裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

月曜日

医科歯科たない

 ウチのせがれの学力じゃ医者や歯医者はちょっと無理らしいから、クスリの学校にでも薬科。朝8時起き。朝食、ピタパンに、マッシュポテトと、冷蔵庫に残っていたウナギの蒲焼きを試しに挟んで食べてみる。案外いけます。それとスイカ。

 盆開けだあ、というので仕事々々。河出書房の本(いろんな業界人の青春エロばなしを集めたやつ)のゲラ直し、『メモ・男の部屋』文字数合わせ、『週刊アスキー』一本。さすがにまとめてやるとどどーんと体力を使う。予定表見てみると、今週もほぼ毎日、予定つまっているぞー。ううう。

 参宮橋まで出て、道楽のチャーシューメン。スープに酢を入れて飲んで、疲労回復をはかる。それから新宿〜飯田橋経由で、警視庁遺失物保管所に行く。SF大会で無くした携帯が出てきたので取りに行ったのである。外はきわめて蒸し暑い。晩夏特有の、底意地の悪い暑さである。少しそのあと近辺をブラつくが、面白そうなところがない街である。参宮橋のマンションから引っ越すとき、飯田橋も候補のひとつだったのだが。

 某作家さんから電話。朝方電話があって、ごく普通の会話をして切ったのだが、私が外から帰ってきたあたりでまた電話あって、“あの、私、今朝電話しましたか?”という。驚いたが、どうも寝不足で頭がボーっとして、記憶がアヤフヤな状態での電話であったらしい。それがいかにも寝惚けた電話ではなく、ちゃぁんと受け答えもしていたところが奇妙である。その時間の人格は誰のものだったのか。

 肩凝りがひどくなったので、いつものサウナ&マッサージ。整体のお兄ちゃんに、“凝りが腰にまで来ている”とオドかされる。隣のベッドから、“ああ、いい気持ちだ!”“実にスッキリするねえ!”と、素人ばなれしたよく通る声が聞こえる。名前知らないが、ラジオで昼の番組持っているパーソナリティである。夏休みをとって、ホテルで休養しているらしい。こういう人は仕事の声と日常の声を使いわけているのかと思っていたら、おンなじなんだねえ。疲れないかしらん。仮眠室でテレビ見ていたら、沈没のロシア原潜、救助難航で乗組員全員絶望か、とのニュース。クルスクったって、悲スクったって、潜水艦の中味は秘密、なの。

 7時半、渋谷駅で安達OB、開田夫妻、談之助夫妻と待合せ。K子の提唱で“東欧旅行前の予行演習”というワケのわからない理由でロシア料理の会。渋谷ロゴスキに行く。さすが老舗、ウクライナ風ボルシチもピロシキも壷焼きキノコも見事な味。ただし、ロシア料理にしては洗練されすぎているかな、という感じ。私としてはこないだのチャイカの方が好みである。東欧のワインなど飲んで、他人が聞いたら怒るような、呆れるような話いっぱい。その後、渋谷109近くのスカしたイタリアンカフェで話続き。この時期の渋谷は“半裸”としか形容できないような格好の女の子であふれている。そういうのに混じって、黒づくめの服装で詩のようなものをせっせと書いている女性もいるし、別ればなしなのか、見つめあったまま、何にも言わずに深刻な顔でじっと坐っているカップルもいるし。夜中の喫茶店はオモシロイ。開田さんから引っ越しであふれでた衣装と、鏡をもらって帰る。

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