裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

金曜日

寿老人月影兵庫

 旦那ぁ、頭が長いねえ(焼津の半次・談)。朝、8時10分起床。夢の中で加藤礼次朗とずっとアニメばなし。昨日と引き続き、寝る前の光景を夢の中で延々とリフレインするような感じで、睡眠が全然脳の休養にならない。スイッチを落とせなくなってしまったような感じである。朝食、ホットドッグ、デコポン一個。新聞、阪神の大活躍を興奮気味に報ず。阪神が強い年は必ず日本に異変が起こるというが……。

 日記つけ、入浴。昨日午前中から3時ころまで、鼻が妙にムズ痒くなって参った。髪の毛が鼻の頭にかかっているのかな、と思い、無意識に何度もとりのけようと手をやるのだが、何もない。皮脂腺が内部から化膿しているのか、一カ所、赤くポツンと色づいている(腫れてはいない)部分があるが、これが原因だろうか。とにかく、気になって仕方がなかった。毛細血管回りの神経が、陽気のせいで過敏になっていたの かもしれない。

 12時半まで雑原稿。パックご飯を温め、昼飯。ハチメ一夜干し一片、梅干し、ツボヅケタクアンで。家を出て、曙橋井上デザイン事務所。河出の怪獣官能本の表紙回りの打ち合わせ。一昨日、打ち合わせで怪獣というタナトスと官能というエロスをどう表現したカバーにするか、とSくんと話し合ったときに、私がふと“じゃあ、女性を裸にしてボディ・ペインティングで怪獣を描かせたら?”といった案にSくんが興味をしめし、さらには“知り合いにモデルに使えそうな女の子がいます”とメールまでしてくれた。その子の面通し(まあ、顔は出さないが)も兼ねて。井上くんとは久しぶりなので、まさ吉のこともはじめ、雑談噴出。なかなか打ち合わせも進まない。アニドウのことなども出る。ボディ・ペインティングにすると、シャワー設備のあるスタジオ借りないといけないし、幻灯機で体に投影するというのはどうか、という案が井上くんから出る。女の子(某大の学生。各種ダンスをやっている他、アルバイトでヌード・モデルもしているとか)にちょっとシャツ姿になってもらうが、さすが、体の曲線が非常にクッキリと出ていて、投影するとその図の変形が面白いかも、と思う。とはいえ、ペインティングのグチャ、とした皮膚感覚も捨て難いところである。

 しばらく話して、2時半、事務所を出て、都営線で新宿、タクシーで帰宅。岸記念体育館あたりの躑躅、そろそろ満開。ここらあたりでは桜よりむしろ躑躅の方が目にまぶしく映る。料金、曙橋から直に乗ったのと変わらず。マンションがちょうど配水管工事中で、出る際に“しばらく断水します”とアナウンスがあり、帰宅したとたんに“今、終わりましたので”の挨拶。近代住宅は断水だとトイレが使えないという欠点がある。親父は大腸癌の手術後、五分おきに便意を催したというが、そんな状態の 人間がマンションにいたら、どうするんだろう。

 体、トテモ疲れている。仕事のせいでなく、睡眠があの長い夢のせいで妨げられているからではないかと思う。横になって、4時半まで目をつぶっている。起き出して原稿。マイクロフィッシュの書き足し分、バリバリとやりはじめる。2000文字、書き足す予定だったが、半分の1000文字あたりで、妙にカッチリとまとまった形になってしまい、これ以上は不要、という感じになる。ふうむ、と考えた末、“これ でいかがでしょうか?”とそのままメール。

 その後、またタクシー、新宿歌舞伎町ロフトプラスワン、くすぐリングス『まぼろしブルマー』。例により解説。表で神田森莉さんに会って挨拶、場内で亀頭たけるくん、くすぐり男爵、ぐれいす氏などに挨拶。選手控室に酒を一本、差し入れ。解説席でアナウンサー猫戦車マリィ氏、カンザキカナリさんに挨拶。いつも通りだが、今日は選手全員白シャツにブルマ姿、あるまいことか斉藤さんまでピチピチのブルマ姿という有様で、何か異様な雰囲気。マリィさんも最初からテンション高し。これで三日くらい徹夜仕事で、ハイになっているとのこと。試合スケジュールも確認するが、試合企画もノリが凄いことになりそうなものばかりで、どうも凄まじいことになるよう な予感が芬々。

 客は最初、やや足が遅かったがその後、陸続、という感じ。河出のSくんも来る。開田あやさん、銀河出版Iくん、福原鉄兵くん、常連のHさん。あとQPハニーさんにFKJ氏の姿も。FKJ氏に“アートアニメの翌日がくすぐリングスとは間口が広いですねえ”と言ったら、“カラサワさんに言われたくはありません”と。そらそうである、と苦笑。私にとって、スタレビッチのアニメも、女の子たちのくすぐりあいも、結局は非日常の興奮をもたらしてくれるもの、というククリにおいては(差違もそりゃ凄まじくあるが)同位のもの、なのだろうと思う。あと、珍客に品田冬樹氏。あやさん、河出のSさんが驚いていた。珍客と言えば、客ではないが平野悠氏が珍しく来店。上機嫌で私の手を握り、“いやあ、最高だよ、みんなこういう馬鹿なこと、よく考えつくわ!”と言っていた。後で聞いたら、『特ダネ!』のスタッフと一緒に来ていたとのこと。和解したのか。『特ダネ!』はただ来ていただけだったが、今日はテレビ、いつものCSの他にTBSまで来ていた。事前に“会場を映しますが、顔が出てはダメという人はモザイクをかけますのでおっしゃってください”とアナウンスあり。

 第一試合前の、男爵のブルマ姿から、会場にはもう異様きわまる空気がただよい、パン食い試合(お互い手錠をかけて、あんパンの中に入っている鍵を、食いちぎって取り出し、早く手錠を解いてくすぐりにかかる)から、宇多まろんが食いちぎったパンを客席の方にプッ、と吐き出し、観客が喜んでそれを拾って食べる、といったフェチ合戦の様相を呈する。キティはるかのポロリもあり、第一試合からこれか、という感じ。マリィさんは案の定飛ばしまくりで、こっちはついて行くのがもう、やっとの 状況。しゃべりのプロはやはり違う、と感服。

 その後も、牛乳を口にふくんでくすぐりあうとか、最前列のお客には災難なゲームが続く。もっとも、それを楽しみに最前列に陣取っているのだろうが。お玉競争試合(生卵をお玉ですくって選手の口に流し込む。くすぐられながら、卵を吐き出さずに飲み込むと勝ち)に至っては、見ていて胸が悪くなる。卵を用意した秘書のフジコくんが“私が産みました!”と言ったとたん、マリィさんが間髪を入れず“無精卵ですね”というのにはひっくり返って爆笑。最初は一個づつ飲ませていたが、後からはもう、二個、四個、五個、残った白身をボウルごと、とエスカレート、ロフトの斉藤さんが、女捨てての大奮迅。プロ根性に敬服。そして借り物競走では、もう観客巻き込んで大混乱。Iくんが壇上にウレシソウに引きずり揚げられていた。あと、プリンセスみゆきと宇多まろんの、リトマス試験紙マッチ(股間にリトマス試験紙を当ててくすぐりあい、試合後、どちらの試験紙の色がより変わっているかで勝敗を決める)も 平野氏じゃないが、よくまあこういうことを考えつくもの、という感じ。

 しかし今日は壇上の選手たちのテンションよりもむしろ、客のテンションの方が高い。選手の悪ノリも、それにひきずられている感じ。宇多まろんなど、おひねり箱を持って客席をいつものように回りながら、お客さんたちに“まあまあ一杯”と勧められて飲みすぎ、解説席の後ろで“もうダメ〜”とヘバっていた。それでも今日のまろんはノリノリで、可愛い子ぶりっ子のポーズや表情からいきなり女王様バージョン、それとプッツン娘へのめまぐるしい三変化、見事。トークではいきなり“カラサワさん、日記には書いちゃダメ!”とまたブチ切れトーク。ヤヴァな方に飛んでいきそうだったので、私とマリィで“そこまでそこまで!”と弁士中止。いやあ、現場にいた もののみの特権でありましたね、ああいうものが聞けるのは。

 ジェーン・マヤもがんばり少女バッファロー・ミユも、何故か体操着の上から亀甲縛りだった春咲小紅も、ゲストのミルサチカ、ミッチェル両選手もよかったし、プリンセスみゆきことベギラマのサービスのよさは、まさにドンキホーテ的安売り王の面目躍如。ただし、何か以前よりいっそうスキニーになったようで、手首足首のところなど、ちょっと痛々しさも感じてしまった。まあギャルショッカーでは蚊トンボ怪人モスキュート、などと名乗っているみたいだし、それがウリか。……で、何といっても今回のスターはマッドブラバスターLEE選手。モモ・ブラジルと一緒に“パイパン姉妹〜”とか言って剃り跡を見せるのに仰天したがもう、その後で白装束のパナウェーブ研究会のコスプレで登場して落語をやる(談之助の芸風ですな)。『まんじゅう怖い』のパロディで、くすぐり男爵を登場させ、解説席にいた男爵を選手たちがよってたかってくすぐり、電気あんまをかけるという趣向。私もおつきあいでおさえつけた。ちなみにこのときの出囃子は神田森莉先生の作曲。多才なことである。ソレでLEE選手、ラストで最優秀選手として“笑魂”マークの紙おむつを貰って履いたあたりから、もう……いや、さすがに日記にも書くのをはばかるが、TBSのレポーターの女の子が、露骨に引いていたのが可笑しかった。まろんも、ファンの差し出す手のひらをぺろーん、と色っぽく舐めたと思ったら、次の瞬間そこで火のついたタバコをジュッと揉み消したり。さすが女王様歴長いと、いろんなテクニックを身につけている。

 私の解説、後半はマリィさんのペースから一線を引いてポイントに絞るようにしてなんとか自分の土俵へ持ち込む。加藤梅造くんに褒められた。ぐれいす氏は、卵マッチなどで汚れたリング(ステージ)を掃除したりなんだりといったこともせっせとこなしていて、みんなエライなあ、と感心。カラサワ賞を設置したいので何か商品を、と前日にベギラマに頼まれていたので、腕のオモチャを持っていき、バッファロー・ミユ選手に進呈。ミユ選手、私のファンだということで、何かその腕をすごくうれし そうに抱きしめていた。

 最後はクジビキで、お客さんに選手達の履いているブルマや汗まみれのシャツまでプレゼント。亀頭たける(佐藤丸美)がなんと引退宣言。体の具合か、とちと心配になった。ベギラマに聞くと、いや、いたって元気ですよ、とのことだったが。選手たちはテレビのインタビューを受けたりなんだり。私も観客の人から握手もとめられたり、一緒に携帯の写真に入ってくれと頼まれたり。とにかく客のテンションがこれだけ高いイベントはひさしぶりであり、クタクタに疲れた、というのが正直なところ。とはいえ、頭だけはテンションが突き抜けた感じでギンギンに冴えている。阿部能丸くんが来ていた。アレ、いつの間に? と訊いたら、明日からの藤志郎一座の追加公 演、さっきまで稽古だったそうな。

 打ち上げはロフトプラスワンの入っているビルの五階の居酒屋。私もプラスワン歴は長いが、こんな店があったとはこれまでまったく知らなかった。いつもは選手たちが家が遠いので、と帰ってしまい、関係者以外の方が多い打ち上げになるのだが、今日は大変に人数も多く、にぎやかな打ち上げとなる(もっとも、男爵は参加しなかったけれど)。あやさん、QP氏、FKJ氏も加えて、なんだかんだと雑談。バッファロー・ミユが私と隣りの席で感激しているのを見て斉藤さんが、ほら、もっと近くに寄って! いいじゃないですかたまにK子先生がいないんだから! とそそのかす。彼女のテンションも異様であった。私も、ノドがかわいてビールをやたらに。あやさんが新品のデジカメで、ミユと私の写真を撮ってくれたが、そこに写ったわが顔の気味の悪さに愕然。疲れのせいで顔面筋肉が弛緩しているせいだろう、頬は垂れ、まぶたは下がり、顔全体が何か青ンぶくれた水死者みたいな有様で、いや、これはいくら斉藤さんに言われても、可愛い女の子にチョッカイなど出せる有様ではない。ヒー、という感じで辞去、すでに時間は1時過ぎ、FKJ氏の車で渋谷まで送ってもらう。狂乱の夜。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa