裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

金曜日

チェンマイながらも楽しいわが家

 思い切ってタイに家を買ってよかったですよ。朝7時45分起床。朝食、サラダスパゲティ小一皿。果物はしなびたデコポン。産経新聞に“中島らも容疑者の作品連載中止”の記事。後追いでこういうところまで書くところが凄い。集英社の連載は再開未定状態だが、朝日新聞社『論座』のエッセーは打切、とネットニュースではっきり言っていた。新聞社系はまあ、仕方ないか。朝日学芸文庫の『明るい悩み相談室』は どうなるのだろう。

『明るい悩み相談室』に関しては、まだモノカキ駆け出しの頃、売れ筋エッセイの勉強と思って買って何度も読み返した覚えがある。イラストがまついなつきだった(と思った)が、その中に、本文でソーラン節について書かれているのに、イラスト中の人物が“エンヤートットエンヤートット”と歌っているのがあり、些末なことだとは思ったが一応、“これは違うのではないか”と編集部宛に葉書で書いて出したら、担当の人から封書で返事が来て、“まさにその通りで、恥ずかしいミスで申し訳ありません。唐沢さまはじめ読者の皆様にも多大なご迷惑をおかけして云々”と書かれていて、イヤそんなご大層なことではないのだが、とこっちで驚いたことがあった。で、“重版等の際に必ず訂正をした上で一冊お送りいたします”と末尾に記されており、ははあ、プロのモノカキと出版社というのはわずかな事実誤認の指摘にここまで責任を持って対応するのか、やはり違ったものだ、と感服したことがあった。そしてその数日後、本当に朝日新聞社から書籍小包が届いて、もう重版したのか、人気作家は凄いな、と思って開けてみたら朝日新聞出版局の発行図書目録だった。これは指摘のお礼なのだろうか、それともこっちをいいカモと思ったのか、と首をひねった。それきり重版分も送られてはこなかったし、訂正も果たしてされたんだかどうだか、確認していない。……私は別にこう書いたからと言って、朝日の違約に怒っているわけではない。むしろ、出版業界の一員としてやっていくことに対して、かえって気分が軽くなったのを覚えているのである。

 午前中は捜し物で過ぎる。11日の紙芝居のときに使うネタで、明日から10日の夜まで能登旅行なので、今日じゅうに探しておかねばならないもの。果たしてみつかるだろうか、と胃が少し痛んだが、無事見つかってホッと息をつく。昼は新楽飯店でホタテ煮物定食。お母さんが新しい店員の子に“ウチの賄いはおいしいノヨ。だからウチに来た子は大抵太るの。こないだまでいた子なんか、3ヶ月で5キロ太って、このままいたら大変なことになる、って言ってやめたノヨ”と自慢だかなんだかわからないことを。

 帰宅、アスペクトのコメント原稿をガリガリと。能登在住のファンのTさんから、能登着の時間を教えていただければお迎えにあがります、と丁重なメール。私は今回の旅行に関しては完全にK子と金沢のSさんまかせなので、K子に転送して、Sさんのところのホームページの掲示板で訊いてもらうことにする。昨日の日記を読んだらしい野沢くんからまた電話、松竹はどうもビデオショップを全店閉鎖するらしく、上野のショップの品揃えと値引率がまた凄いのだという。“こっちも行ってみる価値アリですよ”と言われるが、スケジュール上そこまでは無理。

 3時18分、アスペクト原稿1/3のみ、完成させてメール。それから連載原稿、フィギュア王11枚を約2時間半で仕上げて5時46分、編集部宛メール。さらにその後、特集コラム原稿800ワードを45分で書き上げて6時22分、同じ編集部に メール。ぜいぜい、と息をつく感じ。

 6時半、タクシーで東新宿、焼肉幸永。早川書房A氏、S氏のお二人との飲み会。本店、本店別館とも一杯で、先に到着したA氏と二人、新館(2号店)の方で待つ。ほどなくK子、少し遅れてS氏も来て、極ホルモン、豚骨タタキ、ゲタカルビなど食べながら、業界情報交換。なんか、いつも元・早川の女性編集者K嬢のことが話題にのぼる。いや、実にウワサの豊富な人なので。明日から旅行なので、今日は控えめにしておこうと思っていた(昨日も焼肉だったし)のだが、話はずんで楽しく、ホッピー3杯飲んで酔っぱらい、家に帰りついてから寝るまでの記憶欠落。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa