裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

木曜日

ティファニーで詔勅を

 このような異国の地の宝石店にて、陛下のお言葉をいただけるとは、恐懼感激措く能わざるところで……。朝、7時半起き。朝食は豆サラダ。莢つきのグリンピースをほぐし、ソラマメは一個々々皮を爪で切るようにして剥き、トウモロコシはバラしてあるのを使い(昔から、うちではトウモロコシは買うとすぐバラして小鉢にとっておいて使う)、大豆は缶詰を。これを茹でると、トウモロコシの甘味、ソラマメの快い青臭さ、グリンピースの実のつまった食感、そして大豆のもちもちとした味わいなどがミックスされた、大変に食べて楽しい朝飯となる。果物は種なしブドウ。皮ごと食べる種類だが、やや渋みあり。

 午前中に講談社Web現代、片付けようと原稿にかかる、が、自分のサイトにどうしたことか、接続できなくなる。困って、パイデザに助けを求めるメールを出したら意地悪なことに、出したとたんに回復した。日記更新のあたりで回線が混み合うのかもしれんと思う。そんなこんなで、2/3は完成しているのだからすぐに……とタカをくくっていた原稿に案外手間取り、1時40分までかかってしまった。ともかく、すぐメール。これでWeb現代はなんとかストックが二本、たまって一息つける。週刊連載でストックがないというのはいささかつらい状況なのである。

 昼はお茶漬け。金沢から貰ったヌカミソ漬けで作ったかくやのこうこ、イカの塩辛で軽く一杯。と学会年鑑シリーズの次の本の企画がやっと上がってきたので、その原稿の算段。だいぶ、発表後どこに行ったか、書庫なり仕事場の本の山の中なりで行方不明に陥っているものが多い。ブツ系で、これははっきり、人にあげてしまったことがわかっているものがあったので、ネットで販売先を探して、即、予約する。

『トリビアの泉』スタッフからメール。一応、私がブレーンになっていることを、著書のオビとかで謳うことはかまわない、という許可が出た。次の新刊からの著者紹介にはそのように書こう。テレビは契約の関係上いろいろ制約が多いので、いちいち許可をもらわないといけない。

 濱田研吾という未知の人から本が届く。同人誌で、『職業“雑”の男』という、徳川夢声の研究本である。差し挟まれていた手紙によると、『古本マニア雑学ノート』で私が夢声の本を集めている、というのを読んだ縁で寄贈してくれたらしい。とにかく、夢声関係の著書やレコード、映画、現在見られるテレビの記録など、克明に追っかけ、とらえどころのない“雑”の人間である夢声像に、この若い(28歳というのに仰天した)人が迫ろうとしていることに感動。しかし、この同人誌は、彼が進めていた夢声研究本の企画が、“夢声では売れない”という出版社の判断で頓挫したためであるという。せっかく、宮本武蔵ブームで夢声の朗読レコードがCDになったというのに、惜しいことである。

 体がだるくてたまらず、少し横になって40分ほど寝る。息苦しいというか煩悶というか、異様な睡眠となり、ひどい内容の夢をずっと見ていた。電話で起きたが、過呼吸気味でゼーゼー言っているのに自分で驚いた。もっとも、だるさは一応快癒。河出の『文藝』用の、寺山修司がらみのインタビュー原稿ナオシに入る。例によって、エエコトは一応いくつも言っているのだが、話自体にトリトメがなく、トッ散らかって収拾がつかなくなっている。これを、整理し、前後をつなぎ直し、例をもっと適当なものに差し替え、言い回しを変え、結論に手を入れ、とやっていくうちに大仕事となる。最終的には、400字詰め25枚相当というインタビュー原稿のほぼ全てを書きおろすに匹敵する仕事量となった。

 編集部になんとか完成したものをメール。そのあと、気が抜けて次の仕事にかかれず、ネットなどをぼんやりと見て1時間ほど過ごす。9時、神山町『華暦』。えらい混雑。以前、K子がここに紹介したアシスタントあがりの子はあまりの忙しさに耐え切れず、やめてしまったらしい。なんと情けない。K子は、自分が働こうかとまで考えているようだ……ここの賄いがおいしそうだから、とか。それにしてもここのママさんの口調とかは若くて可愛らしい。刺身はキダイ。体に黄色みがかかっているので真鯛に比べ商品価値が劣るようだが、味は真鯛より上かも。あと、肉じゃが、筍と帆立の木の芽焼き、おでんなど。うまくて安い。寿司の半分以下の値段でじゅうぶんに酔えるし満腹できる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa