裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

土曜日

調教だよ、おっ母さん

 久しぶりにムチならし親子でプレイの嬉しさに。朝7時起床、入浴して日記つけなど。8時朝食、果物切れたとて醤油かけた目玉焼き一ヶ、リンゴのかけら二片。目玉焼き、醤油かけるという下品なところがかえってなんともよし。卵というもの、周期 的に好きになり毎日食べたくなる。最近はその“好き”の周期。

 企画メモいろいろ見直す。すぐモノになりそうなものあり、まだまだ練り直しが必要なものあり。この歳になると、惰性でもそれなりのものが出来る。20年同じことやっているとイヤでも人はプロになる。しかし、自分のこれまでのカラを破って新しいことをするためには、あえてそのプロの技術とか、経験値とか、あと常識、甚だしくは業界の礼儀とか良心とかいうものまでを意識してかなぐり捨てることも、必要になってくる。三谷幸喜が“新しいものは全て素人っぽい連中がつくる”と言っているが、これは至言だ。プロになることは大事なことだが、それは反面で世間をスクラッチする反逆心の鈍磨につながる。その業界全体に世間の感心が薄れたとき、プロの世 界というのは案外弱い。余人の目を驚かす新しい発想が出にくいからである。

 11時、家を出て新宿三丁目で都営線乗り換え、半蔵門。古書会館にて趣味の会古書市。若い女性が多いじゃないか、と思ったらどこかの大学の社会見学らしい。混雑するだけで迷惑な話である。カバン受け渡し所が長蛇の列になるし。もっとも、こういう風に一般の人にマニアの生態を公開することは積極的に行わなければいけないの だろう。窓口というか、広報は常に必要。

 趣味の会はホント、雑多な品揃えなのでコレと言った大物はないが、あっちで一冊こっちで二冊と買ううちに案外の大荷物になる。それから、ちょっと目当てをつけていた某店。先日足を向けたときには閉まっていたんでつぶれたか、と心配していたが無事開いていて、目当てにしていたモノもゲット(具体的に書くと値が上がる可能性があるので書かない。狭い世界なのだ)。まあ、お値段もかなりいったが、これは品 薄な分野であって仕方ない。

 昼飯はいもやで天丼かな、と思ったらちょうど昼時で長蛇の列。路地の奥にある定食専門のいもやに初めて入る。海老天定食。うまいがやはり昼には天丼で喰いたい。 ちょっと私的には失敗。半蔵門線で帰宅。

 仕事場で疲れてしばし横になる。母が掃除に来たので起き出す。『FRIDAY』四コマネタ、本家『トリビアの泉』でいいネタが使われてしまっているのでハズすのに苦労。それを送ってから週プレ『名もニュー』の対談まとめ。オチへの誘導に頭を ひねる。 軽く仕事二本、のつもりがかなりの労働量に。週プレMくんから、来週月曜の対談&写真撮影の折りに風太くんに関してコメントを、という依頼もアリ。5時半、メールして品川へ。村木藤志郎&高橋奈緒美のユニット『フィールドファクトリー』ライ ブ。今回はそれに関口誠人さんがコラボで加わる。

 品川駅港南口は降りるのが久しぶりで、駅で延々歩くが出たらすぐ住所の区域で、そこをぐるりとひと回りしたら会場のライブハウス『カミカゼハウス』すぐ見つかった。ただし5階でエレベーターなし、というのに驚く。ふだんはダーツバーであるらしく、ステージの前には椅子もなし。オシャレではあるがクタビレる。

 座長・関口さんたちに挨拶、スタッフのTくんや金沢柱くんのいる席に行く。カウンターにはぎじんさん、堀有機さんの顔もあり。関口さんファンでこないだの西荻の読み屋ライブにも来たという女性二人組から、あれ以来レトロエロにハマッています と言われる。

 あぁルナの橋沢さん、島さん、おぐり、みずしなさん、日本橋ヨヲコさんなども来る。みずしなさんの誘いで漫画家さんたちも来ているよう。最初に上がったAYAOという巨体の人、本職は『笑芸人』副編集長、だとか(!)。大阪のヤクザを歌ったブルース、麺類から人生をたどるブルースなど、生活感あふれる歌が面白かった。

 さてフィールドファクトリーは、座長のねらいか、いい具合に力が抜けていて、気軽に聞けて結構。奈緒美さんの歌声をナマで聞けて満足。お気に入りの曲、『僕のことじっと見つめていたあの日の君』(『悲しみにてやんでい』のテーマ)は何度聞いてもジンとなる。まだ観客の目でうわの空にハマって見ていた純真なころの(?)自 分を思い出す。

 そして関口さんの『天河伝説殺人事件』。奈緒美さんが中森明菜をカバー。名曲だね、これはやはり。
「結婚式に歌ってくれと注文されるんだけど、曲名が曲名で……」
 と関口さん。おぐりが演奏終わったあと関口さんに
「歌詞がいいですね!」
 と、意地悪キャラなのか天然ボケなのかかましていたのに腹の中で吹き出す。

 それにしても関口さん、
「ボクはNGナシですから」
 と、SMバー通いのこととか体型の変化のこととかを平気で口にするのがある意味この人の凄み。トリのBabooshkaというグループの曲に、丁寧に感想を書き付けていたのもこの人らしい。こういういい人ほど苦労する。なんとかしてやりたいと母性本能みたいなものを感じる。今回の幻冬舎のイラストをとにかく、そのキッカ ケにしたい。

 終わって打ち上げに。ぎじんさんや堀さんも誘おうと思ったのだが帰ってしまったようなのは残念。橋沢さん、音楽業界人でもないのに、今回の出演バンド全員顔見知りというのが驚異。打ち上げは魚民だったが、品川ってところの居酒屋は土日はヒマ で、人手もないらしく、料理出るまでが遅いこと。

 みずしなさんから次の『うわ注』コピー見せてもらう。紀伊國屋での私のアガりっぷりがネタにされていて苦笑、失笑。来年の紀伊國屋は『ただいま!』の再演という大胆な試みだが私の役は果たしてありやなしや。座長が開田さんのポスターにこめら れていた意味を繰り返し絶賛していた。

 Babooshkaのメンバーの一人が阿久悠さんの息子さんだそうで、なるほど正面から見るとソックリ。音楽業界も“だれそれの息子、娘”が多いところである。12時ギリギリに出て、山手線で新宿まで。関口さんは渋谷で井の頭線に乗り換え、 最終まで6分しかない。果たして間に合うか心配だったが帰宅したら
「乗れました」
 のメール来ていてホッとする。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa