裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

日曜日

あまりと言えば天地真理

 もうしません。朝6時起き。まだ二日酔いで頭がクラクラ。一応、コミケ必携用具(お釣り、売り上げ入れ、筆記用具、紙など)を揃え、打ち上げ会場(ゆうべあわてて予約入れた)の地図などコピーし、バナナとエンドウ豆スープで朝食取り、こういうイベントのときにテンションあげる魔法のクスリ、と言ってもちゃんと合法の麻黄附子細辛湯を三服いっぺんにのんで、会場へ。タクシーの運転手が田舎者で東京ビックサイトって何ですか? というようなテイタラクであせるが、カーナビのおかげでちゃんと到着。文明の利器。

 雨はかなり繁く降っているが、雨足は細く、心配された台風直撃はなし。オタクの念力でコースを逸らせたか、などと会場の知り合いと話し合う。それでも、外に並んでいるお客さんたちはかなり大変ぽい。志水さん、てっきり昼過ぎ到着と思っていたら、9時頃には来て、みんなを仰天させる。

 ブースに搬送されている会誌を確認、“おたくを面白くする会”のブースに行き、柳瀬くんに値段その他確認、参加証添付して一冊見本提出等、例年の通り。同じ台の隣が鶴岡のドリフト、ひとつおいたところがナチスマニアの人たちで、さらに近くにはロリ、ショタ、デブ専、SM、などもいっぱいならぶ。隣のブースの人がカタログ見ながら“どうも今年はわれわれ、評論じゃなくて「その他」らしいですね”とつぶやいたのにひッくり返って笑う。その他はよかったが、西形公一氏のブースとドリフト道場が並ぶというのは一体どういう島なのであるか。

 睦月さんの官能倶楽部ブースが今年はちょっと離れている。陣中見舞い。串間努さんが頭にスカーフを花売り少女のように巻いているのは珍景だった。談之助夫妻も到着。その近くにBWPのブース。伊藤くん本、私のやおい本などはドリフトのところにも委託して、私がサインしやすいようにする。岡田斗司夫、哭きの竜さんに伊藤くん本をプレゼントされ、“イタくて俺、読めないよ”と言う。準備万端整えて10時開場。雨で床がすべりやすく、西館では怪我人も出たとかの報が飛び交う。“コミケ晴”という言葉があるくらい、これまでのコミケはピーカンに恵まれており、従ってオタクたちは雨天に慣れていない。ロクに雨具も持たず並ぶ人もいると見え、今、池からあがってきましたという風情で本を買ってく人がいる。差し出された札がべったりと濡れていて、志水さんと“幽霊がアメ買いに来たみたいだ”と話す。

 例によってと学会は盛況。会誌500円という値段設定がよかったか、列もどんどんハケて、さして並ばない。私や志水さんにサイン求める人がいるとちょっと延びるが、基本的にサインより早く他のブースを回らねば、とみんな気がせいているので、午前中はそれもほとんど無し。鶴岡×唐沢のやおい本持ってくる人が多いので、“唐沢俊一(受)”と書く。鶴岡はサイン求められると“唐沢俊一”と書く。そのサイン貰った人が私の方にも来ると、今度は私が“鶴岡法斎”と書く。なんだかよくわからない。ドリフトの連中たちはまるでオフ会のように集まって来る。彼らの会話や客寄せのセリフを聞いていると、まるで漫才かコントそのままである。日常がそういう連中なんだろう。キャラ立ちしているのが来るたびにGHOST氏に彼らのハンドルを確認するが、“アイツは鬼畜です”“あれはキチガイです”“ヤツは単なる馬鹿なので記憶しないでいいです”。・・・・・・どういう集団だ。そのくせ女性陣がみんな美人なのが謎である。

 午後になってくるとと学会の方も応対が忙しくなる。サインは一人が求めてくると次の人が“タダで貰えるなら・・・・・・”と同じく求めてくるので連続する。不思議なことに、1000円札で支払う人と500円玉で支払う人も連続するので、お釣りの山がサイクルもって増えたり減ったりする。グッズのバッヂ、手拭、風呂敷もかなりハケてみな完売状態。固い椅子に座りづめで、尻が痛くなる。ほとんど間断なく客が来るので席を立てないが、寸暇を見て志水さんに変わってもらい、ショタものなど購入する。畸人研究の今さん、裏マンガコレクターの伊沢さん、眠田さん、気楽院さん、山本会長、小杉あやさんなど次々に顔を出す。火野妖子さんがくれたコピー誌に、自宅がポルノ映画の撮影に使われた、というエピソードのマンガが載っていたが、これが例の快楽亭が骨折したやつであった。まったく、世間は狭い。ドリフトでBWP本を買っていった客がいて、売り子たちに“今の柳下毅一郎サンだよ”と言ったらみんな“オオ!”と叫ぶ。差入れもお菓子から酒から本からテープから多々。感謝々々。“ロフトの掲示板、大変ですね”と声をかけられた。何か、私と皆神龍太郎氏を取り違えて(どっちも帽子をかぶっているから)トンチンカンな雑言を吐いている人がいたのである。まあ、気がついて沈没したようであるし。

 順調に会誌はハケるが、今年は1000冊も刷っており、売っても売ってもなくならない。以前、400冊程度の刷り部数だったときは午前中に売り切れて後は楽に会場回って買い物できたのだが、さすがに1000部となると4時過ぎにまだ売れ残っている。800部ちょいと売ったところで会員用に残り一箱は開けずに(実はもう売りバテた)戻し、委託分清算して、4時に解散。一旦家に帰り、シャワー浴びて(なにしろ湿気でベトつき、私はそんなことに滅多にならない男なのだが、全身が汗くさくなった)ざっと金勘定し、6時、二次会の居酒屋『九州』へ。官能倶楽部、と学会合同で、過ぎゆくオタクの夏にカンパイ。骨折した奥平くんが、杖をつきつきやってきたのには驚いた。いささか面やつれしていたが相変わらず危険な話をバシバシ。開田さんたち一行も遅れて参入。かなり飲んだり食ったりしたが、焼酎が私の入れたボトルの期限切れ間際だったので提供したことと、グッズ売り上げの一部寄付と、会誌売り上げ一部寄付があったので、一人二千円という超安勘定。10時帰宅、無事済んだ解放感で疲れも心地よくゆっくりと寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa