、実のところ確実に死ぬには高さ不足で、自殺の達成率はわずか15%に過ぎないという。この男は見事死ねたので記事になったものか。

室にもどり日記つけなど。ネット、悪気はない(むしろ好意)なのだがこちらの気分を淀ませるものなどあり。苦笑。『社会派くん』サイト、号外開示。冒頭のリードで
『猟奇の社怪史』紹介されている。
http://www.shakaihakun.com/data/

安達Oさんのmixi日記で、快楽亭のことが。例の心臓騒ぎの一件で足が弱り、添え木をつけねば歩けぬ状態らしい。しかも胸の骨にひびが入っているのが発見されたとか。牛乳嫌いで野菜嫌い、運動嫌い。カルシウムが慢性的不足でまだ中年なのに骨粗鬆症なのである。そのくせ、知りあいがカルシウム剤を贈ったら
「まずい!」
と怒って飲まなかったとか。困った男だが、これぞ芸人、という気がして拍手もしたくなる。芸人は健康法など見向きもせず好き勝手に生きてのたれ死ぬもの、という一種の反骨の美学のようなものがそこにはある。来月開催のトンデモ本大賞では、万が一のことを慮ってゲストの芸人さんにも保険の加入を勧めている。それは大事かつ必要なこと、とは理性でわかっていても、私の中の“寄席芸人”という存在のイメージとは相容れぬのである。

弁当つかい(菜はタラコと卵焼き)、家を出る。新宿東口椿屋珈琲店で眠田直さん、バーバラ・アスカと打ち合せ。楽工社のアニメーション本。うーん、出版社側の意向とこちらのイメージとの間に、ちょっとまだ乖離がある感じ。完全な初心者向け入門書も書けと言われれば書けるが、唐沢俊一/眠田直にそれを読者が求めるか、ということと、そういう本がと学会シリーズの中に入ると浮かないか、ということがちょっと気になる。バーバラの作る章立て案を見てからもう一度内容を詰めたい。刊行予定時期が案外早いのも不安材料。

打ち合せ中、向かい側の席に上野昂志氏の顔を見てちょっと驚く。ゆうべDVDで見た『殺しの烙印』の特典映像で、鈴木清順監督にインタビューしていたものを見たばかり。ひさびさのダイレクトな西手新九郎。

眠田さんと別れ、バーバラと渋谷に向かい、東急ハンズに行く。家具売り場でオノと待ち合わせ。事務所に置く接客用のテーブルを選ぶためだが、そもそも置いてある数が少なく、気に入ったものなし。店員さんに聞いたら
「そういうのはロフトさんの方が」
というので出て、ロフトに行く。最近はこういう風に他店を紹介するのが許されているのだね。しかし、ロフトにも目ぼしいもの無し。詮方なく、また日を改めて大塚家具にでも行こうと決める。

歩き疲れたので『プリムローズ』で三人でコーヒー。なんだかんだ雑談。事務所にもどって、メール数通、それから東急エージェンシーとの打ち合せ用資料など作成。案外バタバタ。

5時、時間割にてエージェンシーK口さんK條さん。猫三味線イベントの件。新年度の企画というのは、どこの会社もシステム変更などでドタバタしていて、なかなかプロジェクト進行せず、“これで決定”というようなスッキリしたものがなくて、これまでの方向確認と互いの現状の報告、というあたりに終始した感じ。今日の天候みたいなもんだな。とりあえず、こちらの企画のみ手渡して、K口さんに個人的にはウケるが、果たして会社本体はどこまで乗ってきてくれるか? 人的配置の変更とその理由などをK口さんに説明。これもまたイヤなこと思い出させて気分を落ち込ませる。

事務所に帰り、ガスエポック原稿。どうもやることなすこと半チクな日であったが、これだけはなんとか読んで気分のいい原稿が書き上がる。オチも結構。編集部宛メールして、急に蕎麦が食いたくなる。書いた原稿が蕎麦のことだったからで、その単純さに自分で呆れる。しかし食欲あるのは結構。

タクシー飛ばして新宿二丁目、へぎそば昆。お母さんに
「あら先生一人? 珍しいわね」
と言われる。時間がもう9時半過ぎなので大丈夫だろうとK子を電話で呼び出し。例によってぶつぶつ文句言いながら来る。干し豆腐あえもの、あなごの柳川風、イカ一夜干し、湯葉ポン酢などで熱燗数本、最後に焼酎の蕎麦湯割。〆にへぎそば。食べたいときに食べたいものが食べられるのは幸せ。外人客が来ていて大いに盛り上がっていたが、そこの背の高い、いかにも外人顔の女性があぁルナの乾恭子にそっくり。外人役をやらせるべきかも。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa