裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

土曜日

世界はイカ、人類はイナ、オヒョウ、タイ

 日本漁船舶振興会。朝7時半起床。朝食、黒パンにタラコペースト。肩は全快とはいかぬがやや良好。メール関連を整理、返事など書く。今日は土曜日だし古書展(書窓会)行きたいな、と思うが行くとたぶんくたびれてそれだけで一日が終わってしまいそうなのでパス。ネットの調子がやや不良で、ナンビョーさんのサイトを読もうとすると落ちてしまう。神田森莉のところに行くとフリーズするし。

 昨日書いた『男の部屋』原稿、何ケ所か手入れをしてメール。アスペクトK田くんから何度も何度も電話入るが、調べるのに時間がかかってなかなか進まず。イラついて放棄。『荒涼館』寝転がって読む。

 1時、新宿に出る。王ろじでとん丼、とん汁。店に備え付けの『アエラ』読む。中の記事にむやみに感心したり、コレハドウカと思ったり、単純なことである。以前ここにインタビューされたのは長男と家庭、という問題でであったが、今回はひとり娘と母親の関係についての記事が秀逸。こういう心理・社会学的問題がここは得意らしい。鈴木宗男に関してはやはり文春や新潮の方が読ませるように思う。北海道では、鈴木宗男が中川一郎を殺したというウワサはすでにフォークロア的に広まっており、あの頃、みんなが世間話のように話していた。首をつるならドアノブでというのが一番てっとり早いにも関わらず、バスルームのカーテンレールというところで吊ったのが不自然であり、中空の管でヒグマと言われた男の体重が支えられるものではない。しかも、事件のあったホテルでは、その後、その部屋ばかりでなく、フロア全体を改装して、事件の痕跡を完全に消してしまった。その際、バスルームのカーテンレールを補強するという不自然なことをしている。これは、ここで首を吊ったというイメージを不自然と思わせないためではないか。しかも、改装費用は“迷惑をかけた”という理由で自民党から出ているらしい……など、ウソかマコトか、いろんな話が乱れ飛び、面白くってたまらなかったものである。

 紀伊国屋でしばらく本を物色。混んでこんで、エレベーターを二回も満員でやりすごされる。このビル、建ったときに優秀建築デザインで賞をとっているらしいが、エスカレーターが4階までしかなく、エレベーターが小さくて使いにくく、優れた設計とはどうも思えない。行くたびにイラつく。6階の実用書の棚を見ていたら園芸とか料理とかと並んで“雑学”というコーナーがあり、私の本や山本弘の『ハマりもの』などが並んでいたのにちょっと驚く。帰り、荷物が増えたのでタクシーを使う。運転手さんが以前は国語教師だったとかで、日本語論、文学論しばし。彼曰く     「日本というのは困った国で、文学賞などでも常に未完成だが目新しい、というものにばかりやって、伝統的な文学形式を熟成させて完璧に構築した、という作品を大事にしないんです。だからどんどん文学の幼稚化が進んで、じっくり読める大作が育たない。新しい、ということはこれから価値が出るかもしれない、ということで、それが本当の価値かどうかは未知数です。それがいつの間にか、この国の文学者は新しいことが即ち価値である、とカン違いしちゃったんですね」

 伊勢丹で買物し、帰宅。やはりクタビレて、少し寝てしまう。こんなことなら古書展にも行けばよかった。電話数本来るが出ないでしまう。買ったやおいマンガなど読む。やおいにおいては男性のアナルは女性のワギナと同様に自ら濡れ、何ら抵抗なく相手の指やペニスを受け入れる。それはいいが、キャンデーを中に押し込み、濡れてこぼれ出たそれを“おまえの味がする”とか言って口に含むのは、サスガに男としては少々ゲーとなる。いくらファンタジーだとは思っても。

 5時ころになってやっと調子が出てきて原稿進む。書きながら料理の下ごしらえ。豚ロース塊りに塩、胡椒、おろしニンニクをすり込み、タマネギとセロリのみじん切り、ローレルと一緒に酒とオリーブ油につけ混み簡単にマリネ。7時、それをオーブンに入れてローストする。30分くらいしたら、下の段にジャガイモ、ソラマメなどの茹でたのを耐熱皿に入れて置き、脂や肉汁が垂れるのを十分に吸わせる。それと、伊勢丹で安く売っていたウチワエビを生きたまま熱湯に放り込んでボイルし、出刃包丁で二つに割って身を取り出す。ウチワエビにミソはあまりないのだが、薄茶色のそれをチュッとすすると甘味があって実にうまい。取り出した身はほぐしてベビーリーフとまぜ、サラダにする。川上志津子さんから久しぶりに電話。いよいよ句集の刊行が決定したそうな。7日のトンデモ落語会に誘っておく。

 8時、夕食。ローストポークはマリネ汁と肉汁を煮詰めたグレービーが馬鹿うま。LDでひさしぶりに『キャプテンウルトラ』を見る。学芸会レベルのセットが逆に今見るとシュールですらある。K子はこの映像に富田勲の音楽をつけるというのは猫に小判だぁ、とイキドオる。音楽と言えば『怪獣軍団あらわる!』で、怪獣同士のケンカのBGMに、ノリのいいエレキギターのコミック調の伴奏がついていたが、これは『ウルトラファイト』に絶対に影響を与えている(この回の放送が67年、ウルトラファイトが70年)と思う。……などという“発見”もあり(もう誰かが言及しているであろうが)、ワイルドターキーを三杯ほど飲んで、かなりいい気持になる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa