裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

土曜日

へぇの中の懲りない面々

 日本人男性が一生のうちどれくらいの期間であっても刑務所に入る確率は、40分の1である。朝7時起き。入浴、朝食。冷ポタと果物。母は今から『はなまる』のおめざの心配。特番より話題になってるんじゃないか。メールチェック、週プレMくんからいくつか。あと道新Kさんから、次回〆切の件。徐々に連休モードから日常へ世間も復活。

 俳優・声優の小林勝彦氏死去。享年68とは早すぎ。もっぱらテレビ時代劇の悪代官としておなじみだった人だが、60年代の大映京都作品では地味ながら二枚目で通していた人だった。代表作と言えばなんといっても私的には森一生監督の『怪談蚊喰鳥』の孝次郎役。小唄の師匠・菊次(中田庸子)の色男で、年上の女に惚れ込まれているが、実は彼女をいい金づるくらいにしか考えていない、ドライで身勝手な、お面だけいい軽薄男。

 しかもこの男キレやすく、菊次への押し掛けパトロンとなった按摩・徳の市(船越英二。名演!)に嫉妬して彼を叩き出したかと思うと、再びやってきた徳の市に五十両の金と引き替えでどうだ、と持ちかけられ、すぐに菊次を譲るという証文を書いてしまい、結局、金など払う気のない徳の市に、そのままずるずると居座られることになってしまう。

 ついに孝次郎は菊次と謀って徳の市を毒殺するが、その死体を埋めた井戸に……ということになるのだが、怪談でありながらラストにどんでん返しのトリックが仕掛けられて、人間の欲望の愚かさがテーマとして呈示される(文芸怪談、などとこの作品が称せられる所以である)。菊次、徳の市、孝次郎と、三人三様の欲望とその愚かさが描かれる中でも、もっとも愚かさを際だたせ、自ら仕掛けた罠に自分がはまって滅亡する、小物悪党の救いようのない姿を、小林勝彦は実に自然に演じ、観客誰しもの中にある小悪党的性質に共感を抱かせたのではないか。演技的には船越徳の市のアクの強い芝居に食われてはいたが、その一筋縄でいかないアクの強さに対比される、薄っぺらな悪党演技はなかなか光っていた。まあ、小林勝彦という名前を認識しているのはかなりのマニアに限られるとは思うが、顔だけはテレビの通俗時代劇のおかげで認知されていると思う。その人も、若い時分にはこんな役をやっていた、という興味でもし行きつけのレンタルビデオショップにあれば、ぜひ借りてみていただきたい。内容的には決して損はさせない出来なので。

 11時出勤、TBSから『奇跡特番』の台本FAXされているのをざっと見て、週プレにかかる。今回はテーマが“猫”なので、おぐりの対談でのセリフで使える再録部分が格段に多く、楽っちゃ楽なのだがそれだけに構成がまたいろいろ大変。1時半完成、Mくん、おぐり、みずしなさんにそれぞれメール。

 それから出て、道玄坂富士そばで冷やしタヌキ一杯すすり半蔵門線で神保町。と学会東京大会会場下見だが、せめて一足なりと神保町に足跡をつけて置かないとわがアイデンティティにかかわる。二件ほどに鼻先つっこみ、一点買い物。

 それから急いでまた半蔵門線で一駅引き返し、九段の千代田区公会堂。しら〜さんと途中一緒になり、迎えに出ていたIPPANさんの誘導で裏口から入館。追っかけるようにおぐりも来た。上のロビーにすでに藤倉さん、K子、皆神さん、金子さん、FKJさん、気楽院さん、K川さん、開田さん、あやさん、本郷さん、駿河さん、S井さん、じんさん高橋のび太さん、狩谷さん、I矢さん、談之助さん、それに声ちゃんなど来ている。声ちゃんとおぐりに本番と同じコスプレ試着してもらう。声ちゃんは兎、おぐりはアリス。

 アリスの服装はいいが金髪のウィグは安物でまるでダメ、
「楽屋でK子さんに“二丁目のオカマかと思った”と言われましたー」
 と。開田さんが 「地毛の方がずっといいじゃない」  と言うのでとらせてみると、なるほど衣装だけでちゃんとアリスに見える。そっちでいくことにする。

 椅子と教壇を用意して並べてみる。あっちやったりこっちへやったり試行錯誤してなんとか形を決める。会場の使い勝手はすでに去年でわかっているが、今年は紙芝居もあって、機材の配線が問題になりそう。FKJさんが中心になり、I矢、S井、K川、高橋などのメカニックな面々が打ち合わせしている。

 こっちは司会の出と入りを距離で確認。1時間ほどで何とか感じをつかむ。残りの話は九段会館の喫茶店くだん亭で(仮名で書くとどうしても小松左京のあの小説を思い出すが)。そこからバスで(!)東新宿へ移動、『幸栄』で打ち上げ。

 暫くご無沙汰のうちに馬肉系メニューがお目見えしていて、桜タン、桜カルビなどがあった。馬肉には目がないのですぐ注文。
「さくらタン萌え〜」
 などとオタクのお約束でさわいでいるが、味は桜カルビが抜群。思わずヒヒーンと叫んだほど。

 ここからS井さんの奥様が参加、和央ようかカレンダーいただく。有り難し。また植木さんも遅れて参加、おぐりが
「あ、ここからこの店がシャレの洪水に」
 と言うので
「植木さん、何かリクエスト!」
 と言うと、ホッピー飲みながら
「♪このままずっと死ぬまでホッピー」
 と。さすが。

 皆神さんとTBSの件、何故かこれもやはり“おめざ”のことに。そんなにみんなおめざ気にしてますか。おぐりが声ちゃんのしぐさなどを観察している。なにしてんの、と訊いたら
「ちょっと美少女の仕草研究中です」
 と。声ちゃんにもおぐりのアドリブのノリなどを研究してもらいたいと思うが。

 2時間の予約時間だったがさんざ食って飲んだ。豚骨タタキ、ネギタン塩、レバ刺し、豚足、ゲタカルビ、ツラミ、ボンジリ、オックステールなど、ほぼメニューを制覇したような感じ。I矢さんとおぐりと私の三人で冷麺、コムタン(テールスープとライス)、それに明太子ビビンバを分け合って食べた。タクシーで帰宅。ちょっとメールして読書、キリスト教関係の本数冊拾い読み。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa