裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

火曜日

真珠王と信じまいと

 わしの真珠養殖の成功を、最初誰も信じはせなんだ(御木本幸吉翁・談)。朝8時近くまで熟睡。よく寝られるものである。昼寝をすれば夜中に眠れないのはどういうわけだ、という『東へ西へ』はあれはウソだな。今朝は好天なれども身体の中の気圧計は油断できん、と言っている。朝食、ホドイモの残りを蒸して。添付書には一日三個くらいあて、と書いているが、余ったので四個食ったら、なるほど胸焼けがして午前中いっぱい往生した。

 小野伯父から電話、30日に公演のスポンサーになってくれるというK氏に会わせるという。どうも話を聞くと、まだ電話での話の段階で、正式なお願いとかは会ってから、らしい。そこらへん、確認とってから会わせてくれた方がいいのだが。平塚くんに、昨日送り忘れた書き足し分(ゑびす秘宝館パンフレットの原稿)のサブタイトルを書いて送る。

 講談社の大麻事件やミスドの添加物もみ消し事件などをネットで追っていたら、スティーヴン・J・グールド死去の報あり。60歳。顔写真には口ひげがあるが、確か若い奥さんもらって、彼女にヒゲはイヤ、と言われて剃っていたのではなかったか。再婚相手に引っ張り回されるようになると早死にをするな、やはり。果たして彼の一生はワンダフル・ライフであったか。ミスター高橋『プロレス至近距離の真実』(講談社文庫)を読む。例の『流血の魔術 最強の演技』の大ヒットで前著が文庫化されたのであろうが、私にとってはこちらの方がショッキングな本だったように思う。殺されたブルーザー・ブロディをリングの上での天才と認めながらも、あれほどトラブルメーカーだった男はいないとし、その天才ならではのエゴで、いかに同業者に憎まれていたかを書く。彼がプエルトリコで刺されて血の海でのたうち回っているとき、周囲のレスラーたちは誰も助けようとせず、指さしてゲラゲラ笑っていたというのが(著者も伝聞で書いてはいるのだが)一番ショッキングだった。まあしかし、ここまで憎まれるのもさすがというくらい、彼の一種アブない(興奮剤をやっていたらしいが)レスリングは魅力的だったなあ。昔、ブロディのレスリングを評して村松友視が“談志の落語”と言っていたが、確かにむちゃくちゃに相似形であった。ハンセンが志ん朝(わかりやすい名人芸)でブロディが談志(わかりにくい名人芸)、かつての われわれは談志志ん朝の二人会を毎度見ていたわけだ。なんたる贅沢!

 鶴岡から電話、エロばなししばし。昼は参宮橋道楽でノリラーメン。それから新宿に出て雑用すます。なんと結婚以来メインバンクにしてきた東京三菱銀行新宿西口支店が新宿中央支店に併合されて無くなるとのこと。駿河台下のクイックコーナー、明治屋ビル内のクイックコーナー、公園通り入り口のクイックコーナーときて、ついに西口支店そのものまで。まるで私の使っているところをねらってツブしているような感じである。振込先変更など、かなりの編集部に通知せねばならず、面倒なことになりそうで憂鬱。いっそ別の銀行に変えちまおうかしらんと思う。

 帰宅、とって返して時間割で扶桑社Oくんと打ち合わせ。ベギラマさんが同席。今度のと学会本『愛のトンデモ本』の表紙案を見せられる。いずれもかなりエロチックで、これまでのと学会本のイメージをくつがえすこと必定。イメージをくつがえすと言うことで、ベギちゃんをモデルにした写真撮影をするのだが、その撮影の日時をあわせる。あと、鶴岡の話とか、いろいろ。終わって帰宅して、さて、その撮影に使用する本を探したが、どこかにまぎれてしまって出てこない。ちとあせる。まだ撮影までにはだいぶあるからそれまでに書庫をひっかき回さねばなるまい。

 筑摩書房Mくんからメール。『トンデモ一行知識』シリーズの他に、何か文庫化できる本がないかという問い合わせ。いろいろ希望を出してくれるが、余所ですでに文庫化企画が進行していたり、ツバがついていたりするのが多い。一冊、“これはそろそろどこかで文庫に出来ないかなあ”と思っていたのがあるので、元本編集部の連絡先を教えておく。それにしても、最近の著書は刊行されたときから“これはウチで文庫に”と押さえられているのが多く、新しい文庫に降ろすものが不足している。どこかで補充しなければ、と思う。

 9時45分、すし処すがわら。シロウオがあったので頼むが、あの寿司てものは食いにくい。白身のあらのたいたの、マグロのあらの焼いたのなどが出て、それらを食べているうちに腹が一杯になってしまい、寿司はあまり食えず。黒ビール一本、日本 酒ロック二杯。

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