裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

土曜日

かぐや姫のお爺さんは竹を割ったような人だ。

 お婆さん・談(このシリーズつまらないな)。朝4時起床、ネットでミクシィに書き込んだり。5時に抱き枕抱えて再度就寝。抱き枕というのはどうしてこう心地いいのか? 6時半、再度起床して風呂。セロリの芯と茹でブロッコリ、トマトの冷ポタにバナナ。新聞一面にチェチェンのテロリストの学校占拠が軍の突入で、人質の生徒たちに多大の被害を出しつつも解決との報、それはいいが、テロリストたちに裸にされた小学生たちの写真がモロ。ロリ系の人たちにはこっちの方がパニックだったので はないか。

 少しマジにものを言えば、今回の事件でもっとも得をしたのはプーチン大統領であろう。前任のエリツィンのときから、ロシアの指導者は、チェチェンを弾圧し、追いつめられた彼らが凶暴なテロリストと化すことでパブリック・エネミーとなり、それと戦う強いリーダーである自分の必要性を国民に認識させることで合法的に絶大な権力を自身に集中させることに成功してきた。実のところ、反政府派による過激活動というのは、政府側の長期政権維持には不可欠な要素でもあるのだ。テロ行為と戦うという姿勢は、指導者にとり何よりもプラスとなるイメージを与えられるからである。チェチェン独立運動がいかに正当性を有していたにしても、その理念をテロという形の行動でしか表明できない限り、それは自分たちチェチェン人を抹殺しようとしている者をしか利さない。しかし、チェチェン独立主義者(に限らず多くの民族独立運動家たち)は、すでに過激なテロに走ることにしか、自分たちの存在意義を見出せなくなっている。あと、残されているチェチェンの希望は、ロシアの経済や政治がいつまでたっても安定せず(その可能性は大きい)、プーチンが自分たちを必要悪としてその存在を認め、完全な民族浄化(ジェノサイド)に走らず、お互い小さな規模での殺し殺されを続けながら実利とプライドを取り合って共存していくことだけだろう。悲劇的なお話ではあるが、しかし、そもそもの始まりからの状況下において、夢物語みたいな平和の実現を唱えるよりも、こちらの方が現実的に双方のためなのは明らかなのである。人間社会は所詮、そんなバランスで成り立っているものなんである。

 バス、20分に来る。乗って出勤、今日は竹のあとがき。これは以前同人誌のあとがきとして書いたB級感覚論をほぼそのまま使えるので楽。島さんからメールで返信あり、打ち合わせ兼飲み会、こちらがいくつか出した案のうち、下北沢『虎の子』が向こうからの希望とのこと。さっそく虎の子のキミさんに電話して予約。

 コミビアの件について佐藤WAYAさんにちょっとメール、それからエイバックの岡さんにもこちらの意見、基本的にまとめたものをメール。竹書房アンソロ編集のNさんから、ゲラを3時ころ持って伺うとの電話。ではその前に、と昼飯を食いに外へ出る。どこへとちょっと迷ったが、出来るだけ脂分の少ないものを、というチョイスで兆楽のつけ麺。シンプルなもの、と思っての注文だったが、こちらの思惑以上にシンプルな一品で、ネギとおろし生姜以外の具は、キウリ繊切り、錦糸卵、焼き豚細切 りが、いずれも数切れずつ、というあっさりさ。

 仕事場に帰ったら、それほどの暑さでもないのに、全身から汗が噴き出てきて、Tシャツまで全部着替える。台風の接近で、気圧の乱れが最悪の状態になっている。横になると、何度も気絶同様になって眠ってしまう。3時、Nさん来て、ゲラを受け渡される。今日これでまえがきとあとがきが出たので、後は章扉と、各収録作品の解説のみとなる。なにか、思ったよりスムーズに進んでいる気がするのは気のせいか。気 のせいだろう。

 FRIDAYのコラムを書き上げて、講談社にメール。5時半、タクシーに飛び乗り、ひさしぶりに新宿のサウナ&マッサージ。さっきの汗で、これは代謝がうまく機能しなくなっているとふんだので。到着したのと入れ違いに雨が降り始める。汗をサウナでドーッと(実際、そんな感じで出た)流し、体の内外の水気のバランスを取る感じ。マッサージの先生、足にむくみがあったのでそっちを先に揉んでとったら、肩や背中もよくなってきた、と言う。まあ、整体のそういう理論はプラシーボ効果に過ぎないもの、とは承知しているが、聞くといつでも、なかなか精巧なメカニズム理論に聞こえるのが妙。帰りに会計をしてもらっていたら、そこに見覚えのある顔が。なんと、札幌で私が処方箋のパソコン打ちをしていた某眼科病院の院長先生だった。久闊を叙して
「なんです、学会で上京ですか?」
 と聞いたら、その通りだという。向こうは今の私を、どういう評価で見ているのであろうか。

 雨、まだしげし。中野までタクシー。待ち合わせ20分前に着いてしまったが、仕方なく『とらじ』に入り、生ビールのみながら母とK子を待つ。ほどなく二人それぞれ来て、焼肉で夕食、親戚や知人などの月旦いろいろ。タン塩、塩カルビ、塩ロースと、K子がいると塩焼き中心になる。唯一、味噌味の黒豚ホルモンというのを頼んだが、これは独特の臭みがあって、女性二人には不評。塩ホルモンというのを別個に頼んだが、なるほどこっちは臭みがない。豚足がすさまじく甘味があっておいしい。最後の冷麺は少し味が落ちた。練りカラシを頼んだら、ないと言われる。前はついてい たのに。

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