裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

火曜日

パンティードランカー

 廃人同様。朝、7時15分起床。と学会例会でつまらないギター漫談を聞かされる夢。朝食、豆サラダにモンキーバナナ。各ワイドショー、北朝鮮でなく梅宮アンナ離婚を真っ先に。思えばアンナ・研二の馬鹿ップルの顔が今の金正日の様に毎朝々々、テレビに流れ続けていた時代は平和であった。あのとき、識者たちは“国民はもっと政治とかに興味を持たんければいかん”と、無知をさらけだしたことを言っていた。太平の世というのは鼓腹撃壌、国民が政治むきのことなど知ろうともしない世のことを言うのである。

 昨日の『沖縄』の女の子のことを“せいたかのっぽ”と表現しようとして、“のっぽ”はまだ言うが、“せいたか”というのは死語かな、と首をひねった。K子が言うには、まだセイタカアワダチソウがあるから死語じゃないとのことだが、逆に言うとそれくらいしか使用例が思いつかない。佐藤さとるの『誰も知らない小さな国』の主人公の名前“せいたかさん”も、今だといやにレトロに思えてくる。“でぶ”は残っても“太っちょ”が消えた(ATOK12にも入ってない。“背高”はあるが)みたいなものか。

 10時、掃除のおばさん来。私は午前中は廣済堂のエッセイにかかりきり。『ウラグラ』で使わなかった原稿の再利用だが、7枚弱、書き直しているうちに全く違うものになってしまった。しかしながら出来はよく、自分でも“なるほど”と感心しながら書いているのが笑える。1時50分、印字したものを持って出る。55分にチャーリーハウスでパイコートンミン、5分で出たものを5分で食べ、2時5分過ぎに時間割で廣済堂Iくん。印字したものを渡し、以前の原稿フロッピーを整理してもらったものをもらう。もう今は、どこのDTP屋へ持っていっても、フロッピーなどは見てくれない時代だという。そうだよなあ、MDとかCD−ROMの時代だよなあ。こういうところはレトロ趣味では困る。しかし、それどころか、次のちくま文庫『美少女の逆襲』は、ワープロ時代のフロッピーをなんとかしなくてはならない。

 帰宅してしばらく休む。電話数本。ミリオン出版Hさんからは、古本のことについて。早川書房A氏からは打ち上げの件。Dちゃんは四月まで忙しくてあかない。メール、筑摩書房からも。久しぶりにのぼせが頭にあがり、肩がパンパンに張る。サウナ&マッサージといきたいところだが、黄連解毒湯のんでおさめる。少し横になって、古川哲史編『日本人物語』1・悪の話題(毎日新聞社・昭和36年)などを拾い読みする。軽い感じの読み物だが、雑知識は満載で面白い。

 5時半、家を出て東急本店へ。今夜の夕食の買い物。歩いて五分のところに東急本店があるという環境はやはり普通ではない。帰って原稿。アスペクトのもの、発売日も決定して、そろそろ尻に火がついていて、あせるのだがあせるとなおのこと、ああでないこうでないと考えて筆が進まなくなる。逃避でネットを回る。知っている某女性のサイトにどうしようもないアテコスリが書かれているのを発見したりして、いや私宛のものではあるまいが、何か私に対してではないか、などと自意識過剰になって カングッたりして、なおさら進まない。

 と、そのアスペクトのKくんから緊急メールで、対談部分のページ数が思いの他多いので、書き下ろし部分が大幅に削られたとのこと。喜んでしまうのはイケナイのだろうが、急に気が軽くなるのは事実である。軽くなったとたん、前書き原稿の筆がスラスラと進みはじめる。書き出しの部分をどうしようか迷っていたのを、その、さっきの某サイトで拾った文言をそのまま用いて、見事に決まる。なんでも見ておくもんである。今更ながらこのお仕事、無駄なことは何一つないなと再確認。一気呵成に書き下して、規定文字数をややオーバーしてしまったが、このこもった気迫を削りたく ないので、そのままメール。

 そこで9時。台所で料理にかかる。鶏のもも肉を時間かけてボイルし、塩・胡椒にメリケン粉をはたいてニンニク、タマネギと一緒にグレープシードオイルで両面を炒める。芽キャベツとエリンギも加え、バタひとかけを肉の上に乗っけて蓋をして蒸し焼きに。仕上げに醤油をちょいと。それと湯豆腐、鯛ごはん(妙なとりあわせだが、まあこれが家庭料理)。鯛ごはんはガラス製の鍋で炊くが、炊きあがりが見事。45分にK子フィン語から帰り、食事。

 DVDで『サインはV』。いよいよ全日本選手権、脚本・演出共に絶好調、見ていて“なんでせっかく駆けつけたジュンを出してやらないの!”とか、ハラハラ。ドラマでこんなに心乱されるのは20年ぶりくらいではあるまいか。実際はメンバーが試合中まったくチェンジされないとか、これだけ強いチームがちょっとしたことでいかにも簡単にピンチに陥ってしまうとか、不自然極まりないのだが。日本酒、船山から貰った『米山の女(ひと)』という酒。個性の強い酒でおいしく、ロックで三杯。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa