裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

12日

金曜日

虎屋、虎屋、お前は虎屋になるのだ

虎屋本舗先代社長の後継者への遺言。

朝8時半起床。急いで入浴して、母の室で朝食。青豆のスープ、イチゴ数粒、オレンジ小一顆。レモン汁とシイタケ末入りトマトジュース。新聞にイラストレーター、中野豪氏死去の報、大腸がん、50歳。前から、一コママンガ調の、アイデアにあふれたイラストを描く人だなと面白く読んでいた。『交番の裏は闇』シリーズで強烈にその名前と顔が結びついたが、私より年上とは知らなかった。幅広く活躍していた人でオタク系から政治モノまで、守備範囲がとにかく広い。いずれどこかで一緒に仕事をしてみたかった一人である。残念。

ゆうべの平山亨トークの感想陸続。かなり評判はよかったらしい。私も日ごろの鬱っ気を吹き飛ばせた楽しい一夜だった。美潮さんからマイミク願いが届く。そう言えばミリオン出版『猟奇の社怪史』の感想もあちこちから届く。贈呈分がもう届いているらしい。私もまだ見ていないのだが。

メールでオノと今日の予定やりとり。実は『ポケット』のI井Dが過労で倒れ(みんな曰く“一人暮らしをこじらせて”)今日は彼抜きで二本録りになる(朝方mixiをのぞきに来ているのでまあ大丈夫だろう)。それと、TBS労組がストに入った場合は海保さんも使えないので、収録は明日回しとなる。はなまるに海保さん出ていたので大丈夫とは思うが……。

日記つけ、ゲラチェック(『フィギュア王』)一本やって、なんだかんだで12時半
になってしまう。1時から時間割で打ち合せなのだが、3分で弁当(シャケバタ焼き
とポテトサラダ)掻き込んで、出る。道、幸いにして空いていて、なんとか時間通り
に到着。猫三味線製作委員会打ち合せ、エースデュースKさんと委員会Sくん。

まずは業界誌用広告の図案を確認し、今後の展開、あと雑誌をどこか宣伝戦略に組み入れたいという話で。ここまでサクサクという感じで進んできたが、さていよいよ発売間近、という段になると、実際の行動となるのでいろいろクリアしなければならない部分、多々。基本方針をもう一度私の方で提示し、またいくつかのところにつなげるために動くこととする。

1時間ほどで終えて(来週早々また打ち合せする)、事務所に。開田さんからメールあり、金沢21世紀美術館との打ち合せについて。さすがこの季節になると、いろいろ動き出すなあという感じ。『猟奇の〜』のお礼メールに“エネルギッシュな活躍でうらやましい、そのエネルギーを浴びたい”などと言ってくださった人がいた(その方も業界で一、二を争う忙しさの人なのだが)。昨日の平山さんの言葉
「仕事ってのは、やれるときに無理するくらいやっておかないと、あとでやりたくても出来なくなってしまうんだ」
は本当に身にしみる。

『東京人』インタビュー、インタビュイー変更の件で電話打ち合せ、それと『週刊プレイボーイ』インタビュー依頼。連載終わってもこういうところでまだつながりが続くのは結構。原稿まとめ、トテカワYさんに渡す新書原稿の前書きのみ、メモっていたものを継ぎ合わせる。少し前書きで内容をバラしすぎな部分なきにしもあらずだがそれは完成後に手を入れればいいことだろう。10枚ほど。

時間割でYさんに原稿渡し、打ち合せ。一心に原稿に目を落としている表情がかわいくてかわいくて。そのあと、今後のスケジュールなど話す。TBSストの話になり
「御社には労組などないんですか」
と訊いたら速攻で
「ないです!」
と。『猟奇の社怪史』進呈。

事務所に帰ったら『一乃谷』から山菜がどっさりと届いていた。かたじけないが、さて、どうやって食べよう。支度して5時、家を出て、赤坂。腹ごしらえにオノとラーメン屋に入る。なんか出来立ての店らしく、倉田真由美そっくりなお姉ちゃんが“営業中”の札をかけるフックがなかなかガラスに貼り付かず苦心していた。テーブル、4人がけが3つに2人がけが1つのこじんまりした店で、奥の厨房がこんなコンパクトな店にしては広い。たぶん、前に別の店が入っていてつぶれたのを居抜きで買って改装したのだろう。ラーメンはまあまあ。ここの経営者らしい(?)おじさん二人が隣のテーブルで会話していたが、でっぷり太った体格、短く借り上げた頭髪、どういう趣味だそれは、というスーツ、やたらかかってくる携帯、と、ヤクザを絵に書いたような二人。ラーメンの味よりそっちの方が興味深く、店を出たとたんに
「あれ、ヤクザだよな?」
とオノと熱く会話。昔は赤坂のここらはヤッカン通り(ヤクザと韓国人しかいない)と言われていたものだ。バブル崩壊で地代が払えなくなったのでどちらも大久保の方へ移ったが、景気回復でまた戻ってくるのか?

スタジオ入り。ミリオンのYくんがいて待っていた。今日の2回目の収録分で『猟奇の〜』のプレゼントをするため。もっとも、急遽2本収録になったので、仕事がいま修羅場だそうで、今日はただ持ってきただけですぐ帰る。気の毒に。

エレベーターで上がったらウッチャンが降りるところ。スタジオ入り、I井くんは今日もう退院して、今、家でイチゴ食べているところだとかで安心。海保さんもスト回避で普通にいる。代理DのS川くん、イニャハラさん、海保さんと一時間ほど雑談しながら内容を固めていく。つい、自分のお気に入りの店ばなしから吉祥寺ばなし、下北沢ばなしになるが。あと、東京タワーのすぐ近辺に住んでいる人の家ではTBSは電波状態が悪くて入らないらしい。ウチも仕事場はNHKのすぐわきだが、NHKだけ受信状態が極めて悪い。

今日の初回のテーマは“眼鏡”だが、話題豊富なため、今日は眼鏡で2本録りでいこうと決定。しかし、こういう風にその日にその日の話題を決める場にはモバイルのパソコン(出た話題で検索をすぐかける)が必須だな。

収録開始、盛り上がったんだかなんだかわからないが、そこらへんが微妙なところがこの番組の味だったりする。いくつか正確さを確認しないまま話してしまった話題があり、ちょっと後悔。あと、2回収録は1時間番組をぶっつづけにやるよりずっと疲れる。テンション高める山を2回、自分の中に設けないといけないからだろう。

名物(?)ラストコント。海保さんの度胸というか、毎度イニャハラさんがオトナ向けのものを書いてきても、絶対逃げないでチャレンジする。看板女子アナとしては驚異の順応力。必ずしも声の演技がたくみなわけではないのだが、天性の魅力がある。
ポッドキャスティング収録も無事終わり、プレゼント用の本にサインしてからイニャハラ、オノと打ち上げ。赤坂通り商店街の串焼きの店に行く。名物のつくねコースとイカワタのニンニク焼きなどがおいしい。I井Dの病気の話、次の収録からアメリカン・ジョークを冒頭にのっけようという話などいろいろ。オノがやたらうれしそうにはしゃいでいた。彼女のリクエストでイニャハラさんに、某不倫スナイパー女編集の話をする。こないだ中野のアニドウのあとの飲み会でこの話を披露したらオノがやたら気に入って、“センセイ、あの話イニャハラさんにしてあげてください”と。古典落語みたい。12時過ぎまで飲んで、帰宅。風呂入ろうと思ったが体力続かず轟沈。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa