裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

火曜日

紅ジャケハラス弁当

 セクシャルハラスメントと聞こえるように思いますがそう思いませんか思いませんかそうですか。朝5時起床。台湾の生蕃の村の隠亡になる夢を見る。その村のしきたりで死体は焼かずに、大きな窯の中で人間や動物の糞便を火にくべた煙で燻べてミイラにする。腐敗したような老婆の死体を、まんべんなく燻るようにときおり自分も窯の中に入り、死体の手足の位地をいろいろ動かしたりするが、こちらがミイラにならぬよう、常時カメに入った水を飲む。その水も黄色くよごれかかっているが、まあ、生蕃で衛生観念なんかないから仕方ないよなあ、と自分が生蕃のくせにそう思ったところで、目が覚めた。

 早起きをして、と学会誌原稿を完成させる。頭からもう一回通して読み返し、ここをいじりあそこをいじりして、何とか完成、原稿収集用特別掲示板にアップ。もう一度布団にもぐる。今度はベトナムあたりの料理屋で、スズメみたいに小さな鶴を、逃げないよう足を切って、生きたまま皿の上に乗せて持ってくる夢。卵の黄身ソースをかけて、そのまま齧るのだという。おそるおそる口に入れ、一気に噛もうとすると、鳥がいやがって口の中で暴れる。その感触がやたらリアルに伝わってきて、うわっと 驚いて目が覚めた。二回続けて、どうにもイヤな夢を見たものである。

 7時15分、起きて朝食。タイカレースープとプチクッペ。果物は富士リンゴ。ややフシャフシャ気味。昔のような、噛んでパキッと音のするようなリンゴが少なくなり、寂しい。『やる気マンマン』から構成台本FAX。目を通すがこの通りしゃべったことがない。母から電話。先日送った遺産相続権放棄の手続き書類、銀行の手違いとかで書類がパーになり、新しく作ったのでもう一度ハンコを捺して送り返して欲しいとのこと。まったく最近の銀行はダレている。

 昨日までとはうって代わって雨瀟々。気圧も変動著しく、体調不良なり。書き物は午前中出来そうにないので、資料本読む。ある本の徹底分析・批判をやるつもりで、その資料として読んでるのだが、ふと思いついて、テーマ二つ並べてキーワード検索をかけてみたら、まさに私がその批判本で言わんとしていることと、部分的ではあるがそっくり重なることを書き込んでいるサイトを発見した。しかも、私のことも書いてあり、これを(その本に対し)指摘しないのはカラサワの不勉強だ、とある。確かにその分野での不勉強は自覚していて、それで今、本など読み込んでいるところなのである。興味を持って、そのサイトの開設者あてメール。さっそく返事が来た。岡田さんなどは前から訪れているらしい。

 マンションの斜め向かいの部屋、こないだから改装でうるさいと思って日記にも記していたら、今日見るとオープンルームとか言ってチラシが貼ってある。分譲であるが、頭金をなんとか工面すれば、月々の払いは私の部屋の家賃の半額くらいになるので心が揺れる。偵察をK子に依頼しておいたら、さっそく行って来た模様。部屋の面積が、私のところよりやや小さいのだそうな。それと、買ってしまうと固定資産税などが加算されて、やはり月々の額は相当なものになりそう。それでも今払っている額より安いのだが。要するに、私らが引っ越してきたときよりも、隣にアムウェイビルが建ってしまったりして、このマンション自体の評価額が大幅に下がっているわけである。

 今日はK子はフィン語の後で用事があり、帰宅が遅い。晩飯の材料仕入れと、昼食を兼ねて出る。参宮橋でバスを降り、道楽でノリラーメン。チャーシューが私の好きなはじっこの方が当たる。とろけそうでうまい。パンも肉も、固まりのはじっこの部分というのは奇妙にうまい。敬称をつけてミスターはじっことか呼んでやりたいくらいだ。それから新宿までさらに出て、銀行で通帳に記入、買い物少しして帰る。

 講談社Yくんから電話、好美のぼるの単行本、企画通ったとのこと。いや、めでたいことである。来週、他のいろんなことも含めて打ち合わせ。モノマガN編集長Nくんからは飛び込み原稿依頼。アスペクトK田くんからもメール。まだ村崎さんとの社会派対談、修正効くというのでナオシを入れる。仕事はそこらで打ち止め、背中がパンパンになってきたので、あわててマッサージを予約して新宿へ。サウナ室で着替えていたら、そこで現ナマをやりとりしている人がいた。保険会社員かなにか知らないが、片方はバスローブ姿、片方はネクタイに背広という取り合わせで、分厚い札束を受け渡している景色は何か尋常の行為でない、という感じがする。昔、バブル期に伯父が明治通りのレインボーサウナ(つぶれたらしい)でアヤシゲな絵画ビジネスにハマっていたときには、こういう図がよく見られたものであるが、あれを思い出した。

 今日は女性のマッサージ師さんだった。力は強くないが丁寧に揉み込んでくれる。私の本とかも読んでいるらしい。少しくすぐったい。別に治療効果がどうというものではないが、今日のように全身倦怠のときは、皮膚を刺激することで神経を賦活させる必要がある。帰宅、少しパソコンに向かい、9時夕食。一人きりなので豆腐のあんかけ、小ナスの漬け物、ハタハタの一夜干しなどで酒。10時ころK子帰ってきて、膳を見て“まずしいじゃない”と言う。鮎の塩焼きの安売りを買ってきたやつで鮎そうめんを作ってやると喜んで食べていた。12時ころまで、竹葉のみながらだらだらと。竹葉はもちろん能登の酒の銘だが、偶然飲みながら読んでた瀧川政次郎『倩笑至味』によると昔は酒そのものの異名だったともある。もちろん中国の詩文からの影響で、竹葉、また梨花、聖賢、松華、桃下、宜春などともあり、このように名が多いのは、古代から中国ではたびたび禁酒令が敷かれ、隠語でそれを呼ぶ必要があったからだとか。で、竹葉は三国時代に曹操が出した禁酒令のころの隠語だという。とんだところで曹操なんてビッグネームが関係してくるのが面白い。もちろん、能登のは“ちくは”であって、隠語のは“ちくよう”と読むのだろうが。

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