裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

月曜日

相模原さでおくべきか

 言ってみただけ(便利だな、このフレーズ)。朝7時40分起き。目覚めはいつも通り6時半。夢で藤岡弘似の刑事の結婚式に狂人が乱入。その狂人を現場の警備員がベルトから発射したスパイダーネットみたいなもので捕獲。このネットの開発秘話もいろいろあったのだがそれは略して、藤岡弘(だか、似ているヒト、だか)が、その乱入男の様子があまりにおかしいので、これはヤク中なのだろうと判断し、“すぐ尿検査をしろ!”と命令。だが、実はそれこそがワナで、実はこの男は謎の組織に改造を受けた猛毒小便男で、検査のためにオシッコをすると見せかけ、その恐怖の小便を藤岡弘(似、かなあ、やはり)にひっかけて暗殺しようとたくらんでいたのだ。果してその計画は成功するのか? というところで、さすがにあまりバカバカしいと脳が判断したと見えて、覚めた。

 朝食、ソーセージのスープ煮。果物はリンゴ。どうも最近、うまいリンゴに当たらない。早くに鶴岡から電話。なにやら興奮した様子で、昨日会った女性ライターさんから得た情報を伝えてくれる。……いや、こりゃまさに傑作な情報だった。いや、私と鶴岡近辺の人にしか面白くはない情報だろうが。それにしても業界というのは狭いもんだ、と感心。

 昼は東急ハンズで資料用のブツを一つ仕入れたあと、パルコブックセンターで新刊物色。買った本を読みながらパルコ2Fの『カフェ・アイウエオ』なるところの日替わりランチ。イタリアンハンバーグだったが、“ふむ、これは肉”“これはチーズ”“これはピーマンのマリネ”と、舌がそれぞれの味の区分けはするものの、そこに一切、何の感動も感興も湧かない味だった。特にライスが全く、風味というものの感じられない、紙ねんどのようなもの。前にここのハヤシライスを食べたときはそこそこ美味しかったのだが。

 以前、村崎百郎さんと某アカデミズム関係者(私とはあまり接点がない)のうわさをしたとき、村崎さんが“ヤツらがいかに可哀想な人間か”ということを述べて、大学という組織の中であたりをうかがい、自分の研究テーマすら上の方にお伺いをたてて決め、組織中での地位を保全することに気を使わねばならないか、ということを解説してくれたことがある。そして、その中で異端なことを研究している連中は、もう古巣のアカデミズムからは出世の道なし、と烙印を捺されている場合がほとんどなのだ、という。“だからさあ唐沢さん、確かに連中のやることのアカデミズム臭さは気になるかも知れないけどさ、あまりいじめちゃ可哀想なんだよ”と諭された。そのときはいや、いじめるときはいじめてやらないと、となどと答えていたが、今日偶然、それを裏付けするような話を聞いてしまい、少し考えを新たにした。フリーの人間にはちょっとわからない怯えを、彼等は常に抱いているということか。いろいろと思うところあり。

 帰宅したら電話連続。河出書房新社から澁澤龍彦についての原稿依頼など。今月は飛び込み原稿依頼がかなりある。あとコミックスのK氏からこのあいだの鉄人原稿のお礼と今後のスケジュールについて。海拓舎原稿資料用にビデオで映画のセリフを確認しているうち、つい手が延びて、安達Oさんに以前いただいたAVで、中国語版字幕がついているというものを見る。“チュッチュと舐めて”のチュッチュが“對對”だったり、“イキそう……イクっ”が“要去……要去了!”であることに感心したり大笑いしたり。まあ、見る目的が目的とはいえ、AV見て笑ってしまったり違うところに感心したりするというのは、これは男としては情けない話なのであろう。

 モノマガジンから電話、原稿を明日の朝イチに欲しいという。あわてて書き出す。最近お気に入りのプライザーのフィギュアをネタにして。書き出しに苦心(堅苦しいすぎたり、逆に軽すぎたり)して数回、書き直す。8時、新宿にでてK子と食事。天ぷらであっさりと。帰ってからもしばらく原稿。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa